『侍タイムスリッパー』(左から)安田淳一監督、田村ツトム、沙倉ゆうの、山口馬木也、冨家ノリマサ、井上肇、高寺裕司

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 インディーズ映画の聖地、池袋シネマ・ロサ(東京)の1館で封切られてから、評判が評判を呼び、全国172館の劇場で拡大公開中の『侍タイムスリッパー』のキャスト、安田淳一監督が14日、都内の新宿ピカデリーで“応援感謝!”舞台あいさつを行った。安田監督は、満員御礼の会場を眺めて感慨もひとしおの様子だった。

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 『侍タイムスリッパ―』、略して「侍タイ」(サムタイ)は、武士が落雷によって現代の“時代劇撮影所”にタイムスリップし「斬られ役」として生きていく姿を描いたコメディー。

 京都の米農家でもある安田監督が、監督のみならず、脚本、原作、撮影、照明、編集/VFX、整音、タイトルデザイン/タイトルCG製作、現代衣装、車両、制作…と1人11役以上を務め、わずか10人足らずのスタッフと共に生み出された超・自主制作映画。「自主制作で時代劇を撮る」という無謀な試みに「脚本が面白い!」と、時代劇の本場、東映京都撮影所が特別協力したことも話題になっている。

 8月17日に1館からはじまり、9月13日より100館以上に拡大して以降、その数を増やし続けている。インディーズ映画がSNSなどで全国へ広がり社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』の再来の呼び声も。

 この日は、主演の山口馬木也、そして、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、井上肇、田村ツトム、高寺裕司らキャスト陣は、舞台あいさつとしては初となる劇中役衣装で登壇。

 撮影は2022年の7月から半年かけて行われ、山口は「この扮装をするといろいろなことを思い出します」としみじみ。一方、冨家は「久々の扮装ゆえに舞台袖ではしゃいでしまって…。あまりはしゃいではいかんなと思った」と苦笑い。安田監督から「一人だけ大衆演劇メイク!」とツッコまれた田村は、冨家からも「こう見えて田村さんが一番緊張している」といじられていた。

 安田監督は「SNSのいいね!を押すのが最近追いつかない」とうれしい悲鳴を上げると、田村は「急に知らない親戚が増えた」と大笑い。沙倉は「誕生日のポストにいいね!が1300くらい付きました」とビックリで、塩むすびが大好物のキャラクターを演じた山口は「近所のコンビニで塩むすびを買ったら、店員さんから『おめでとうございます』と言われて…。知ってくれているんだと感激しました」と身近なところで広がりを実感したという。

 冨家は「たった1館から始まった映画がここまで来られたのは、観客の皆さんの口コミ力のお陰。人の力ってすごいんだと改めて思いました。…あれ?真面目過ぎ?」と急に不安になるも、その横に立つ山口も「大丈夫です。ここに立つとそうなります」とソールドアウトの会場に大感激だった。

 井上も「同級生たちのグループLINEが『侍タイ』で盛り上がっています。井上君頑張っているね!と言われると、もっと頑張らねば!と思わされます」とうれしそう。高寺は「親が行きつけの喫茶店で『侍映画が流行っているらしい』との話を盗み聞きしたそうです。そんなところまで有名になっているんだとビックリしました」と目を丸くしていた。

 サービス精神旺盛のキャスト陣によって、劇中シーンの再現や名台詞生披露などがアドリブで行われ、満席の観客も大満足。そんな中、次なる目標を聞かれた安田監督は「トム・クルーズさんにハリウッド版を撮ってほしい!」とラブコールを送り、山口は「全国の小中学校で『侍タイ』鑑賞会を開きたい」と未来を担う子どもたちにも時代劇の面白さを伝えたいと語った。

 冨家は「僕はマッキー(山口)に主演男優賞を獲ってほしい。なんでもいい。馬木也の現場の居かた、この作品に対する取り組み方、姿勢に僕は惚れた。マッキーに主演男優賞を、そして僕に助演男優賞を!」とユーモア交じりに祈願し、これに沙倉が「日本アカデミー賞で作品賞を獲りたい!」と夢を語ると、安田監督は「いけるんちゃいますか!?」とノリノリ。改めて沙倉は「みんなで行きましょう〜!」と気合を注入していた。

 最後に安田監督は「観客の皆さんの顔を見ると、1館で公開した時のことを思い出します。こんな日が来るということを僕としてはぼんやりとは思い描いていたけれど、本当にこんな日が来たことに対してスタッフ・キャスト一同喜んでおります。みなさん、本当にありがとうございました!」と『侍タイ』を育て上げてくれた観客に感謝を述べていた。

■あらすじ

 時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門は、密命のターゲットである長州藩士と刃を交えた刹那、落雷により気を失う。眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。行く先々で騒ぎを起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだと知り愕然となる新左衛門。一度は死を覚悟したものの、やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と、磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩く。「斬られ役」として生きていくために…。