それでも、12万円オーバーのスマートフォンを“安い”と言うのは難しい。iPhoneには廉価モデルの「iPhone SE」があり、来年春のモデルチェンジが有力視されているため、それを待つという選択も賢明だろう。どうせ「Apple Intelligence」の日本語解禁は来年なのだから。

◆クラウドか、オンデバイスか

 最後に、AppleとAIの“次なる葛藤”を考えて終わりたい。

 クリエイター層への配慮から、これまで生成AIへの言及を避けがちだったAppleも、いよいよAI方面に舵を切った。しかしその先には、またしても難しい分かれ道がある。「クラウドか、オンデバイスか」という二択である。

 たとえばChatGPTは、古いスマホや格安のノートPCからでも問題なく利用できる。世界のどこかにある巨大なクラウドサーバーが、AIに必要な計算を担って、その計算結果を返してくれるからだ。

 このやり方(クラウドコンピューティング)は合理的だが、機密保持に不安があるほか、アダルト関連の生成に制限がかかるなどの理由から、一部では自宅のPCで生成AIを動かす「ローカル生成」も試されている。

 最新のiPhone 16は、オンデバイスで(スマホ内だけで)生成AIを実行できる性能を有している。しかしAppleは同じ発表中に、「Private Cloud Compute」と銘打ち、クラウドサーバーでのAI処理もやると宣言した。それならばユーザーが持つのは、古いiPhoneとか、次に発売されるiPhone SEでも十分なはずで、どうもちぐはぐだ。

 もっとも、手頃なオンデバイスAIと強力なクラウドAIを賢く使い分けるのなら、iPhone 16の性能が無駄になるわけではない。日本市場の本命であるiPhone SEのリニューアル後も、iPhone 16は“憧れのAIスマホ”としての存在感を放つものと予想する。

<TEXT/ジャンヤー宇都>

【ジャンヤー宇都】
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆