――こうしてお話を聞いていると、契約に至るまでの経緯が想像とぜんぜん違うのですが(笑)。

小松:だから言われましたよ。うちのアメリカのスタッフも言ってましたけど、マーベルの人が「日本人の見方が変わった」って(笑)。撮影もものすごく面白かったです。クリーブランド(オハイオ州)での撮影だったんですが、ウチらは確か7〜8人で入って。マーベルが英語のできる日本人をひとりサポートでつけてくれたんですが、毎日エキストラが600人ぐらいいるんですよ。普段はランチであれば、自分でパンに肉を挟んでハンバーガーを食べたりするそうなんですが、僕らは「こっち来てください」って言われて。レストランに入ると、NYから寿司職人を3人連れてきたそうで、その場で寿司を握ってくれたんです。普段はみんな寿司なんて食べられないじゃないですか? だからみんな僕のところに順番に挨拶に来て「ミスター小松のおかげで寿司が食べれる」って(笑)。

――撮影自体はどんな雰囲気でしたか?

小松:僕は日本の映画撮影現場にも足を運んだことがあるんですが、まぁ規模が違いすぎですね。3ブロック分のセットを作っているですが、昼間に平気で爆破したりするんですよ。その上では普通に働いている人たちがいるのに。ビルの上からみんな携帯で撮影してましたね。燃えている人間がタクシーの上に乗って走るシーンとかあって、何遍も撮っているんですよ、燃えているのに。でも、そこは一切映画に出てなかったです(笑)。だから僕は現場を見させていただき、映画はどれだけ「切っていくか」ということなんだと思いましたね。日本人のエキストラも呼んで撮影していましたけど、それも一切映っていなかった(笑)。

――少し話を戻しますが、トニー・スタークが身につけている御社のブレスレット「マグチタン NEO レジェンド」についても教えてください。

小松:これはうちのほうでデザインさせていただいたんですけど、やっぱり「アイアンマン」のイメージですよ。「アイアンマン」の顔っぽいじゃないですか。これのベルト版がその前にあったんですけど、それを改造して作ったんです。そうそう、このブレスレットで感動的なことがあったんです。これ名前が「レジェンド」じゃないですか? 劇中でトニー・スタークが装着するシーンで、商品名の「レジェンド」とかけて「レジェンド」って発言してくれているんですよ(※トニー・スタークがロキと対峙し、ロキの兄のソーについて「レジェンド」と発言している)。マーベルが勝手にやってくれたんですが、知ったときは「やってくれてるやん!」と思いましたね。ウチの商品が実際に映画に登場したときは感動しました。

――「PP」で実際に商品を映画に登場させた結果、その後の売れ行きとかはどうでした?

小松:知り合いの中国人に「映画に登場させて何個売れるか?」って聞いたら、「1億個売れる」って言われたんですよ。この商品は2万円近くするじゃないですか。だから仮に1億個売れたら2兆円になるんです。でもね、やっぱりダメなんですよ。そんなに「物」って売れるもんじゃないから。

――ではかなりのお金を出費してマーベルと「PP」契約を結び、今になって客観的にどう思われていますか? 後悔されていますか?

小松:いや、良かったですよ。すごい財産ですよ。お陰でテレビの取材もたくさん受けたし、いい宣伝になりましたもん。ただ、次回やるなら“変身”に使うんじゃなくて、 ロバート・ダウニー・Jrにアウディに乗ってコラントッテショップにピュッと来てもらい、買い物してもらえたら普通にバァーって売れるでしょうね。CG使って光ったりさせんでも(笑)。あとはウチの商品を実際にあるものとして部品として登場させてもらうとか。キアヌ・リーブス主演の映画「スピード」(1994年)でG-SHOCK(カシオ)がものすごく売れて、今でも売れているじゃないですか? 時計がぼんぼん映るじゃないですか。あんな風にお願いしたいかな(笑)。