IOCが選んだゲームの中には、独自の活気あるコミュニティや競技シーンを持っているものもある。例えばチェスや、仮想サイクリング・プラットフォームのズウィフト、人気の自動車レースゲームのグランツーリスモなどだ。「ズウィフトは『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、以下LoL)』『カウンター・ストライク(Counter-Strike)』『オーバーウォッチ(Overwatch)』のような従来のeスポーツ領域でよく見られるタイトルではないが、私たちはズウィフトをeスポーツとして分類するのは適切だと考える」とズウィフトは取材に回答した。「ズウィフトは、個人的にであれ、他のプレイヤーと競いあう目的であれ、メタバース環境の中で選手たちが自分の運動能力を測定するためのソフトウェアだ」。しかし、多くのeスポーツ業界関係者たちはIOCの発表が的外れだと感じたようだ。このイベントには、LoLや「カウンター・ストライク」のようなタイトルは含まれておらず、「NBA 2K」「FIFA」「ロケットリーグ(Rocket League)」のような、従来のスポーツに近い人気競技ゲームも含まれていない。選ばれたタイトルの中には、「ティック・タック・ボウ」や「テニス・クラッシュ」のように、主にモバイルゲームで、組織化された競技シーンがほとんどないものもある。
つまり、オリンピックeスポーツシリーズは、少なくとも、メインストリームにおいてフランチャイズリーグを構築し、それらの中で競っている多くの関係者が言う意味での「eスポーツイベント」とは異なる物となっている。オリンピックの既存のファンベースとスポンサーグループの中で競技ゲームに対する関心を喚起するために、オリンピックの強力なブランド認知度をうまく活用した、より一般的なゲームイベントだと理解すべきだろう。また、オリンピックeスポーツシリーズに対する批判の多くは、イベントの国際的な範囲にもかかわらず、欧米のeスポーツ視点から来ていることにも留意すべきだろう。モバイルeスポーツは、平均的なゲーマーが高価なゲーム機やパソコンを手に入れることができない多くの国際市場で非常に人気がある。欧米のeスポーツファンはIOCの発表でモバイルゲームの存在をあざ笑ったが、他の地域のゲーマーは、このイベントの側面をより歓迎する可能性が高い。「eスポーツ業界で確立された地位にある人々や意見は、南アメリカ、アフリカ、中東、東南アジアなど、世界中からの参加者が、モバイルを通じてのみ参加の機会を持っていたことを必ずしも理解できていない」とウッズ氏は言った。「その観点から、IOC(の判断)は実際には称賛されるべきことだと思う」。記事公開後、IOCの代表者から、オリンピックeスポーツシリーズのゲーム選択に関するより詳細な文脈を提供するために連絡があった。「オリンピックは常に多様なプログラムを提供しており、他の人気のあるスポーツが持つような影響力を持たない、スポーツも提供する。オリンピックeスポーツシリーズ2023でも同様に多様なプログラムを構築するために、我々は国際競技連盟(IF)と提携しており、それぞれがゲーム開発者との提携を提案する形となっている。これらの提案を検討する際、注目されるゲームがオリンピックの価値観に合致することが我々にとって重要だ。これには参加の包括性、技術的な参入障壁、プレイヤーベースの性別分布、人間間の暴力を避けることが含まれる。これは、IOCの使命である世界を平和な競技で結束させることを背景にしている」。[原文:Why the esports industry is up in arms about the Olympic Esports Series]Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)