<トゥルドーはイメージ通り自由世界の旗手なのか? カナダ人ジャーナリストが明かす真の姿>

若くて感受性豊か、フェミニストで環境保護論者。筆者の母国カナダのジャスティン・トゥルドー首相は、ドナルド・トランプ米大統領とは真逆のイメージを振りまいている。波打つナチュラルヘアも好対照だ。

首相の好感度は国の好感度につながる。ポピュリズムとは無縁の進歩的な安息の地――こんなイメージをカナダは獲得しつつある。

英エコノミスト誌は昨秋、カナダを象徴するカエデの葉の冠をかぶった自由の女神像を表紙にした。CNNは今や「カナディアン・ドリーム」の時代ではないかと問い、ニューヨーク・タイムズ紙は、カナダは自由世界の新しいリーダーだと書いた。

トランプの勝利に打ちのめされたアメリカのリベラル派は、トゥルドーとカナダに理想の姿を求めている。しかしそれは幻想にすぎない。カナダはアメリカに対抗するのではなく、アメリカを模倣する国なのだ。

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アメリカで何かがあると、その数年後にカナダで似たような現象が(より生ぬるい形で)起こる。アメリカでは09年、変革を求める国民がオバマ政権を誕生させた。カナダも15年、首相を古くさい保守派のスティーブン・ハーパーから、若い中道派のトゥルドーに交代させた。

幻想は現実を見えなくする。トランプが最初の入国停止の大統領令を出した直後、アメリカに拒否された難民の受け入れをトゥルドーが明言した、と米メディアは報じた。でも実際は、トゥルドーの曖昧なツイートを都合よく解釈しただけ。いわく「迫害、テロや戦争から逃れる人々へ。信仰にかかわらず、カナダ国民はあなた方を歓迎します。多様性は私たちの力です」。

このニュースが収まった頃、トゥルドー政権は難民政策に変化はないとこっそり釈明した。アメリカで難民認定されずカナダに亡命受け入れを求めた者も、従来どおり出身国に送還するとのことだ。

[2017.5.23号掲載]

ジェシー・ブラウン