いったい誰が、こんな姿を予想できただろう。

 なでしこジャパンこと日本女子代表が、リオ五輪最終予選で大苦戦している。オーストラリアとの開幕戦に敗れ、韓国と引き分け、中国に敗れた。ベトナム、北朝鮮との対戦を残すが、五輪出場はもはや絶望的である。世界中から楽観主義者を集めても、なでしこの予選突破を支持する人は現われないに違いない。

 ここまで勝てていない理由は、複合的なものだろう。澤穂希さんの引退だけでまとめたら、現実を見誤る。

 個人的には、短期決戦の難しさを感じる。初戦のオーストラリア戦の躓きを、そのまま引きずってしまっている。

 オーストラリに喫した2点目は、横パスが主審に当たり、オーストラリアへのパスとなって失点したものだった。今大会のなでしこは、このシーンをきっかけとして運に見離されていった。

 中1日のスケジュールで、メンタルを切り替えるのは容易でない。「切り替える」という声は何度も聞こえてきたが、初戦のショックを払拭できないまま3試合を終えた。

 不運を振り払う好機はあった。韓国戦である。

 0対0で推移する後半にPKを献上するものの、GK福元のセーブで危機をしのいだ。その後、途中出場の岩渕のヘディングシュートでリードを奪う。クロスに飛び出したGKが触れず、岩渕の頭にボールが当たり、そのままゴールへ転がっていった。シュートを「打った」のではなく「当たって」入った幸運な先制弾だった。

 アディショナルタイムを含めて、残り時間は10分もない。普通ならこのまま逃げ切れるし、逃げ切らなければいけない展開である。
 
 ところが、リードを奪った3分後に被弾してしまうのだ。それも、ディフェンスを崩されたわけではない。GKとCBが交錯し、GKがこぼしたボールを相手に蹴り込まれた。やらずもがなの失点である。
 
 経験豊富な選手を揃えたチームでも、ここまで悪循環に陥ると抜け出すのは難しい。
 
 中国戦では自陣でのバックパスが相手に渡り、先制点を与えてしまった。次に得点したのも中国だった。DFがブロックしたシュートは、そのぶんだけ軌道が高くなり、GKの頭上を越えてしまった。
 
 戦術的なエラーはもちろんあるだろう。多いだろう。ただ、短期決戦の「流れ」というものを、見落とすわけにはいかない。
 
 今回と同じセントラル方式で行われた、男子のリオ五輪最終予選は示唆に富む。
手倉森誠監督が率いる日本は、北朝鮮との初戦に勝利して勢いをつかむことができた。褒められた内容ではなかったが、とにかく勝ち点3を獲得した。第2戦では内容にも改善が見られ、連勝を飾った。勝つことで課題も修正されていくのが、短期決戦というものなのである。なでしこを撃破したオーストラリアは、3連勝で首位を快走する。初戦の重要性が分かるだろう。
 
 いずれにせよ、なでしこがひとつの「区切り」を迎えたのは間違いない。