「売らんかな!」でライバルメーカーも追随

 なんだかんだ言ってクルマは見た目。カッコがいいに決まっている。新車なら最新のトレンド=流行に乗っていることも重要だ。

 近年で言えば、”洗練”がキーワードだろう。野暮ったさを微塵も感じさせず、シュッとした印象。とりわけLED電球の普及に伴うスマートかつスタイリッシュな灯火類は、フロント/リヤスタイルだけにとどまらず、クルマ全体のデザインに大きな変化をもたらしたと言える。

 これまでに線香花火のように、ほんの一瞬パッと輝いて消え去った流行があったかと思えば、長きにわたって採り入れ続けられ、現在では定番に成長したデザインもある。今と昔、個々のデザイントレンドはいつ、どのメーカーが最初に考えついて、いかに生み出されたのか? 紐解いてみた。

高級感も文句なし! 車幅いっぱいに広がる一文字テールランプ

 テールランプと言えば左右分割型が一般的だが、最近では左右一体の一文字型も多く見かける。かつて、キャデラック・セビルが5代目でトランクリッド幅いっぱいのハイマウントストップランプを、ポルシェ911が991後期型で発光ガーニッシュを採用したが、テールランプ自体となると、2017年の4代目アウディA8あたりがはしりではないだろうか。

 面発光する有機LEDを使用し、ドライバーの接近や離脱に応じて流れるようなパターンで点灯/消灯を行うほか、改良モデルではモードによって光り方を変える、停止時に後続車が接近すると全点灯で警告するなどの機能も備える。

 そうしたギミックはなくとも、LED技術の進化を活かした細長いランプは、従来の電球では実現し得なかったスタイル。それだけで先進的かつミニマルなイメージを演出。また、ワイド感の強調やボディ全体のデザイン自由度アップにも寄与する。

 一文字型は長さをとることで、スリムでも視認性も確保できるという利点もある。とはいえ、あまり直線に寄りすぎ、かつありふれてくると、没個性化してしまうのも事実。夜間にも車種がすぐにわかる一文字型の登場に期待したいところだ。

さり気なくプレミアムカーをアピールするバラ文字オーナメント

 ブロック体系のフォントを用いた車名やブランド名をボディ前後に大きく掲げる手法は、古くから存在する。ピックアップの後部アオリでは定番だし、コルベットのリヤは3代目以降、ランドクルーザーのグリルは(数年のブランクを経て)40系以来こうしたロゴの配置を続けている。

 そのフォントの間隔を広く取り、いわゆるバラ文字にすると、洗練された印象を与えることを示したのは、ランドローバーではないだろうか。1969年に登場した初期プロトのヴェラールを含め、ボンネット前端とテールゲート中央に車名ロゴを1文字ずつ広めに設置したレンジローバーを皮切りに、ディスカバリーなど各モデルで展開されている。

 さらに時代が進むと、社名ロゴの文字間を広げるブランドが増え、ボルボは2006年頃、ポルシェは2010年頃からバラ文字に。日本では、日産のインフィニティブランド(国内未導入)が設立当初からこのスタイルを採用し続け、レクサスが2021年の2代目NXで導入。最近ではトヨタや日産も社名や車名の採用例が増え、マツダは新型CX-5で社名ロゴをバラ文字としている。

凄みと高級感が特別なクルマのスペシャルカラーのツヤ消し塗装

 メルセデス・ベンツ、ランボルギーニなど高級車やスポーツカーで目にするマット塗装のボディカラーは、クリア層の上にツヤのないクリアを塗り重ねる手間のかかったものだ。独特な質感は、精悍さや高級感を際立たせる一方、その特殊性から限られた車種でのみ採用される。

 日本では2021年に27台限定で販売したスープラRZの”マットストームグレーメタリック”、ホンダは2022年のNSXの最終限定モデル、タイプSに”カーボンマットグレー・メタリック”と呼ぶマットカラーを設定した。それは特別な存在にふさわしい塗装色ということ以外にも、美観を保つための手入れの困難さも理由のひとつだったはずだ。

 しかし、2023年、トヨタではマットメタルカラーのクラウンクロスオーバーの特別仕様車の塗装最表面に、手入れを容易にする特殊表面処理の”TMコート”を採用して耐久性のある防汚性と汚れ除去性を実現。今後TMコートによってマットカラーが多くの車種に展開されることが期待されている。

いまや当たり前の「流行デザイン」にも元祖がある

トヨタ車の顔となった両目が離れたサメがモチーフのハンマーヘッド

 現行プリウス以降、新しいトヨタ顔になりつつあるのが”ハンマーヘッド”。すなわちシュモクザメをモチーフとしたデザインだ。しかし、デイタイムライトやダクトなどの配置が酷似したフロントまわりが他社でも散見され、物議を醸している。

 とはいえ、トヨタのハンマーヘッドは基本的に、コの字型のデイタイムライトとヘッドライトの組み合わせ。この構成は、トヨタ以前にも採用例が多い。海外では先代のメガーヌやルーテシアといったフランスのルノー勢、国内では初代BRZなどのスバル車や、先代ステップワゴン・スパーダといったホンダ車も、ヘッドライトに同様の要素を取り入れている。

 LEDの細いラインという流行の要素技術を用い、車幅灯としての機能や被視認性、生産性などの要求を満たしつつ、デザインや空力なども追求していけば、デイタイムライトが徐々に大型化するのも理解できる。模倣せずとも、結果として収斂進化的に似通ってしまうのはあり得る話だ。

 とはいえ、同じ素材を同じレシピで料理するのではつまらない。”そっくりサン”と言われた各社が、今後のマイナーチェンジでどのようにアレンジするのか、楽しみに待ちたい。

スーパーカー世代にとっての永遠の憧れリトラクタブルヘッドライト

 リトラことリトラクタブルヘッドライトの元祖は1935年、アメリカのコードが発表した810で、張り出した
フロントフェンダーの先端に開閉式ライトを装着。翌年にはアルファロメオが8Cのカスタム仕様で続いた。その後、クライスラーの1942年式デソートや1962年登場の2代目コルベットなど、アメリカ車を中心に普及。これは、アメリカで1940年に義務化された規格型シールドビームを採用しつつ、デザインの自由度を広げる狙いがあったためだ。

 欧州では1962年のロータス・エランが標準装備すると、1970年代に入ってスポーツカーを中心に採用例が増加した。なお、2/3代目コルベットやエランは真空ポンプを用いたバキューム作動式だった。日本では1967年のトヨタ2000GTが第1号で、電動式を採用。1980年代にはセダンやコンパクトカーにも広く展開された。

 しかし、1983年にライト形状規制が撤廃され、地上高規制も緩和されると、重量やコストなどに難点のあるリトラは徐々に衰退。1990年代に常時点灯の動きが広がると収納は無用となり、歩行者保護要件が厳しさを増した21世紀には展開時に突起となるライトが安全基準クリアの障害に。2004年の6代目コルベット
の固定ライト化と、ロータス・エスプリの生産終了をもって、リトラクタブルヘッドライトの量産車は姿を消した。

いまやドアミラーのスタンダードのドアミラーウインカー

 ドアミラー一体型のサイドウインカーを初めて実用化したのは、1998年の4代目メルセデス・ベンツSクラスで、日本では2001年の4代目・日産シーマから。

 従来のフェンダーに設置されたサイドマーカー兼用ウインカーより高く、外に張り出した位置にあることで、後側方から接近する車両などから視認しやすくなるため、右左折時の二輪車の巻き込み、車線変更時やパーキングメーターのような縦列駐車位置からの発進時の接触といった事故の防止に効果が期待できる。

 安全面以外にも、ボディパネルに後付け感のあるライトを設置しなくてすむデザイン性や、サイドウインカーと電動ドアミラーの配線を集約できるという効率性など、メーカー側のメリットもあり、かなり普及が進んだ。

 とはいえ、軽自動車などはコストの問題から未装着車も多い。また、灯火システムの追加でドアミラーが大型化し、空力やデザイン性を阻害するのを嫌ってか、マツダ・ロードスターやGR86/BRZのように、あえて採用しないモデルもある。なお、社外品や、海外仕様の鏡面点灯式などを後付けする際は、光の色や点滅タイミングなどにより車検に通らないこともあるので注意が必要だ。

 〜後編につづく〜

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております