会社から「ボーナスを減らして、その分を基本給に上乗せする」と言われました。社会保険料や退職金への影響を考えると、どちらが有利なのでしょうか?

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会社から「ボーナスを減らし、その分を基本給に上乗せする」と言われると、年収が同じならどちらでもよいように思えるかもしれません。   しかし、基本給とボーナスでは、社会保険料、残業代、退職金、家計管理への影響が変わることがあります。単純に「基本給が高いほうが得」「ボーナスが多いほうが得」とは言い切れません。特に、退職金が基本給をもとに計算される会社では、基本給が上がることで将来の退職金にプラスになる場合があります。   一方で、毎月の社会保険料が上がり、手取りが思ったほど増えないこともあります。会社の規程を確認して判断することが大切です。

基本給に上乗せされると毎月の収入は安定しやすい

ボーナスを減らして基本給を増やす場合、まず大きいのは毎月の収入が安定しやすくなることです。ボーナスは会社の業績や人事評価によって変わることがあります。一方、基本給は毎月支払われる給与の中心なので、生活費の見通しを立てやすくなります。
たとえば、年間60万円のボーナスを減らし、その分を毎月5万円ずつ基本給に上乗せする場合、年収だけを見ると同じです。しかし、住宅ローン、家賃、教育費、食費などは毎月発生します。毎月の給与が増えれば、ボーナス払いに頼りすぎずに家計を組みやすくなります。
また、残業代にも影響することがあります。残業代は、原則として通常の賃金をもとに計算されます。基本給が上がれば、残業代の単価が上がる可能性があります。ボーナスは通常、毎月の残業代単価には直接反映されにくいため、残業が多い人にとっては基本給が上がるメリットが出ることがあります。
基本給が増えたように見えても、別の手当が減っている場合があります。変更後の給与明細の内訳を確認しましょう。

社会保険料は毎月の給与とボーナスの両方にかかる

社会保険料は、基本給だけにかかるわけではありません。健康保険料や厚生年金保険料は、毎月の給与をもとにした標準報酬月額と、賞与をもとにした標準賞与額を使って計算されます。
日本年金機構は、標準報酬月額を基本給や残業手当、通勤手当などを含めた税引き前の給与を区分したもの、標準賞与額を税引き前の賞与額から1000円未満を切り捨てたものと説明しています。
厚生年金保険料では、現在の標準報酬月額は1等級(8.8万円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。 標準賞与額の上限は支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となることが記載されています。
年収が同じなら、社会保険料も大きく変わらないように思えるかもしれません。しかし実際には、毎月の給与に上乗せされると標準報酬月額の等級が上がり、毎月の社会保険料が増えることがあります。
以下の2つのケース(どちらも年収1000万円)を比較します。
※計算を簡略化するため、ボーナスは年1回の一括支給と仮定します。
 

パターンA(ボーナス重視):毎月の給与 50万円 + ボーナス 400万円
パターンB(基本給重視):毎月の給与 70万円 + ボーナス 160万円

前述した等級や上限額を当てはめてみます。

この例では、パターンA(ボーナス重視)の方が、年間で180万円分も保険料の対象額が少なくなります。この例において手取りを増やしたい場合は、1回あたりの上限(150万円)を大きく超えるボーナスを受け取る方が、厚生年金保険料の面では有利になることがあります。
逆転するケースもあります。月給がすでに65万円を上回っている場合、ボーナスの全額を毎月の給与に当てた場合、標準賞与額はゼロとなります。パターンB(基本給重視)のほうが、厚生年金保険料の面では有利になります。
このように、自身の状況に合わせて、しっかりと計算してみると最適解が見えてくるかもしれません。そして、将来のことを考えれば、一概に厚生年金保険料を減らすことが正解ではないかもしれません。
なお、健康保険の標準報酬月額は1等級(5.8万円)から 50等級(139万円)となっており、 標準賞与額の上限は年間573万円です。料率については、お住まいの地域によって異なるので確認しておくとよいでしょう。

退職時やその後のことも考える必要がある

基本給への上乗せで見落としやすいのが、退職金への影響です。退職金の計算方法は会社によって異なります。勤続年数、退職時の基本給、職能等級、ポイント制など、さまざまな仕組みがあります。
もし会社の退職金規程で「退職時の基本給×勤続年数に応じた係数」のように決められている場合、基本給が上がると退職金が増える可能性があります。この場合、ボーナスとして受け取るより、基本給に上乗せされたほうが将来の退職金面では有利になることがあります。
一方で、退職金がポイント制で、基本給と直接連動しない会社もあります。この場合、基本給が上がっても退職金には影響しないかもしれません。退職金制度がない会社もあります。会社から説明を受けるときは、「退職金の計算に今回の基本給上乗せは反映されますか」と確認しましょう。
前述のとおり、厚生年金は、将来の年金額の計算にも関係します。将来の増加額はすぐに実感しにくいことは確かです。毎月の手取りと合わせて、今と将来の二軸で考える必要があります。

まとめ

ボーナスを減らして基本給に上乗せする案は、年収が同じでも影響が同じとは限りません。基本給が増えると、毎月の収入が安定しやすくなり、残業代や退職金の計算にプラスになる場合があります。退職金が基本給連動型なら、将来の受取額が増える可能性があります。
一方で、基本給が増えると標準報酬月額が上がり、毎月の社会保険料が増えることがあります。ボーナスにも社会保険料や所得税はかかりますが、基本給に振り替えることで月々の手取りがどのように変わるかは確認が必要です。賞与の所得税は、通常の給与とは別の方法で源泉徴収額が計算されます。
どちらが有利かは、会社の退職金規程、残業の有無、社会保険料の等級、ボーナスの安定性によって変わります。
会社から変更を伝えられたら、年収だけで判断せず、毎月の手取り、賞与額、退職金への反映、残業代単価、老齢年金を確認しましょう。手取りが増えるにしても、将来の安心にしても、基本給が上がることは前向きな材料になる場合があります。
 

出典

日本年金機構 厚生年金保険の保険料
協会けんぽ 都道府県毎の保険料額表
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー