小林3安打完封、日大鶴ヶ丘、東大和に快勝

 春季都大会で西東京勢として唯一ベスト4に進出した日大鶴ヶ丘と、1978年と1985年の西東京大会で準優勝するなど「元祖都立の星」ともいうべき都立東大和の対戦。

 日大鶴ヶ丘は、故障者が多い中での快進撃だった。故障者も戦列に復帰した中で迎えた夏の大会は、春とは少し趣が異なっていた。一番目についた変化は、春は投手や外野手として活躍した山岸哲也が二塁手で出場していたことだ。その他、数人のメンバーが入れ替わっている。

 この日、日大鶴ヶ丘の先発は、春季大会では投げていない背番号11の小林晃大が、初戦の日大二戦に続いて登板。小林は、ほぼ完ぺきな投球をし、日大鶴ヶ丘は都立東大和を圧倒した。

 小林の唯一のピンチは、1回表だった。都立東大和は2番渡部菖平が中前安打で出塁。渡部は、身長158センチながら、長身選手が多い一塁手を務める、ファイト溢れる選手だ。日大鶴ヶ丘の小林は、一塁に牽制したが、これが暴投になり、渡部は二塁へ。3番吉田玲は三振したものの、4番児玉隼人の中前安打で都立東大和は二死一、三塁のチャンスを迎えた。しかし続く加園凌大は二飛に終わった。

 この後小林は、圧巻の投球をする。小林はチェンジアップなどで緩急をつける、技巧派タイプの投手ながら、ストレートにも力があり、都立東大和打線は打ちあぐねる。初回に2安打した後は、7回に6番小森駿太が中前安打を打っただけ。わずか被安打はわずか3の完封勝利を飾った。

 日大鶴ヶ丘の攻撃面で光ったのは長打力だ。1回裏、中前安打の山岸を一塁に置いて、4番西田賢太が流した打球は、ライト線ギリギリに入りの三塁打。山岸が還って、まず1点を先取した。

 2回裏には、この回先頭に幾島康平が内角をうまくさばいて二塁打。続く國生将人の犠打、西ヶ谷篤の犠飛で効率よく1点を追加した。4回裏には走者を1人置いて、國生が内角を引っ張って2ラン本塁打。5回裏には山岸が内角を引っ張って本塁打を放った。7回裏には、走者を一人置いて、5番栗田優一の適時打で6点目を入れた。

 春季大会では、打撃面では栗田中心のチームという印象であったが、夏は打線の層が厚くなっている。春季大会では粘りに粘ってベスト4に進出したが、夏は粘りに力強さが加わった。また小林が完封したことで、後半の戦いに向けて、エースの秋山翔や春活躍した山岸を休ませることができただけでなく、小林も投手陣の柱の一人として、起用できる目途が立ったことは大きい。

 都立東大和は、右腕の高塚 雄太、左腕の川手大輝といった技巧派投手に、球に力がある右腕・藤村皇輝というタイプの違う3投手が健闘したが、日大鶴ヶ丘に力負けした。

 この試合は3失策を記録したものの、部員65人の中から選ばれた都立東大和の選手たちの守りはしっかりしている。今の選手たちは、強かった時代のことは知らないが、動きはキビキビしており、伝統が息づいていることを感じさせる。今日、実力のある都立校が増えているが、その先駆けとなったのが、都立東大和だ。また「都立の星」として躍進する日が来ることを期待したい。

(文=大島 裕史)