64歳(執筆当時)のショコラさんは、企業年金とパートの収入計12万円で毎月やりくりしている。ショコラさんは「貯金とは別に予備費をつくることで、心にゆとりができて節約も苦にならない」という――。

※本稿はショコラ『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

撮影=林ひろし

■ささやかでも満ち足りて自由な暮らしをする秘けつ

こんにちは。ショコラと申します。2月の誕生日で、65歳になります。1LDKのマンションでひとり暮らし。40代で離婚した夫とのあいだには、息子がふたり。仕事は週4日のパートタイムです。ささやかでも満ち足りて自由な暮らしをするために、どんな準備や心構えをしてきたのか。それをお話ししたいと思います。

わたしは、毎月の生活費や貯金とは別に「予備費」を用意しています。57歳で退職したときにもらった退職金の半分は貯金に、もう半分を「予備費」と決めていつでも自由に使えるように待機させています。

この予備費があると、月々はぎりきりの生活費でやりくりしていても、心にゆとりができて節約も苦にならずにできるのです。

フルタイムのパートで月に12万円以上のお給料のときは、60歳からもらっていた企業年金5万円分は、この「予備費」にストックしていました。

■予備費のおかげでささやかな贅沢がプラスできる

この予備費の使い道は、家電製品がこわれたときの買い替えや、水道管のバルブが外れて水漏れしたときの修理、差し歯のメンテナンスなど。ふだんの生活費ではまかなえないときに、ここから出すことにしています。

急な出費以外でも、旅行にでかけたり、お中元やお歳暮、お年玉、親しい人への誕生日プレゼントなども、予備費を使います。

この予備費があることで、いつものシンプルな暮らしに、ささやかな贅沢がプラスされます。なくてもいいけれど、あるとうれしいもの。ふだんは質素な暮らしでも、交際費やたまの旅行や、ちょっと値の張る買いものをあきらめたくない。そんなときこそ、予備費を有効に使います。

手をつけない「貯金」と、自由に使える「予備費」を分けておくことで、少額ずつ貯金を取りくずさないから安心です。

予備費があると、心の余裕が生まれ、節約も楽しくなる。

■生活費12万円の支出は、2つの財布を使って現金主義で

57歳でパート勤務を始めたときは、手取り10万円ほど。内訳は水道、光熱費、通信費、マンションの管理費や修繕積立金、固定資産税の月割り分など、それらを合わせて固定費として5万円。食費1万5千円、そのほか3万5千円と、ざっくりと分けました。この10万円の生活費はやはりきびしく、赤字になる月が多かったのですが、3年後に企業年金5万円が入るようになり、また給料が増えて、手取り12万円になりました。固定費6万円、食費2万円、その他4万円にして、やりくりできるようになりました。

食費2万円のなかには、たとえば友だちと外食したり、息子と食べ歩きに行くときの食事代は入りません。これは「そのほか」の4万円から。同じ外食でも、仕事の帰りに1人でふらりと喫茶店で夕食を食べたときは、食費に計上します。細かなことですが、誰かと一緒に会食したときは楽しい娯楽費なので「そのほか」で、日々のことは「食費」と線を引いています。

「そのほか」の費用には、外食以外、服を買ったりトイレットペーパーや洗剤などの消耗品から、化粧品や美容室、季節の切り花など、さまざまな生活雑費が入ります。

■現金は2つの財布で管理し、可視化する

細かなルールのように見えて実はざっくりしていて、やりくりがひと目でわかるように、固定費は引き落としの口座に残し、現金は財布を「食費」用と、「そのほか」用との2つに分けています。

黒いコンパクトな革財布には、毎月初日に4万円入れておきます。キャメルの財布には同じように初日に2万円入れて、その月のやりくりをスタート。

ふだん持ち歩くのは黒の財布1つで、食費用の財布は家に置いています。

たとえば、駅前のスーパーで食材に2500円使ったとします。家に帰ってから、その使った金額分を食費用の財布から黒財布に移すのです。そうすることで、月半ばぐらいになると、「今月はちょっと使いすぎだな」とか「余裕があるから、ストックできる冷凍食品を買っておこうか」と、自分なりに計画できるのがいいところです。

このやり方で、これまで予算をオーバーしたことはほぼありません。お財布に入れておくと、残りが見えるので、減らしたくないな、と思えるのがいいのでしょう。

月末に財布を確かめて「きびしいな」と思ったら、好きなお菓子を買うのをひかえたり、冷凍庫と冷蔵庫のストックだけで料理したり。毎月だいたい少し余るので、それは翌月に繰り越します。いまはキャッシュレス決済がお得、といわれていますが、わたしには2つのお財布でやりくりするのが、合っています。

お金が見える状態だと、自然に無駄遣いがなくなる。

撮影=林ひろし
(写真左)半分に折ったお札とカードが4枚。L字に開く黒いイタリアンレザーの財布は「ドンテポーナ」。食費用のキャメル色の財布はライティングデスクが定位置で、持ち歩かず、使ったら補充します。 - 撮影=林ひろし

■光熱費はときどきチェックして、ブログで公開

固定費の中でも季節によって流動的なのが、水道光熱費です。別居してすぐに暮らしていた1Kのアパートは、水道代込みの家賃だったので、気にならなかったのですが、いまの1LDKの部屋はバスタブが大きいのです。毎日バスタブにお湯を張ると、水道代もガス代も跳ね上がってしまうので、ふだんはほぼシャワーだけにして、湯を張るのは冬の寒い日やお休みの日にゆっくりできるときの、リラクゼーションタイムにしています。

水道、ガス、電気の光熱費は、月にいくらかかったか、請求額と使用料をブログでときどき公開しています。この「光熱費公開」は、読者からの反響も大きく、節約の知恵をコメントしてくださる方もいて、とても勉強になります。

季節によってでこぼこはありますが、だいたい合わせて予算通り月1万円以下におさまっています。

ときどきブログで光熱費を公開することで、節約する励みにもなるし、やりくりの記録にもなるので、これからもつづけていこうと思います。

こまめに電気を消して回るのも節電、節約ですが、どれだけ使ったかを把握しておくことが、決められたお金の中でやりくりするときには、モチベーションになります。

細かな数字をメモしなくても、お金の流れをつかんでおこうと、心がけています。

光熱費の金額は必ずチェックして、節約の参考に。

■やりくりできているなら家計簿はいらない

わたしは結婚していたころから、家計簿をつけていました。それは掃除や料理を作るのと同じ。家事のひとつだと思っていて、どんなに仕事で疲れていても、必ずその夜のうちに、です。

実家の母が、大学ノートに毎晩細かく家計簿をつけていたのを見ていたから、わたしも自然にそうなったのでしょう。それは42歳で別居してからも、ずっとつづいていました。

家計簿を40年近くつけてきてよかったな、と思うのは、だいたいのお金の流れや、自分のお金の使い方のクセがわかること。正社員を辞めてパートになっても、まだ家計簿をつづけていましたが、いまから2年前に週5日から週4日勤務にシフトダウンしたときに、思いきって家計簿はやめました。

撮影=林ひろし
メインバンクは、18歳で就職したときから同じ三井住友銀行とゆうちょ銀行の2つだけ。クレジットカードはビュー・スイカにJCBが付いたもの。金融機関とクレジットカードを整理してお金の流れを「見える化」。 - 撮影=林ひろし

それはもう細かくつけなくても、月に12万円でやりくりして暮らせることがわかったし、貯金をくずさずに済んでいるからです。お財布2つで管理しながら、ときどき予備費を使ってささやかな贅沢をする。そんなわたしの暮らしには、家計簿をつけてもつけなくても、変わらないでしょう。だったら、その時間に本を読んだり、のんびりくつろぐほうがいいと思ったのです。

■買ったものはメモに残しておく

とはいっても、何に使ったのか、何を買ったのか、いつの間にかお金がなくなるのはイヤなので、服やバッグの値段や交際費、どこでいつ使ったかだけ、簡単にメモをするようにしています。品目とか、トータルとか気にしないで、ざっくりと。自分があとで見たときにわかる「備忘録」のようなものです。

ダイソーで売っているお小遣い帳に何年も前からメモをしています。

また、お金の流れがわかりやすいのは、クレジットカードを最小限にしていること。金融機関も結婚前から口座がある三井住友銀行と、ゆうちょ銀行の2つにしているからでしょう。

給料や企業年金などが振り込まれるのは三井住友銀行にしていて、公共料金の引き落としも同じ。まとまった貯金はゆうちょ銀行に。いくつも口座があると煩雑になりがちですが、貯める口座と、流動性のある口座を別にしておくと、記帳すればひと目でわかります。

■財布の中は本当に必要なものだけ

わたしがいつもバッグに入れているお財布には、2つ折りの紙幣、区立図書館の貸し出しカード、ドラッグストアとワオンのポイントカード、Tポイントカードがついたヤフーカード、免許証と保険証が入っています。銀行のキャッシュカードは持ち歩いていません。だから、とっても薄いと、人に見せると驚かれます。

通勤には定期券に、クレジット機能の付いたビュー・スイカカードを使っています。愛用しているルイ・ヴィトンのカードケースには、スイカと何かのときのためにテレフォンカードと千円札が一枚。

カードケースやお財布がクレジットカードやポイントカードでぱんぱんにふくれている人を見かけますが、ほんとうにいるものだけにして、あとは整理すると、自分がいくら持っていて、毎月いくら使っているのか。いくらまでなら、使ってもいいのかが、わかりやすくなると思います。

試行錯誤の結果そうなりましたが、独身時代はクレジットカードで限度額いっぱいショッピングしたこともありました。いまはネットショッピングでクレジットカードを使いますが、すぐに財布から使った分の現金を抜いておき、まとまったら引き落とし口座に入れて、お金の流れがわかるようにしています。

お金の流れをシンプルにして、全体を把握しやすくする。

■欲しいものリストを作って、衝動買いをセーブする

ソニア・リキエルの折りたたみ傘、カシミアのセーター、丈65センチのコート、真珠のピアス(18金でチャームが揺れるタイプ)……。

これはわたしがスケジュール帳のメモページに書いている「欲しいものリスト」です。買いたいものを衝動買いしないように、いったんリストに書き入れることで冷静に考えられます。

ファッションも大好きで、ヴィンテージの北欧家具や雑貨にも興味があるので、インテリア雑誌、WEBページを見ていても、「あ、これ欲しい!」と物欲がむくむくとふくらみます。さすがに買いたいものをすべて買っていたら、たとえ予備費があっても、お金がなくなってしまうでしょう。

そこで、欲しいものに出会ったときは、スケジュール帳を開いて、さっそくメモ。ブランドや品番、色や素材などをできるだけ細かく書いておいて、あとはメルカリやヤフオクで出品されていないかチェックします。

たとえ、イメージにぴったりのものがメルカリで見つかっても、すぐに買いません。まずは「いいね」をチェックしておき、少し日にちを置いてから、まだ欲しかったら、もう一度ページを見ます。

わたしの欲しいものリストには、買ったものには「☑」を入れ、時間がたっていらないなと思ったものには「×」をそれぞれ冒頭につけます。その後、どこでいくらで買ったのかをメモしておき、これからのショッピングの目安にします。

■たまの贅沢は予備費から

ふだんはシンプルに、質素に暮らしている分、使うときは私なりに思いきって使います。服は生活費で買いますが、たまに買う素敵なバッグやピアスは予備費から使います。

ここ数年愛用している基礎化粧品の「箸方化粧品」も、送料無料になる8千円分以上をまとめて買うので、ふだんの生活費で予算オーバーになることも。そのときは予備費から出します。お中元お歳暮、妹や母、叔母、親友の誕生日などには、鉢植えのお花やコスメ用品をプレゼントしたり、慶忌費も、予備費を使っています。

また、年に数回の一泊旅行や日帰り小旅行、何年かに一度の海外旅行も、予備費から予算を組んだので、贅沢ではなくても楽しい旅が楽しめました。旅先ではおいしいものを食べ、想い出になる自分へのご褒美も買います。

4年前にパリに旅したときは、ひとめ惚れしたクッションカバーを買いました。いまもソファに置いていて、パリの街並みを思い出し、高かったけれど買ってよかったと思っています。

本当に欲しいものにお金を使うと、満足度が高い。

撮影=林ひろし
スケジュール帳に「欲しいものリスト」をメモしています。アイテム、色や特徴、予算などをリストにして、買ったら、☑点を、欲しくなくなったらバツ印をつけます。 - 撮影=林ひろし

■老齢年金が始まれば、6万5千円+厚生年金と企業年金でほぼOK

2021年2月の誕生日がくると、わたしは65歳。いよいよ老齢年金がもらえる年齢になりました。国民年金の約6万5千円と、60歳からもらっている企業年金5万円に老齢厚生年金を合わせたら約13万円。

ショコラ『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』(マガジンハウス)

わたしが生活費に、と決めている月12万円に不足ない金額になります。

ここで大きな病気をしたり、なにかアクシデントに見舞われたら、計算は狂ってしまうかもしれませんが、それは時の運。そのために貯金した「老後の資金」を使います。でもあんまり心配しすぎても、かえってストレスになってしまうので、ここまで準備できたことを良しとしようと思います。

60歳のとき、年金事務所で調べてもらったら、合計金額の目安は11万5千円でした。この数字が事前にわかっていたからこそ、月12万円でやっていけば、なんとかなる、とわかっていたのです。いまでは、それほど難しくはありません。家計簿もやめ、パートも週休3日にシフトダウンし、2つの財布でやりくりできるようになりました。これで、これから先、年金だけで暮らす日々になっても、なんとかやっていける自信がついたと思います。その後も仕事をして厚生年金を納めているので、最近改めて調べてもらったところ、受給額が上がっていました。

65歳の誕生日をどんな気持ちで迎えるかは、まだわかりません。ひとつだけいえるのは、老齢年金はこれまで必死で働いてきたわたしへのプレゼントのように感じること。当然のことかもしれませんが、ありがたい気持ちです。

年金をいくらもらえるか、早くから知っておいたほうがいい。

撮影=林ひろし

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ショコラブロガー
42歳のとき別居、5年後に離婚。パート主婦から一転、営業ウーマンとして自活してきた。57歳で退職、現在はパート勤務。著書に『58歳から 日々を大切に小さく暮らす』(すばる舎)。
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(ブロガー ショコラ)