同性パートナー間での生体腎移植について記者会見する京都大学病院の(左から)北悠希助教、高折晃史病院長、小林恭教授(30日午後3時41分、京都市左京区の京都大学病院で)=前田尚紀撮影

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 京都大病院は30日、同性パートナーを臓器提供者(ドナー)とする生体腎移植の実施を発表した。

 日本移植学会は親族以外の提供は原則認めておらず、同性パートナー間での移植を公表したのは国内初とみられる。

 発表によると、移植を受けたのは京都市内の女性。慢性腎不全のため、1月に人工透析を開始、5月にパートナーが提供した腎臓を移植する手術を受けた。女性は透析が不要になり、2人とも社会復帰した。

 臓器売買を防ぐため、同学会は倫理指針でドナーを原則、親族(6親等以内の血族、配偶者など3親等以内の姻族)に限っている。

 女性とパートナーは2019年3月に同居を始め、23年8月に京都市の「パートナーシップ宣誓制度」の受領証を入手した。京大、同学会それぞれの倫理委員会が「善意の提供」として実施を認めた。

 同性パートナー間での生体腎移植はこれまでに数例の実施例があるとされるが、京大によると、公表例はほかにないという。小林恭(たかし)・京大泌尿器科教授はこの日行われた記者会見で「性的少数者という理由でパートナー間の移植を諦めている患者にとって有益な前例となる可能性があり、周知の意義があると考えた」と説明した。

 渡辺泰彦・京都産業大教授(家族法)は「同性パートナーの法的、社会的地位が見直される中、今回の移植手術の実施も大きな前進になる」と話している。

 脳死や心停止に至った人からの提供が少ない日本では、生体ドナーに頼らざるを得ない現状があり、年間1500件の生体腎移植が行われている。