日本人学校に通う男子児童が襲われた現場付近(19日、中国・深圳で)=大原一郎撮影

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 【深圳(しんせん)=田村美穂、北京=東慶一郎】中国広東省の深圳で中国人の男(44)に刺された深圳日本人学校に通う男児(10)が19日未明に死亡し、日本人社会に動揺が広がっている。

 中国人の間でも男児に対する哀悼の声が広がっている一方で、SNS上には反日感情をあらわにした投稿もみられる。

 事件から一夜明けた現場では、多くの治安要員が警戒に当たっていた。深圳日本人学校は18日から臨時休校となっている。日本人学校があるのは、日本人も多く住むマンションがある閑静な住宅街で、付近には教育施設が多い。

 日本式の教育を行う幼稚園に長男(6)を通わせる近くの主婦、寧静さん(32)は現場近くで、「子供を狙った事件は許せない。男児が亡くなったことには心を痛めている」と涙を流した。近くに住む50歳代の中国人男性も「幼い子が亡くなったのは残念だ」と話した。

 小学生の男児を育てる30歳代の日本人女性は、「ただただご両親が気の毒だ。事件は怖い」と言葉少なだった。

 北京の在中国日本大使館は19日午前、中国のSNS・微博(ウェイボー)に治療中だった男子児童が死亡したことを中国語で投稿した。投稿には哀悼のコメントが中国語で寄せられており、「子どもに手を出すのはテロでしかない」などと憤りを示す意見が多かった。

 ただ、中には、清朝末期の列強の支配に不満を抱いた中国民衆による反乱事件「義和団事件」(1900年)になぞらえ、「義和団は常にいる」など歴史問題を持ち出すコメントもあった。日本人学校への不満をぶつけたものもあり、「中国国内の学校では中国政府が認めた教材を使うよう管理すべきだ」との書き込みもあった。

 今回の事件の背景に反日感情があったかどうかは不明だが、中国では今年に入ってから日本人が被害に遭う事件が相次いでいる。東部・江蘇省蘇州では、6月にスクールバスを待っていた日本人親子ら3人が刃物を持った中国人の男に襲われた。4月にも駐在員の日本人男性が中国人とみられる男に切りつけられる事件があった。