68歳、俺がホームレスになった理由

写真拡大

 路上に寝転がるホームレスのおじさんたちをみて、皆様は何を思うだろうか? 彼らの健康を気に掛ける優しい心の持ち主もいれば、「俺はこんなに仕事しているのにぐうたらしやがって」と怒りを覚える人もいるはずだ。前者と後者はおそらく育った環境が違うのか、そもそも人種が違うのか……。

 しかし両者に共通して言えること。それは、「自分だけは大丈夫!」と心のどこかで安心していることだ。日本の終身雇用制度は崩れ去り、管理職でもバッサリ切られる時代。大企業に就職が決まり、鼻が伸び切っている大学生もそれで“人生上がり”なんてわけにはいかない。誰だってホームレスになる可能性はゼロではないのである。

 もしホームレスになった場合、あなたは生きる希望を失ってしまうだろうか。それとも開き直って明るく生きることができるだろうか。

 東京都庁前にある通称“ふれあい通り”には、西新宿のオフィス街とは思えない光景が広がる。そこには25軒(2017年10月現在)のダンボールハウスが路上に並び、カツカツと革靴を鳴らすビジネスマンの真横で、昼間からぐでんとしたおじさんたちが生活している。とはいえ、人それぞれ事情はあるわけで……。彼らはバイトをしたり、紆余曲折がありながらなんとか生きている。その中で4年前にホームレスになったという青木さん(仮名・68歳)にその人生を振り返ってもらった。

◆俺がホームレスになった理由 〜海ほたるから落下して〜

 転機となったのは50代後半の頃だったという。68歳といえば、今ごろは定年退職をしてスローライフを満喫している真っただ中でもおかしくはないが……。

「俺は仕事を早期退職したんだ。事実上はクビだったが形式上は自己都合退職にされちまった」

 青木さんは長年、建設作業員として身を粉にして働いた。ホームレスの人たちがいうには、ガテン系の職業は、末端の労働者の場合、途中で身体を壊してしまう人も多く、貧困に陥るケースも多いらしい。特に高度経済成長期に日本を支えた労働者たちは過度な肉体労働でケガをしたのちに、そのまま使い捨てにされることもあったという。しかし青木さんの場合、少し事情が異なるようだ。彼は現場監督も務めており、出世をしている人間だった。

「取引先のやり方が気に入らなくてな。いろいろトラブルを起こしちまって最後にはクビだ。俺だけが悪いわけじゃないんだが、『青木が原因だ』と同僚たちに密告されたんだ。そしたら上から呼び出されて『自分から会社を辞めてくれ』だとよ。だから退職金も微々たるものだったんだ」

 青木さんは周りからハメられる形でクビに追い込まれた。誰か1人が悪者となればトラブルが丸く収まるという状況で、彼はその1人に選ばれてしまったのだ。そんな会社に残る気にもなれず、言われた通り自分から退職したのだという。そのとき青木さんは50代後半。建設現場に関しては経験も知識も豊富であったが、再就職は厳しく、非正規雇用者として再び末端の労働者に戻ってしまった。

「それでもなんとか生活はできていたんだよ。でも64歳の時に大ケガをしちまって、そのまま引退だ。海ほたるの作業現場から落下したんだ」

 海ほたる(東京湾アクアライン)の現場は常に危険と隣り合わせだったという。周りに何もない海上の現場はとにかく風が強い。高さ100m近い場所で作業していた青木さんは強風にあおられ一直線に落下。命綱のおかげで一命はとりとめたものの、その衝撃で身体を壊し、心臓病まで患った。障害保険ももらえず、治療やら何やらですぐに貯金は底をつき、1年もたたずにホームレスへと転落した。

「年金の支払いもバックレているしな。選択肢なんてホームレス以外になかったんだよ」