今後は韓国での活動も視野に入れているという

写真拡大

“マッチ”の愛称で親しまれる歌手・近藤真彦(61)の代表曲が、韓国で再び脚光を浴びている。今や「シンドローム級の盛り上がりを誇っている」(韓国通の音楽関係者)とも言われるほどで、1981年発売の4枚目のシングル「ギンギラギンにさりげなく」に改めて注目が集まっているのだ。

 ***

【写真を見る】「名前より『ギンギラ』という歌のパワーが…」 マッチ初の韓国公演の様子

 昨今の韓国では、マッチに限らず尾崎豊さんや松田聖子(64)、中森明菜(60)、さらにはチェッカーズといった、いわゆる日本の「昭和アイドル」が脚光を浴びている。この盛り上がりを背景に、今年に入って聖子が仁川で韓国公演(2月22日)を行い、それに続いてマッチも6月27日にソウルでコンサートを開催した。聖子同様、マッチにとっても初の韓国コンサートだった。そこで、韓国内での人気についてマッチに語ってもらうとともに、現在の韓国の音楽事情を探った――。

今後は韓国での活動も視野に入れているという

 韓国でのマッチ人気のきっかけは、2年前の24年だった。韓国のテレビ局MBNが放送した「日韓歌王戦」で、卓越した歌唱力で韓国でも人気を集める“10代の日本人アーティスト”住田愛子(18)が、ダンサーを従えてマッチの代表曲「ギンギラギンにさりげなく」を熱唱したところ、同曲が一気に注目を集めるようになったという。

「この時の住田さんの出演映像は、現在でも再生回数を伸ばし続けています。すでに1400万回にも迫る勢いです」(MBN関係者)

 その盛り上がりを受け、マッチも自ら訪韓。テレビ番組「日韓トップテンショー」(MBN)に初出演し、「日韓歌王戦」に審査員として登場するなどしたこともあり、“マッチ人気”はさらに急上昇した。昨年から今年にかけては、若年層にまでファン層を広げているという。

二度目の波に

「60歳を過ぎてからですからね。まさか韓国で人気が出るなんて思ってもいませんでした」

 こう驚きを語るのは近藤真彦、マッチ本人だ。

「『ギンギラ』が、ここに来て再び韓国で話題になったことで、またチャンスが来たのかなっていう空気を感じています。ぜひこの波に乗りたいなと思い、韓国のテレビやラジオ、その他のメディアからのオファーを積極的に受けてきました」

「ギンギラギンにさりげなく」は、作家・伊集院静氏の作詞家名である伊達歩(作詞)と筒美京平(作曲)による作品で、81年に近藤の4作目のシングルとして発売された。「第23回日本レコード大賞」や「第12回日本歌謡大賞」など、その年の音楽賞では新人賞を総なめにしたことでも知られるが、その人気は海を渡り韓国にも波及していた。

「本当にありがたいことでした。当時、韓国ではローラースケートが大ブームでね。とにかくどこのローラースケート場へ行っても『ギンギラ』がバンバン流れていました」(マッチ)

 81〜85年ごろのことである。ソウルを中心に室内ローラースケート場が急増し、中高生や大学生のデートスポット、遊び場となっていた。当時の韓国では、日本の歌謡曲をはじめとする大衆文化は公の場での使用が禁止、あるいは制限されていたのだが……。

「そもそもローラースケート文化そのものが米国や日本の影響を受けたものと言われていますからね。日本の音楽は禁止されていても、実際には海賊版として流入していた状況。なので、そうした屋内施設で日本の音楽が流れていても不思議ではない。法令自体も、それほど厳格に運用されていたわけではなかったのです」(音楽関係者)

おぼえた違和感

「もう40年以上も前のことですが、『ギンギラ』と『近藤真彦』が結びついていないと感じた記憶は残っています。当時、韓国のタクシーで運転手さんに聞いたら“歌は知っているが近藤真彦は知らない”って。僕のことを全然知らなかったですもん(笑)。それは今も変わってないでしょうね。やはり僕よりも、楽曲の力、歌の力の方が圧倒的に大きいので」(マッチ、以下同)

 当時、ローラースケート場に集まっていたのは、マッチと同じくらいの若い世代だった。

「ファッションにも興味があって、ちょっと色気づいていて……。そんなローラー族っていうのかな、ローラースケート場に集まっていた人たちが一番聴いていたのが『ギンギラ』。そのときのカルチャーが現在につながっているのかな、と今回改めて実感しています。今は、“第一次ギンギラ・ブーム”の時にできなかったことを、この“第二次ギンギラ・ブーム”で実現できればいいなと思っています」

なぜ昭和アイドルが

 韓国で日本文化が本格的に解放され始めた2000年以降、韓国と日本を行き来しながらコラムを執筆し、韓流アーティストのライブや芸能・文化を日本に紹介し続けてきた、日韓文化親善大使で女優の椎名まこさんは、韓国内でマッチをはじめとする日本の「昭和アイドル」が支持される背景について、こう分析する。

「日本の音楽状況にも似ていますが、その基盤となっているのはカラオケだと思います。韓国では世代を超えて盛り上がれる娯楽がカラオケで、ここ数年は日本の歌謡曲にも人気が集まっています」

 10年ほど前から韓国ではトロットと呼ばれる歌謡曲・演歌が人気なのだという。

「1人でも歌えるし、みんなでも盛り上がれる。カラオケで盛り上がる曲には人気が集まるし、最近ではテレビでもトロット番組が増えてきています。そうした土壌を背景に、J-POPや昭和アイドルにも注目が集まるようになったのです」(椎名さん、以下同)

ギンギラ人気の理由

 韓国で人気のアーティストが日本人アーティストの楽曲をカバーする機会が増えたことも要因の一つだという。

「マッチさんの『ギンギラギンにさりげなく』も、住田さん効果だけではありません。昨年の日本テレビ『THE MUSIC DAY』で、韓国の人気6人組ボーイズグループ“TWS”(トゥアス)が、マッチさんと共演で『ギンギラギンにさりげなく』を披露したことも、韓国での人気に拍車をかけたと思います」

 ほかにも、「ソロアイドル」という立ち位置が大きいそう。

「韓国では15年以上にわたってK-POPグループが全盛で、目立ったソロアイドルはいない。だからマッチさんが珍しく、新鮮に映った部分もあると思います。これは聖子さんの人気にも共通していますね。ただ、聖子さんの場合は、歌とフリルのドレスが絶妙にマッチして可愛らしく、スタイリッシュで斬新なファッションが韓国の人たちの琴線に触れたのだと思います」

 一方、マッチ人気は「ギンギラギンにさりげなく」の歌詞やメロディーの中毒性、斬新さからでは、と椎名さん。

「韓国では同じ言葉を何度も繰り返すキャッチーな歌詞が受ける。例えば『チンチャチンチャ』や『ノムノムノムノム』など、同じフレーズを繰り返すことが中毒性となって支持される。『ギンギラギンにさりげなく』というフレーズが韓国では今っぽくて面白く、幅広い世代に受け入れられたのだと思います」(椎名さん)

韓国で「マッチ」の名を

 とはいえ、実際に韓国で活動するのは決して簡単なことばかりではない……と神妙な面持ちのマッチ。

「今回も近藤真彦という名前より『ギンギラ』という歌のパワーが前提。結局、第一次ブームも第二次ブームも、常に歌が先行しちゃった。今回は住田さんが歌ってくれたことで盛り上がりましたしね。最近も焼き肉店に入ったら『あの人、ギンギラを歌っているらしいよ』って言われて。つまり、韓国では『あ、マッチだ!』という人より、『あのギンギラのオリジナルを歌っている人だ』と言われることの方が多い」(マッチ、以下同)

 そのうえで「サインをください」とねだられるという。

「僕自身、ずっと心のどこかで韓国で活動したいという気持ちはありました。台湾や香港もそうですが、韓国も大好きな国でしたから。そういう意味でも、このチャンスを生かしたいと思っています」

 今後は韓国での活動を視野に韓国語を学びたいそう。

「韓国のアーティストはみなさん最低限の日本語を勉強してから日本で活動をする。それは本当に見習うべきこと。僕も今回初めて韓国でコンサートを開きましたが、やはり最低限の韓国語は話せないとダメだと思いました」

 今回のコンサートでは一夜漬けで覚えたような韓国語を披露したマッチだが、韓国語を学ぶことには抵抗もあった。

「韓国へ来る前は、60歳になってイチから韓国語を勉強するってどうなのかなと思う部分もありましたし、なかなか頭にも入ってこないから勉強する気になれないところもありました。ただ、これもタイミング。韓国で仕事ができる、あるいは韓国の人たちに喜んでもらえる要素があるのなら、まずは韓国語を勉強して、日常会話くらいは話せるようになりたい。何事もきっかけが大切ですよね」

 昭和アイドルに限らず、前述したように韓国ではJ-POPにも熱い視線が注がれている。米国で最も権威ある音楽チャート「ビルボード」によると、韓国では、Official髭男dism、米津玄師、優里、tuki.、back numberなどが高い人気を集めている。今後も幅広い日本の音楽や歌謡曲が、韓国の音楽シーンを席巻していきそうだ。

渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ)
芸能ジャーナリスト

デイリー新潮編集部