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Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は3月23日、IoT機器で求められる演算性能や消費電力、セキュリティ、接続性などのニーズを搭載した新たな「SimpleLinkマイコンプラットフォーム」を発表した。同プラットフォームは、前週にドイツで開催された「Embedded World 2017」にて発表されたもので、来日したTIの超低消費電力MSPマイコン事業 ゼネラル・マネージャであるミラー・アデア(Miller Adair)氏が説明を行った。

同プラットフォームは、既存のCortex-M4Fベースマイコン「MSP432」を中心に、CC1310やCC1350、CC2640R2Fといった無線マイコン、Wi-Fiネットワークプロセッサ製品などで構成されるもの。その最大のポイントは、IoT機器開発で求められるセキュリティニーズに対応する各種の機能への対応、ならびにプラットフォーム上のマイコン/プロセッサ間で、共通のソフトウェア開発キット(SDK)を用いて開発されたコードを、100%の互換性を持たせて流用することを可能としたという点。しかもこのコード互換性については、POSIX準拠のドライバさえ使えば、どのようなRTOSであっても対応することが可能であり、「一度の開発投資で、IoT機器のプラットフォームを変更しても使えるので、顧客は付加価値部分であるアプリケーションの開発により多くの時間を割くことができるようになる」とミラー氏は説明する。

さらに、プラットフォームとしては、SDKのほか、ハードウェア開発キット(TI LaunchPad)やドライバなどをライブラリから検索を行う「Resource Explorer」、無償の統合開発環境(IDE)「Code Conposer Studio IDE」、ユーザーのペースでトレーニングを受けられる「SimpleLink Academy」なども提供されており、IoT機器開発に必要なものはほぼ揃っている状態となっている。

また、今回の同プラットフォームの発表に併せて同社はSimpleLink Wi-Fi製品として、Wi-Fi対応のワイヤレスマイコン「CC3220」と、ワイヤレス・ネットワーク・プロセッサ「CC3120」の2製品も発表している。CC3220は、Cortex-M4ベースのアプリケーションプロセッサ部分と、別のARMコアを採用したネットワークプロセッサ部分が独立した形で構成される2コアマイコンで、アプリケーションプロセッサ側には1MBのフラッシュメモリと256KBのRAMを搭載しているほか、ネットワークプロセッサ部分には、25のセキュア機能を搭載したハードウェアの暗号化エンジンが備えられ、これを活用することで、顧客ごとに異なるセキュリティニーズに対応することが可能となったという。

また、バッテリの長寿命化にも考慮した設計を採用したとのことで、前世代品比で消費電力を30%向上。これにより、単三電池2本で、常時稼働型のサーモスタットであれば1年間の動作が可能となるほか、動きを検知して撮影を開始する監視カメラの場合で3年、トランシーバや資産追跡用のトラッキングタグなどであれば単三電池の製品寿命となる5年間、稼動させることが可能となったとしている。

なお同社では、開発キットの購入前でも、Code Composer Studio IDEをベースとしたブラウザ・バージョンである「CCS Cloud」を無償オンライン・リソースとして利用可能な状態であるとしており、顧客はこれを用いて、製品開発を開始することが可能となっていると説明しているほか、LaunchPadを有する顧客であれば、SimpleLink マイコンSDK製品のダウンロードも可能となっているとしている。

また、CC3220搭載LaunchPad「CC3220SF-LAUNCHXL」も、単価(参考価格)49.99ドルで、CC3120のブースタパック・プラグイン・モジュール「CC3120BOOST」は、同29.99ドルですでに提供を開始しているという(CC3220SF-LAUNCHXLならびにCC3120BOOSTは、2017年3月23日時点で技術基準適合証明申請中だという)。

(小林行雄)