じつは長生きをすればするほど「不安」が増えてしまうという「残酷な現実」

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日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。

長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。

そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。

実にもったいないことだと思います。

では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。

医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。

*本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。

不安と疑心暗鬼がもたらす悩み

高齢になるとさまざまな不安が増え、疑心暗鬼に陥ります。

自分は家族の負担になっているのではないか、迷惑がられているのではないか、家族から嫌われているのではないか、自分のいないところで悪口を言われているのではないか、認知症を疑われているのではないか、早く死ねと思われているのではないか等々。

心配しだすとキリがなく、直接、問い質す勇気も出ず、ひとりで悶々と悩むことになります。

疑心暗鬼が妄想の域に達すると、知らないうちに預金を下ろされているのではないか、土地や家の名義を書き換えられたのではないか、無理やり病院や施設に入れられるのではないか、変な薬をのまされたのではないか、食事に毒を混ぜられているのではないかなどと、被害妄想が拡がります。

病気の不安も日常茶飯事で、何か不具合があると、悪い病気ではないか、治療しても治らないのではないか、寝たきりになるのではないか、認知症になって何もわからなくなるのではないか、もう死ぬのではないかと、悪いほうにばかり気持ちが向きます。

自分の身体のことだけでなく、家族のことも心配になります。子どもや孫が病気にならないか、怪我をしないか、不登校やひきこもりにならないか、受験に失敗しないか、就職はできるのか、就職してもリストラされないか、結婚はできるのか、子どもは授かれるのか、子どもを授かっても無事に生まれるのか、無事に生まれても先天性異常はないか、異常はなくてもうまく育つのか、うまく育っても友だちはできるのか、イジメに遭わないか、思い詰めて自殺したりしないかと、心配のタネは尽きません。

長生きをすればするほど、自分の死が近づくのを感じ、それまでいくら健康でも、いざ最期を迎えるときには苦しまないか、だれかそばにいてくれるか、医者は最後まで見捨てずに治療してくれるか、悲惨な延命治療にならないか、孤独死にならないか、死後すぐに発見してもらえるか、家族は自分のことを忘れずにいてくれるか、葬式や法事は仕来り通りしてくれるか等、夜も眠れないほど不安になります。

高齢になって頭がしっかりしていると、身体は動かなくても脳は働きますから、ありあまる時間を、すべて不安と疑心暗鬼に費やすことになりかねません。

さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。

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