現在の境遇についてどう感じているかを尋ねた。

「生活は苦しいですが、貧困でかわいそうねと思ってほしいわけじゃない。お金を使わなくても幸せに暮らせるといいと思う。でも、自分たちが体験したいことを気兼ねなくできるようにはなりたい」

4月に発売された『体験格差』(講談社現代新書)がベストセラーとなっている。行政や民間の支援で、飢える家族は激減したが、家族旅行や習い事などの体験の格差は広がる一方だ。

◆「夏休み」が子供のメンタルに大きく影響

悩みを抱える人たちからの相談が1日1500件寄せられ、うち3割強が10代の子供たちだというNPO「あなたのいばしょ」代表・大空幸星氏に話を聞いた。

夏休みの終わりや新学期にかけて相談件数が増加しますが、それは子供たちが夏休みを通してゆとりがなくなり、死にたくなってしまうから。子供たちのメンタルを考えるとき、夏休みをいかに充実して過ごせるかが大きな問題です。友達は家族と旅行ができる、でも自分は行けないという苦しみが、新学期の精神状態に影響するのです」

夏休み問題や体験格差は確かに存在する。しかし、子供たちを「かわいそう」という視点でくくることは、問題の本質を見えにくくしていると大空氏は指摘する。

「貧困家庭に生まれた子供がかわいそうというスティグマは、当事者の『自分らしく生きていきたい』感情を押しつぶしてしまいます。泣いている子供の写真を使えば寄付は集まりやすくなりますが、非支援者と支援者の対立も強化されてしまいます」

次世代を担う子供達が豊かな経験を育み、成長していくためには何が必要なのか。私たち親世代は考えるべきだ。

取材・文・撮影/中山美里(オフィスキング) 山口晃平 写真/PIXTA

―[酷暑ルポ 貧困家庭[地獄の夏休み]]―