着実に成長する岡本「少ないチャンスを逃さないよう、しっかりバットを振りたい」

 ボールをたたきつける音は快音とはいい難い。ボールがつぶれるような“破壊音”に似た音を響かせながら打球を飛ばす。智弁学園からドラフト1位で入団した巨人・岡本和真内野手が着実に成長し、素材の良さを証明している。

 キャンプは高卒ルーキーながら1軍キャンプを検討されていたが、自主トレ期間中に腰に張りを訴えたために実現しなかった。1年生は初めてのキャンプで、必ず無理をしてしまう。そのため焦らずに英才教育を施していくことになった。

 すると初めての実戦となった2軍紅白戦で投手内野安打を放ち、初打席初安打をマーク。投手がきちんと処理していればアウトになるゴロだったが、幸運な形で初ヒットを手にすることができた。そしてヤクルトとの2軍戦では対外試合2試合目にして、プロ第1号のホームランをマーク。すぐに結果が表れ始めている岡本は「少ないチャンスを逃さないよう、しっかりバットを振っていきたい」と一戦一戦がチャンスだと思い、必死に戦っている。

 昨年、甲子園で1試合2本塁打を放つなど、高校通算73本塁打と大物スラッガーとして活躍。巨人はドラフトで多くいる即戦力の投手ではなく、その高校生野手をドラフト1位で指名した。守備や走塁はまだまだ成長途上だが、バッティングは非常に高く評価されている。

 これまで何人もの選手が「高校通算○○本」と評価されてプロ入りしてきたが、鳴かず飛ばずでユニホームを脱いでいったケースも珍しくない。そんな中、高い期待を集める岡本は一体、何がすごいのか。

「松井や坂本らいい打者が持っている特徴」を持っているルーキー

 首脳陣によると「フォームを直すところがほとんどない」という。金属バットを使ってきた高校生はボールを遠くへ飛ばそうとして、腕の力を前方に勢いよく押し出す傾向にある。向かってきたボールを「打ちにいく」感覚だ。多少、芯から外れていても飛ばすことが可能で、それでも強い打球が打てる。

 しかし木製バットになると、そのフォームではまず芯でとらえないとボールは飛ばない。とらえられても、腕力だけに頼った打撃や「打ちにいく」スイング軌道ではバットがボールに触れている時間が短く、遠くへ飛ばすことは難しい。

 あるコーチは「普通の高卒新人はボールをたたきにいくんだけれど、岡本はそうではない。肘をうまく入れて、腰で払うイメージ。少し内角で差し込まれても、バットが体の内側からしなるように出ているから、つまらされずに芯でとらえられる。松井(秀喜)や坂本(勇人)など、いい打者が持っている特徴」と話す。プロ入りした選手にはまずこのような理想のフォームをたたき込むが岡本はすでにできており、教える必要がなかったのだという。

 岡本は「とにかくバットを振っていた」と高校時代から木製バットで素振りを繰り返してきたことを明かす。昨年出場した第10回U―18アジア野球選手権(バンコク)でも木製バットで5割近いアベレージを残し、プロのスカウトから「木のバットも十分対応できている」と高い評価を受けていた。木製バットへの対応力、体の使い方に岡本の良さが詰まっている。

 あとは実戦を積み、体力をつけること。1軍レベルの投手の配球、変化球のデータを頭にたたきこみ、いかに引き出しを増やしていけるかが鍵となる。守備や走塁の向上も必要だ。

 2軍キャンプ終盤では1試合無安打の試合もあり、今はプロのレベルの高さを痛感しているところ。打撃だけでは活躍できない。だが、真面目な練習態度やその潜在能力を見れば、1軍で活躍する日はそう遠くはないのかもしれない。