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1982年のサルーンカー選手権レーサーが現マシン

ピットレーンへ滑り込んだアルファ・ロメオ GTV6が、チームのガレージへ戻る。リチャード・メルビン氏が、手際よくタイヤの温度と空気圧をチェックしていく。「こっちのアウトショルダーが、まだ冷えているかな」

【画像】『GTV6 BSCCレーサー』などアルファ・ロメオのクラシック・レーサー 名作『スッド』と合わせて 全104枚

筆者がいるのは、グレートブリテン島南部のスラクストン・サーキット。1982年から3年間、英国サルーンカー選手権(BSCC)へ挑んだGTV6 2.5のレーサーが、クリス・スノウダン・レーシング(CSR)の現役マシンだ。


アルファ・ロメオ GTV6 BSCCレーサー(1982年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

2025年の第82回グッドウッド・メンバーズ・ミーティングでは、ポテンシャルの高さを披露したものの、エンジン不調からのガス欠でリタイアに喫した。2026年のイベント、「ウィン・パーシー・トロフィー」へ向けて、体制は整いつつある。

マシンはグループ1仕様で、サスペンションの可動部分はすべてピロポール。ゴムブッシュはない。フロントのトーションバーやアンチロールバーも、強化済み。ダンパーは、クァンタム・レーシングと共同開発された専用品だ。

プライベーターからチームドライバーへ

1970年以前のクルマを対象したグッドウッドのサーキット・イベントでは、グループ1には旧式なクロスプライ・タイヤの装着が義務付けられている。そのため今回のテストは、操縦特性の仕上がりを確認することが目的にある。

当日のドライバーは、チーム代表でもあるクリス・スノウダン氏で、コ・ドライバーはティフ・ニーデル氏。昨年以上の快走でフィニッシュできるよう、調整に余念がない。


アルファ・ロメオ GTV6 BSCCレーサー(1982年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

このマシンは、ナポリーナ・アルファ・ロメオ・ディーラー・チーム(ARDT)に属した、故ジョン・ドゥーリー氏がBSCCを戦ったもの。アルファ・ロメオUKの財務責任者でもあった彼は、1970年代にプライベート・ドライバーとしてレースへ挑み始めた。

1975年、チームマネージャーを務めることになるマイケル・リンゼイ氏と、アイスクリーム事業で成功したレオ・ベルトレッリ氏の共同で、ARDTが結成。ドゥーリーは1976年からチームドライバーに任命され、アルファスッドでBSCCを戦った。

チームメイトの怪我を機にレースから引退

1981年には、アルファスッド tiをドライブし、1300ccクラスで優勝。1982年シーズンに、このGTV6 2.5へ乗り換えるが、成績は安定しなかった。

しかし、1984年は状況が好転。クラス優勝を勝ち取り、ドライバーズ・ランキングでも3位入賞を果たしている。1986年には、GTV6 2.5と同じエンジンを積んだアルファ・ロメオ 75へマシン変更。1987年シーズンは、ターボエンジンでライバルと競った。


アルファ・ロメオ GTV6 BSCCレーサー(1982年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ところが、チームメイトのロブ・カービー氏がクラッシュで深刻な怪我を負ったことを機に、ドゥーリーもレースから引退。数10年を経て、2010年にドゥーリー本人からメルビンはマシンを譲り受けている。

彼は当時、ARDT仕様のスペアパーツを探していた。捜索網を広げる中で、ドゥーリーという人物が大量の部品を所有している、という情報を得ていた。

GTV6が眠っていた鶏小屋のような場所

「鶏小屋のような場所へ、クルマと部品が押し込まれていました。在庫を確認して連絡すると答えてくれたんですが、結局連絡はなかったです」と、メルビンが回想する。

だが2009年に、サーキットでドゥーリーと再開すると、在庫リストを作ったことを教えてもらう。すぐに鶏小屋へ向かうと、スポンサーカラーのホワイトに塗られた、GTV6が目に飛び込んできたらしい。


アルファ・ロメオ GTV6 BSCCレーサー(1982年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

「ナポリーナ(ARDT)仕様なのか確認すると、案の定そうでした。彼から購入した時点では、悲惨な状態でしたよ。CSRのワークショップへ運びレストアに着手し、ボディシェルを仕上げるだけで相当な作業になりました」

「何しろ、このクルマの部品は残っていません。自分たちがレーシングカー用の部品を提供している理由の半分は、他にないからということもあります」

パネルを継ぎ足しても基本的にはオリジナル

「ルーフは腐食していて、交換は避けられませんでした。1985年のスポンサー主催イベントでクラッシュし、補修されていたんですが、そこからサビが進んだようです。最終的にフロアも交換。リアパネルも大幅に手を加えています」

「トランスミッション・トンネルには、昔にジャッキアップされた跡が残っています。レースで、フライホイールが突き破った跡もそのまま。多くの部分でパネルの継ぎ足しが必要でしたが、基本的にはオリジナルを保っています」と、彼が続ける。


アルファ・ロメオ GTV6 BSCCレーサー(1982年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

レース前提の小さなメーターパネルへ収まる回転計は、スタック社製。ステアリングホイールの擦れたリムが、これまでの活躍を物語る。

この続きは、アルファ・ロメオ GTV6 BSCCレーサー(2)にて。