Jリーグで通算100ゴールを超えるFW鄭大世【写真提供:©FCMZ】

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【鄭大世インタビュー|Vol.2】新潟で復活を印象付けたハットトリックの3点目を解説

 Jリーグ通算100ゴールを誇る元北朝鮮代表FW鄭大世は、2021年シーズンからJ2のFC町田ゼルビアに加入した。

 昨季シーズン途中、J2アルビレックス新潟のラブコールを受けて期限付き移籍し、リーグ戦26試合9得点をマーク。奇しくも、その後に新天地となる町田相手のハットトリックが復活のきっかけとなった。今回はゴールラッシュを締めくくった、会心の超絶ボレー弾を解説してもらった。(取材・文=Football ZONE web編集部・小田智史)

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 2020年10月4日に行われたJ2リーグ第24節・新潟対町田戦、鄭大世は1-0で迎えた後半19分から途中出場。後半32分にMF中島元彦の左サイドからのクロスを、ファーサイドに駆け込んでダイレクトシュートでゴールを奪うと、同44分には自ら獲得したPKを冷静に決めて、3点差にリードを広げた。

 トドメの一撃が生まれたのは後半アディショナルタイム。後方からのMF福田晃斗の浮き球パスを、鄭大世は鮮やかなダイレクトボレーで合わせ、ハットトリックを達成した。自らを「ヘディングでリズムを作る選手」と表現する鄭大世にとって、相手に競り勝ち、GK小島亨介のロングフィードをマイボールにしたプレーが最初のキーポイントだったという。

「2点取っているのでストレスフリー、ノープレッシャーの状況。点を取ったら恐怖心もなくなって、力が抜けてプレーが良くなる。あのボレーに関しては、まず(ゴールの前のプレーで)ヘディングで1回収めたところで自信が付きました」

思い通りのボレーが炸裂「腰の回転を利用して、ボールに勢いをつける感じ」

 そして、シュートシーンは要求した場所よりもパスは後ろにずれていたが、日頃からダイレクトで打つ練習を徹底していたことで、迷いなく体が動いたと語る。

「福田晃斗が完全フリーで前を向いていて、3対2の状況。相手のラインも高い状況のままで、僕が同じラインに立って、左手で『この裏にくれ』ってアピールをしました。僕のイメージとしてはもう少し前で、ダイレクトでヘディングを打ちたかった。ただ、実際に来たのはちょうど自分の真上。もしあそこで一度止めたら、(町田MF佐野)海舟とか寄せが上手いから、取られているだろうし、ダイレクトで打つことでGKのタイミングを外せる。シュートは絶対ダイレクトと決めていて、子供の頃からボレーとかオーバーヘッドの練習を繰り返してきました。打って倒れるんじゃなくて、打ちながら体をねじって腰の回転を利用して、そのままボールに勢いをつける感じ。運や勢いもありますが、あの後ろから来たパスを、思い通りにミートできて、コースも良かったですね」

 清水では怪我に苦しむ時期も続き、新潟に活躍の場を求めた鄭大世。それだけに、町田戦のハットトリックは「サッカー選手としての寿命は3年伸びた、と思いました。(あのボレー弾は)スーパーゴールですね」と振り返った。

 新天地・町田でも、チームを勝利に導くゴールで攻撃を牽引していく覚悟だ。

※取材はビデオ会議アプリ「Zoom」を使用して実施。

[PROFILE]
鄭大世(チョン・テセ)/1984年3月2日生まれ、愛知県出身。川崎―ボーフム―ケルン(ともにドイツ)―水原三星(韓国)―清水―新潟―町田。J1通算181試合・65得点、J2通算63試合・35得点、北朝鮮代表通算33試合・15得点。敵を弾き飛ばす驚異的なフィジカルと、闘争心あふれるプレーでゴールを陥れる“魂のストライカー”。2010年の南アフリカ・ワールドカップに出場するなど、豊富な経験を新天地・町田の勝利のために還元する。(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)