夫婦仲が良いことにも「デメリット」はある…多くの夫婦を待ち受ける「あまりにつらい現実」

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日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。

長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。

そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。

実にもったいないことだと思います。

では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。

医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。

*本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。

配偶者に先立たれる悩み

夫婦がともに交通事故か飛行機事故とかで同時に命を落とす以外、どちらかが先に死にます。つまり、どちらかが残されるということです。二人の関係が良好であればあるほど、残されたほうは深い喪失の悲しみに浸ることになります。

もともと独り身であったり、愛情が冷え切っていたりする場合は、この悲しみを味わわなくてもすみます。何事にもいい面と悪い面があるということです。

深い悲しみによる悩みだけでなく、実生活の面でも困ることが出てきます。互いに完全に自立している場合は別ですが、たいていはそれぞれに分担があり、配偶者に先立たれると、これまで相手が分担していたものを自分が担わなければならなくなります。料理や洗濯、掃除などの家事から、家計を支える収入、税や保険や役所関係の手続き、ペットや植木の世話、家具の修理や買い物、預金や財産の管理、旅行の計画等々、共同でしていることもあるでしょうが、それぞれの担当が決まっている場合も多いでしょう。

家事は女性がすべきだとか、女性も外で働くべきだとかは思いませんし、男も家事や子育てをすべきだとも思いません。男も(あるいは女も)何々をすべきだと言った段階で、性に対する押しつけを感じるからです。家事が苦手な男もいるでしょうし、家事が好きな女性もいます。当然、逆もあり、それを認めるのが多様性でしょう。家事も仕事も性に関係なく、得意なほうがやればいいのではないでしょうか。

そう言うと、私に好意的なフェミニストの女性は、「そうなんです」と同意してくれましたが、私に批判的なフェミニストの男性は、「それでは差別が解消しない」と否定しました。どちらを信じればいいのか。

先に述べたように、何事にもいい面と悪い面があるので、決めつけるのはよくないということでしょうか。

いずれにせよ、配偶者に先立たれることは、多くの夫婦にとって打撃になる可能性が高いといえるでしょう。対策はつらいことですが、あらかじめひとり残ることをイメージして、心を強くしておくことでしょう。

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