──東京の暮らしにウンザリして、ここに来たんですか。

東出:いや、そもそもあのスキャンダル以来、東京で部屋を借りることさえできなくなった。そりゃそうですよね、記者が集まってきたら近所迷惑ですから。それで、「別に東京なんか別に住みたくねえよ」ってやさぐれているときに移住の話をいただき、まさに渡りに船。当時はいろいろあってお金もなかったですし。

──計画的にこの土地に移住したというよりは、偶然暮らすようになったのですね。

東出:そうですね。住み始めたころはこんなに賑やかじゃなかったんですよ。誰も訪ねてこないし、犬も飼ってなかったので、本当に一人でした。食事もテキトーで、市内のスーパーで1週間分の食事を買い込んで、パスタ、そうめん、ご飯の繰り返しでしたね。移住してから半年ぐらいは、仕事の依頼もまったくなかったので、ずっとここにいました。その後、後輩たちが移住してきたり地元の方々と知り合ったりと徐々に人付き合いが増えていった感じです。当時はまさか自分の山暮らしが注目されて仕事になると思わなかったし、人生は分からないですね。

──今では、山暮らしの日々をYouTubeでも発信されていますね。

東出:はい。でも山の生活を発信するのもちょっと抑えようと思ってるんですよ。僕は半人前以下なんで、中途半端な知識で語ってしまうと、ここに長年住んでるおっちゃんたちに顔向けできない。それにアウトプットが忙しくなっちゃうと、発信を前提に生活することになって、本末転倒じゃないですか。そうなっちゃうのは気持ち悪いから、ちょっとずつ山暮らしの露出は抑えていければと思ってます。

東出昌大
1988年、埼玉県生まれ。「第19回メンズノンノ専属モデルオーディション」でグランプリ獲得。’12年『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。現在は北関東の山間部で狩猟生活をしながら役者業、文筆業をこなし、週刊SPA!に「誰が為にか書く」で連載。YouTubeチャンネルも配信中。

取材・文/安里和哲  撮影/尾藤能暢

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―