中国当局が認める「高級記者」の肩書きを持つフォトジャーナリスト・記者の賀延光さんが10日、中国版ツイッターの新浪微博で、中国共産党機関紙・人民日報を批判した。北朝鮮をとりまく緊迫した情勢について他国を批判し注文をつけるが、「自分の責任には言及しない」と論じた。

 庶民の間では、米国への対抗意識から北朝鮮を「自らの信念を貫く」として評価する声も多い。しかし、専門家の間では、「現在の情勢は中国とアジアの安定にとって極めて危険」として、そのような事態をもたらした自国の外交に対する批判的な見方も強い。

 人民日報が10日付で、北朝鮮には「形勢を誤って判断するな」、米国には「火に油を注ぐな」、韓国には「問題点を見誤るな」、日本には「火事場泥棒をするな」とする論説を掲載した。

 賀さんは論説の主張そのものの是非には触れなかったが、「自分の責任には言及しない」などと、これまでの中国の対北朝鮮政策を批判した。中国共産党あるいは中国を「お前」と呼び「お前は長期にわたって虎を飼い、災いを作った。紂を助けて暴虐な事態を招いた」と主張。紂とは古代の殷朝の最後の王で、「暴君」の代表とされている。

 賀さんはさらに「お前の長年の行いが、ならず者に核兵器を獲得する時間を与えた」など、これまでの中国の「朝鮮半島の非核化のための努力」を全面的に否定した。

 同“つぶやき”に寄せられた意見の多くは賀さんの見方を支持するものだ。皮肉を込めた主張も散見することができる。

 中国共産党について「1000回間違えても、1万回間違えても、全部他人の間違い!」、「歴史は証明している。赤い党は必ず英明で正確なのだ」と指摘。同党の独善的な体質や、問題発生の折に強弁を繰り返す姿勢をあてこすった。

 賀さんの主張に賛意を示し、「間違いない。今日の朝鮮(北朝鮮)は中国が一手に作ったものだ。もしも戦争が勃発したら、死傷者について中国も責任があることになる。心から米国と日本の旗が勝利を収めることを祈る。一挙にして、この存在すべきでない国を殲滅(せんめつ)してほしい」と主張する、中国人の意見としては相当に過激な書き込みもある。

 賀延光さんは1951年生まれ。出身地は陜西省。高級記者の称号を持つ。中国青年報の図版部門総監督、中国報道撮影学会副会長。フォトジャーナリストとして活躍しているが、文章記事でも中国の最高報道賞を受賞したことがある。中国共産党員。(編集担当:如月隼人)