画像は偕成社のホームページ スクリーンショット

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絵本「はらぺこあおむし」の出版元・偕成社は、同作をモチーフにした風刺漫画を掲載した毎日新聞に対し、作品全体を理解せずに描かれたものだとして抗議文をホームページに掲載した。「日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたい」とコメントしている。

毎日新聞は、6月5日朝刊の風刺漫画コーナー「経世済民術」に、「エリック・カールさんを偲んで はらぺこIOC 食べまくる物語」を掲載。「はらぺこあおむし」になぞらえた「バッハさん」や「パウンドさん」「コーツさん」の似顔絵が描かれている。放映権と書かれたリンゴ「ゴリンの実」を一かじりして、いくつも置き去りにしているような光景となっていた。

この表現について偕成社は、「風刺漫画のあり方について」を7日に掲載。「『放映権』というリンゴをむさぼっている図」という風刺の意図については、「明らかで、その意見については表現の自由の点から異議を申し立てる筋合いではありません」とコメント。そのうえで、「はらぺこあおむし」の出版元としては「強い違和感」があったとしている。

まず、「あおむしのどこまでも健康的な食欲と、それに共感する子どもたち自身の『食べたい、成長したい』という欲求」が楽しみな作品であるため、「金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当」であると指摘している。また、「エリック・カールさんを偲んで」と、追悼の体裁をとっているが、「おそらく絵本そのものを読んでいないのでしょう」と推測。読んだうえで描いたのであれば、「満腹の末に美しい蝶に変身する結末をどのように考えられたのでしょうか」と問いかけている。

風刺という表現方法は、「引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつ」ことから、今回の風刺漫画については「作者と紙面に載せた編集者双方の不勉強、センスの無さを露呈」していると指摘。「表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえにこうしたお粗末さを本当に残念に思います。日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたい」と投げかけている。