天皇杯で出場を果たした五十嵐。さらなる成長を誓った。写真:滝川敏之

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[天皇杯準々決勝]横浜 5−1 山口/9月25日/ニッパツ三ツ沢球技場

 頑張れよ。

 短い会話のなかにもエールが込められているようだった。

 天皇杯でクラブ初のベスト8進出を果たしたJ2の山口と、J1の横浜が対戦した一戦。山口が果敢に挑みながら1−5で敗れたゲーム後には様々な光景が見られた。

 古巣・横浜とのゲームに山口のMF山瀬功治が感慨深さを示せば、山口でプレー経験のある横浜のDF小池龍太、GK寺門陸は試合後に古巣サポーターへ挨拶。さらに山口には横浜アカデミー出身の板倉洸、田口潤人らもいた。

 そんななかで、そっと健闘を称えあっていたのは、21歳の山口FWの五十嵐太陽と、この試合で後半途中に戦列復帰を果たした34歳のMF山村和也だ。

 川崎アカデミー出身で現在は山口にレンタル中の五十嵐と、川崎で5シーズンに渡ってプレーした山村。

「僕が川崎での1年目の時の大先輩。試合に出たらすぐ結果を残すから、やっぱりすごいですよね。アシストや得点もできて、FWからDFまでできますから」

 そう笑顔で語る五十嵐は山村と、短い時間ながらピッチの上で再会を果たし、試合後にエールを送ってもらったようだ。

 ただ、ともに後半途中からピッチに立ったなか、悔しさを抱いていたのは五十嵐だろう。今季はリーグ戦で7試合(151分)・1得点と、なかなか出場機会に恵まれていないだけに、天皇杯はアピールのチャンスであったが、上手くフィニッシュに絡むことができなかった。

「Jリーグでもあまり出られていないなかで、この天皇杯は自分にとってはすごく貴重な機会でしたし、そのなかで出られたのは良かったですが、結果、数字を残したかったです。

 ただ、自分自身苦しいシーズンになっていますが、それと同時に求められている守備のところをよりしっかりやっていけば、自分の成長につながるはずなので、そう頭を切り替えて前に進んでいきたいです」
【動画】横浜×山口ハイライト
 志垣良監督が就任した今季の山口は、4−4−2のコンパクトな布陣を維持しながら、前線からのプレッシングなど走力を活かした積極的なサッカーを披露し、リーグや天皇杯で躍進を果たしている。

 そのなかで守備戦術を学べれば、五十嵐にとってはより進化のチャンスになるのだろう。

 さらに指揮官からはメッセージも受けているという。

「自分の特長はターンであったり、攻撃で違いを出せるところ。昨日も監督に(清水の)乾(貴士)選手の映像を見せてもらい、『彼はパスをしたあと、スプリントで中に入っていく。これこそ目指す選手像なんじゃないか』とアドバイスをいただきました」

 川崎アカデミーの出身者で言えば、ひとつ下の世代には、先日、A代表デビューしたDF高井幸大、福島にレンタル中のMF大関友翔、DF松長根悠仁らがいる。

「高井はこの間まで一緒にやっていたのに、あんなとろこまでいってしまったり、大関も(年代別の)代表に選ばれたり、ナガネも試合に出ていたり、みんなの試合はチェックして、刺激をもらっています」

 山口はこれからプレーオフ進出に向けてさらに厳しい戦いに臨んでいく。そのなかで五十嵐は攻撃のアクセントになれるか。「1試合でも多く試合に出て結果を残したい」。五十嵐の誓いが現実になる瞬間を楽しみにしたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)