石破首相「爆誕」でいきなり「円高・株安」の大ピンチ…!そのウラで新総裁が明かしていた「衝撃の本音」

写真拡大 (全2枚)

批判をかわせるの石破氏だけ、なのか?

自民党総裁選挙で石破茂氏が選ばれ、次期首相となることが固まった。首相就任後、早期に衆議院を解散、総選挙を行うとみられており、政権奪取を掲げる立憲民主党の野田佳彦代表と対決することになる。

野田氏は自民党安倍派のいわゆる「裏金問題」に端を発した「政治とカネ」問題を争点に野党の結集を図る姿勢だ。これにどう自民党が立ち向かうかが焦点になる。

総裁選で決戦投票で選ばれたのが高市早苗氏だった場合、立憲からすれば「戦いやすい相手」だったに違いない。高市氏は安倍首相の後継を自任、裏金問題で役職停止処分を受けている安倍派議員を推薦人に加えるなど「ケジメ」を付けるのが難しいとみられたからだ。

1回目の投票では高市氏が72票の議員票を獲得したのに対して、石破氏は46票と、かねて言われてきた自民党議員の間での人気の薄さが鮮明に表れた。議員票を最も獲得したのが75票の小泉進次郎氏だったことを考えると、解散総選挙の顔として小泉氏に期待する議員が多かったということだろう。

だが、決選投票に残ったのが、高市氏と石破氏になったことで、議員の投票が大きく変わった。議員票は高市氏の173票に対して石破氏が189票と上回り、逆転勝利したのだ。石破氏は総裁選の間に、裏金問題に関与した議員について、「公認にふさわしいかの議論は徹底的に行われるべきだ」と発言、非公認をちらつかせていた。

このため、裏金問題に関与した議員の多くが危機感を抱き、高市氏に票が流れたと見られる。それでも石破氏が議員票で上回った背景には、立憲による「政治とカネ」の追及をかわせるのは石破氏だという選挙向けの判断があったのだろう。

今後、野党の追及に対して、石破首相が政治資金規正法の再改正などに踏み込む発言をした場合、批判をかわして、「政治とカネ」が総選挙の最大の争点ではなくなる可能性もある。

争点は「経済」だ

では、その場合、何が総選挙の争点になるのか。

総裁就任の記者会見で石破氏は、日米地位協定の見直し問題など「安全保障」問題に熱弁をふるい、同氏のライフワークであることを示した。

だが、安全保障問題に関するスタンスでは、党としての立憲はともかく、野田代表との意見の違いは大きくないと見られ、安全保障問題が総選挙の争点になるとは考えにくい。国民の多くも重要なテーマだとは思いながらも、より生活に密着した課題に関心が高いに違いない。

そんな中で、何と言っても国民が大きな関心を抱いているのが「経済」だ。立憲の野田氏は企業経営者など中道保守層からも支持を得て政権交代につなげたい考えと見られるが、立憲の議員には「分配」中心の左派的経済政策を主張する議員が多い。

逆に自民党からすれば、経済政策を前面に出して日本経済の復活を訴える戦略に勝機を見出すことができると考えるに違いない。

2012年末、野に下っていた自民党の安倍総裁は「日本を、取り戻す。」と題した政権公約を掲げ、自説の「安全保障」などの主張を抑えて、「経済を、取り戻す。」を4つのアクションの最初に据えた。それで総選挙を戦い、政権を奪還した後も「アベノミクス」を掲げて経済再生を国民に訴え、高い支持率を維持した。

また安倍氏は「古い自民党には戻らない」と繰り返し述べて、まだまだ根強く残っていた自民党への「不信感」を払拭していった。

自民党がどん底の支持率に苦しんでいる今、石破総理が「経済」を争点に国民の支持を回復できるかどうか。

ただ、石破氏も安倍氏同様、「経済」には関心が薄いと見られてきた政治家だ。経済政策のブレーンとおぼしき人もまだ見えていない。そんな石破氏は総理になって、どんな経済政策を採るのか。総裁選で示した政策には体系だった経済政策はまだ見えない。

石破氏の総裁選出が決まると、外国為替市場では一気に円高に振れた。1回目の投票で高市氏がトップに立った時には大きく円安に振れていたので、一気に4円も動く乱高下になった。

ハードランディングも辞さない

筆者は今年5月に開かれた日本政治法律学会の研究大会で、石破氏の講演に対する「討論者」として登壇した。まだ総裁・総理になる可能性を石破氏本人も感じていなかっただろう段階だけに、その際のやり取りは本音が見えると思う。

私から「進んでいる円安にどう対処すべきだと思うか」と聞いたところ、石破氏は「要因は日米金利差なので、日本は金利を引き上げていくべきだ」という趣旨の発言をした。そこで「ここで金利を上げるといわゆるゾンビ企業などが経営破綻し地方銀行が危機に立つなど大きな痛みが出るのではないか」と質した。

これに対して石破氏の答えは、本来淘汰されるべきものが超低金利で生き残っているのだから仕方がない、という反応だった。日本経済の復活のためにはハードランディングも辞さない、という姿勢だと感じた。

実際に首相になって石破氏がどんな政策スタンスを取るかはわからないが、為替市場で大きく円高に動いたのは、石破氏が「利上げ容認派」であることを見越した反応だった。

為替が円高に振れると株価は大きく下がるのが昨今のパターンだ。岸田内閣が「円安容認」とも言える政策を打ち続けた結果、円の価値が劣化し、その分円建ての資産価格が上がるという状況が続いてきた。株式市場の参加者の多くが外国人投資家であることも要因だ。

この「円安・株高」政策を転換した場合、石破首相は当面、「円高・株安」に見舞われることになるだろう。総裁選の最中に「金融所得課税の強化」や「法人税増税」などに言及したことも、目先の株式市場にはマイナスに働く。

岸田首相は、物価高対策として、ガソリンや電力・ガス、小麦粉などに補助金を投入したが、これが財政悪化につながるとの見方から円安に拍車をかけるという悪循環に陥っていた。

石破首相が、経済力を高める抜本的な対策を取ろうとすれば、円高には進むものの、改革の痛みとしての株安が襲うことになるに違いない。岸田首相も就任直後には「金融所得課税の強化」を掲げたが、株価の大幅な下落に見舞われ、方針を撤回している。

石破首相が「円高・株安」という目先の「痛み」に耐え、超低金利時代の負の遺産を整理し、日本企業の収益性を高めることで日本の経済力を高めていくことができるかどうか。本来の「円高・株高」に戻すには、世界の投資家に向かって「日本が変わる」ことを示す日本経済のグランドデザインを首相自身が示す必要がある。

新総理・石破茂が「ダメダメ銀行員」だった時代の秘話が面白すぎる《緊急出版「保守政治家」を読み解く》