もしや、暴言は常習?

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 またしてもフワちゃんに「問題発生」である。お笑い芸人のやす子がXに投稿した、「やす子オリンピック生きているだけで偉いので皆優勝でーす」といった前向きなメッセージに対して、暴言としか言いようがないリプライをしたことが発覚。すぐに削除したものの、当然ながら「証拠」は残ってしまい、非難の嵐が巻き起こっているという状況なのだ。

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やす子に対して犯罪レベルの暴言

 ここでフワちゃんの書いた言葉を具体的には紹介しないが、誹謗中傷の典型で、犯罪と認定されてもおかしくないレベルの物言いに弁解の余地はないだろう。実際、ネット上は彼女への厳しいコメントで溢れている。

もしや、暴言は常習?

 もっとも、彼女の言動が問題視されるのは今に始まったことではない。デイリー新潮では昨年にもその問題行動の数々を踏まえて、「専門家」の意見を聞いている。当時は、遅刻や物忘れが大いに話題になり、「ADHDでは」といった指摘が出ていた。そこで実際にADHD外来の医師に見解を求めてみたというわけである。

 もちろん、正式な診断ではないのだが、これだけトラブルが続き、今回のように何の罪もない知人を傷つけているという事態となっている以上、本人や周囲はその原因をもっと考えてみる必要があるのかもしれない。

(以下、2023年10月17日記事をもとに再構成しました)

有吉弘行に叱責されたことも

 お笑いタレントでYouTuberのフワちゃん(年齢非公開)が2023年9月26日放送のラジオ番組「フワちゃんのオールナイトニッポン0」で、「番組のアンケートは期限内に提出したことがない」と明かした。

 バラエティ番組「踊る!さんま御殿!!」(火曜20:00・日本テレビ)のアンケートも、期限から1週間を過ぎているが提出していないという(註1)。

 締め切りを守れないというエピソードから、フワちゃんの“遅刻癖”を思い出した方も多いのではないだろうか。特にこのところ、相当数の記事が配信され、世論の大きな注目を集めた。改めて振り返ってみよう。

 発端はフワちゃん自身の発言だった。2023年8月8日放送の「オールナイトニッポン0」で遅刻と忘れ物のエピソードを紹介したのだ。

 フワちゃんはバラエティ番組「有吉の夏休み2023 密着77時間 in Hawaii」(フジテレビ)のロケに参加。以前にフワちゃんは、有吉弘行(49)との仕事で遅刻し、叱責されたことがあった。

 有吉は時間に正確なことで知られている。毎日新聞に《有吉さんは収録現場にまず遅刻しない》という記事が掲載されたほどだ(註2)。さすがのフワちゃんも遅刻に気をつけていたそうで、集合時間の“数分前”に到着。本人としては間に合ったつもりだったようだ。

 だが、周囲はそう思っていなかった。タレントの“みちょぱ”こと池田美優(24)も同じロケに参加していた。彼女は8月20日、自身のラジオ番組「#みちょパラ」(日曜22:30・ニッポン放送)でフワちゃんの“時間感覚”に苦言を呈した。

遅刻と忘れ物

《有吉さんとかみんなそろってる状態だから。「遅れてないっすよ」みたいな感じで来るんだけど、この旅、何回してると思う? 「そもそも有吉さんより後に来たら、もう遅刻だと思ったほうがいいよ」、それも何回も言って。それでも「でも……」とかってずっと言うから》

 要するに、フワちゃんは“重役出勤”だったらしい。しかし、ハワイにおける彼女の問題行動は、これにとどまらなかった。箇条書きで紹介しよう。

◆ロケで使うスニーカーをホテルの部屋に忘れたり、ロケ先で着た水着を更衣室に忘れたりした。

◆平成ノブシコブシの吉村崇のゴルフクラブを1本借りて写真を撮影したが、クラブを撮影場所に忘れた。

◆ホテルの鍵をなくし、フロントで再発行。ところが、部屋番号を間違えて、ビビる大木の部屋に入った。

 忘れ物のエピソードが目立つ。冒頭で紹介した「アンケートは期限内に提出したことがない」と共通する点がありそうだ。

 フワちゃんは様々な番組で自身の“やらかし”を披露している。今や“鉄板ネタ”と化している印象さえある。宮崎に飛行機で移動しようとすると1カ月先の便を予約していたとか、韓国ロケでパスポートを空港に忘れて現地到着が3時間も遅れた──という具合だ。

発達障害は「総称」

 フワちゃんが、こうしたエピソードを披露するたび、ネット上では「発達障害では?」という指摘が増える。X(旧Twitter)で検索してみると、《フワちゃんは発達障害だと思うんだよなぁ》といった投稿が目立つ。

 XなどのSNSでは、確かに一時期はフワちゃんの遅刻を厳しく批判する投稿も目立った。これを一部の芸能人などが問題視し、「フワちゃんが視聴者に直接、迷惑をかけたわけではない」と苦言を呈することもあった。

 だが、SNSを詳しく見てみると、糾弾より心配する声も相当な数に上ることが分かる。《事務所が専門家と一緒にフォローしてあげないと》《外来で診察するのがいいと思う》という具合だ。

 ならば外来の診察経験が豊富な専門医に取材を依頼すると、どんな見解になるのだろうか。『発達障害』(文春新書)などの著書がある医師の岩波明氏は、東京大学医学部卒。都立松沢病院などで臨床経験を積み、ドイツに留学。2015年より昭和大学附属烏山病院の病院長としてADHD専門外来を担当している。

 岩波氏にフワちゃんの「失敗エピソード」についての見解をお願いすると、「まず『発達障害』という言葉は総称であることが重要です」と指摘する。

「そのため専門医が『発達障害』という診断を下すことはありません。総称ですから様々な疾患が含まれており、メインはASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠如・多動性障害)の2つです。そのほかに学習障害も含まれますし、広い意味では従来の知的障害が含まれることもあります。ASDの中心的な疾患である自閉症は、知的障害の比率が高いのです。このように様々な疾患が含まれていますから、特にマスコミの皆さんは『発達障害』と言い切ってしまう場合が多いわけですが、誤解を招きやすい表現だと言えます。そしてフワちゃんの場合、私の経験から申し上げますと、ADHDの可能性があると考えられます」

遅刻、忘れ物、遺失

 厚生労働省のe-ヘルスネットは、ADHDを《「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念のひとつ》と定義した上で、特に子供の症例として以下の具体例を挙げている。

《「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」》

「もちろん私はフワちゃんを診察したわけではありません。しかし、報道によると、遅刻、忘れ物、そして遺失が相当頻繁に起きているようです。また、出演したバラエティ番組を拝見しても、若手のお笑い芸人として求められている役割なのかもしれませんが、他の芸人さんのトークに対して被せるようにして喋っています。率直に申し上げて、落ちつきがない印象を受けます」(同・岩波氏)

「大人の発達障害」という表現が散見されるが、成人してADHDやADSを発症することはない。ADHDの場合、アメリカ精神医学会のDSM-5は「症状のいくつかが12歳以前より認められる」という基準を明記している。

 フワちゃんはインタビュー記事などで自身の幼少期を振り返っているが、その中にはADHDの可能性を窺わせるエピソードがある。

自分の“浮いてる”部分

 例えば、BRUTUS(電子版)が配信した「タレント・フワちゃんが語る、わたしの百読本『自分は自分のままで、じゅうぶん素敵』」(2021年12月14日配信)には、以下のような記述がある。

《小学校のとき、抜けた歯を誰よりも高く投げたくて体育倉庫の上までよじ登ったり、ホッカイロの中身が砂鉄だって聞いて、それを確かめたくて全校集会の最中にホッカイロを切り刻んで磁石で実験してみたりして。そんなもんだから、お母さんが学校によく呼び出されてた》

《学生時代の私は相変わらず変だったけど、友達も多かったし運動もできたから、悩みごとも無く楽しく過ごしてたんだ。でも年を重ねていくにつれて、なんだか自分の“浮いてる”部分が如実に出てきて、周りもみるみる大人になって、いよいよいつまでも楽観的ではいられなくなってきた》

《大学は3限からでも遅刻しちゃうし、何回やってもバイトはクビ。夢を叶えるために入った芸能事務所もお偉いさんに中指立てて解雇!》

 インタビュー記事から、ADHDの特徴の一つである衝動性が子供の頃からあったことが分かる。

「他の精神疾患と同様に、『なぜADHDの患者さんは忘れ物や遅刻、衝動的な言動が多いのか』という原因については、はっきりと分かっていません。ただ、ADHDには治療薬があり、その効き方から考えて、脳の神経伝達物質の機能障害であろうと推測されています。ただし推測止まりで、それ以上のメカニズムについては解明されていないのです。ADHDの患者さんに関する臨床例が積み重なったことで、忘れ物や遅刻が多いという共通点が明らかになったわけです」(同・岩波氏)

ADHDの武器

 意外に思う人もいるかもしれないが、ADHDの患者が良好な人間関係を構築する人は少なくない。フワちゃんがインタビューで《友達も多かった》と振り返ったことと合致する。

「ADHDの方は、いわゆる“ファーストタッチ”が上手です。初対面の人でも、すっと入っていける。だから営業職を得意にする人も多いのです。しかし、悪意がないとはいえ、率直すぎる発言が多いという特徴もあります。これが好感を持たれる場合もありますが、裏目に出ることも珍しくありません。例えば、私の患者さんで、重要な会議で上司がプレゼンを行ったのですが、その際に明らかな間違いがあった。すると部下だった患者さんは、『そこは違います』と滔々と弁じてしまいました」(同・岩波氏)

 もちろん悪意は微塵もない。単に間違いを指摘しただけだ。とはいえ、上司の面目は丸潰れになった。その後、上司は査定の際、彼に対して常に低い評価を与え、悩んだ部下は岩波氏の診察を受け、自身がADHDだと理解したという。

「ADHDの患者さんは『空気を読めない』という指摘を目にすることもありますが、これは正確ではありません。空気を読めないのはASDの患者さんです。ADHDの患者さんは空気が読めるのですが、『読まない』のです。空気を読むより前に、頭に浮かんだことを衝動的に口にしてしまう。会社員なら大変なトラブルに発展することもありますが、お笑い芸人には武器になり得ます。フワちゃんの奔放な発言は話題を呼び、賛否両論の議論を巻き起こしています。こう考えると、ADHDの患者さんは芸能界向きと言えるかもしれません」(同・岩波氏)

マネージャーの役割

 ADHDの患者は「一つのことに寝食を忘れてのめり込む」という特徴もある。ADHDの可能性がある“偉人”や“天才”は枚挙に暇がなく、岩波氏はエジソンやモーツアルトが該当すると考えている。

 フワちゃんの場合、芸能活動が1人で完結していれば、また違った展開になったかもしれない。1人でネタを考え、YouTuberとして1人で動画を作成して成功を収めたのなら、遅刻も忘れ物も問題視されることはない。

 だがフワちゃんはテレビの世界でも人気者になった。こうなるとスタッフや共演者と協力して番組を作らなければならない。どうしてもADHDの特徴が周囲に迷惑をかけることになってしまう。

「ADHDの患者さんは、比喩的に言えば、1人で絵を描いて生活ができれば理想的です。そのため起業家がワンマン的に会社を経営する場合でも、同じ結果を生むことがあります。テスラやXを経営するイーロン・マスク氏(52)はADHDの可能性がありますし、楽天の三木谷浩史氏(58)は自身がADHDだと公言しています。ただし、こういうワンマン経営者は成功しているときは強いですが、経営方針を間違ってしまうと相当な痛手を被ることがあります」(同・岩波氏)

 岩波氏は「フワちゃんをサポートするマネージャーさんはいないのでしょうか?」と指摘する。過去の報道を見ても「マネージャーは現場にいなかった」とか、「マネージャーが愛想を尽かした」などの記事が散見されるが、実際のところはよく分からない。

高い社会的地位

「経済評論家の勝間和代さんもADHDを公言しています。何度も対談させていただきましたが、忘れ物がかなりひどいそうで、それこそ買った切符もすぐになくすると仰っていました。では、どうやって勝間さんは仕事をこなしているかと言うと、何でも面倒を見てくれる優秀で献身的なマネージャーさんが傍についているんですね。勝間さんのために切符を買い、切符はちゃんと保管してくれる。フワちゃんもマネージャーさんが付きっきりでサポートしてくれたのなら、トラブルが激減してもおかしくありません。ただし、マネージャーさんの負担は相当なものになります」(同・岩波氏)

 先にADHDの患者には天才が多いことを紹介したが、外来を訪れる患者にも“社会的地位の高い人”は目立つという。

「ADHDの患者さんは興味があることには没頭しますし、集中力も図抜けています。勉学に向けられると好成績を残すので、医師、弁護士、メガバンクの行員といった患者さんは珍しくありません。大学を卒業して社会人になると、多くの患者さんは仕事で高い評価を受けます。ところが、会社が管理職に抜擢すると、評価が激変することがあります。管理職は自分の仕事、部下の世話、人事評価などマルチタスクが求められますが、ADHDの患者さんはこれが最も苦手なのです。管理職になるとミスや遅刻が目立つようになり、上司に勧められたり自分で異変に気づいたりして来院するケースは多いのです」(同・岩波氏)

同調圧力とADHD

 ADHDには治療薬がある。日本で認可されているのは4種類あり、そのうち1種類は児童用だ。そのため、大人の場合は3種類の薬を試すことになる。

「いずれも集中力を回復してミスをなくし、衝動を抑える効果があります。効果は人それぞれですが、劇的にミスが少なくなった患者さんもいます。また、ADHDの患者さんは睡眠障害を併発することがあります。起床と就寝のリズムが狂い、学生なら不登校、社会人なら欠勤や遅刻の原因となります。ADHDの治療薬にはリズムを回復させる働きもあり、服用すると登校や出勤できるようになったというケースもあります。ただし、結局は本人が『今の自分から変わりたい』という強い意思を持っていることが条件です。親に言われて、上司に言われて嫌々来たという患者さんは、それこそ受診も不規則で薬を飲み忘れてしまいます。診察に遅刻することも日常茶飯事で、これでは治療効果は出ないですよね」(同・岩波氏)

 日本社会は同質性が顕著で、同調圧力も強い。ADHDのような“個性の固まり”というタイプにとっては生きにくい社会だ。ADHDの帰国子女などは、移民が多いなど多様性のある欧米社会のほうが楽だったと振り返ることが少なくないという。

社会生活を立派に営む患者

「発達障害の中では、ADHDの患者さんが最も多いと考えられています。様々な統計がありますが、大人だと4〜5%というデータが多く、日本人の人口に当てはめると500万人くらいになります。日本はADHDに厳しい社会ですが、それでも多くの患者さんは、症状に苦労しながらも社会生活を立派に営んでいます。そういう意味では、彼らは薬を服用していたとしても健常者の一部だと言えるでしょう。ただし、ADHDには共通した特性があり、それを理解しておくと日常生活を過ごす上で対処が容易になります。自分はADHDの可能性があると思ったら、情報を集めたり、病院を訪れたりすることによって、自分の症状や問題点を認識し、毎日の生活を送ることが必要です」(同・岩波氏)

註1:「何がしたいの?」フワちゃん、指原莉乃から怒られる…英語の勉強に20万円払うも何もやらず「客だし」と悪態(FLASH・電子版:9月26日)

註2:仕事に妥協しない「職人」 MCに合わせ魅力引き出す 有吉弘行、Netflix番組で絶妙アシスト(毎日新聞・電子版:4月1日)

デイリー新潮編集部