阿部サダヲ主演の『不適切にもほどがある!』で、ギャラクシー賞2冠を受賞した磯山晶氏(左)

 7月11日、大手配信動画サービス・Netflixは、元TBS局員の磯山晶プロデューサーと5年契約を結んだことを発表した。

 磯山氏といえば、2024年1月〜3月に放送されたドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)も手がけるなど、同局で多くの人気連続ドラマの制作に携わってきた。

「脚本家・宮藤官九郎さんのTBS系ドラマのほとんどすべてが磯山さんとのタッグでした。

 Netflixで2023年に配信され、宮藤さんが大石静氏と共同脚本を務めた『離婚しようよ』は制作元はTBSで、そのときも磯山さんがプロデューサーを務めていたんです。

 その繋がりで、今回の“Netflix入り”が実現したのではないでしょうか」(芸能記者)

 ここ数年、話題のドラマを多く生み出してきたTBSだが、磯山氏はその“屋台骨”の一人だった。

 そして、同局でいえば『半沢直樹』『VIVANT』といった社会現象になったドラマの演出を手がけていた福澤克雄氏も、2024年1月末で定年を迎えていた。

「定年後も福澤さんはTBSに籍を置いているようですが、積極的に制作にはかかわっていないようです。

 というのも、現在放送されている『ブラックペアン2』(TBS系)ですが、シーズン1では福澤さんも演出として参加していました。しかし、今回は名前がクレジットされていません。

 2025年に放送が予定されている『VIVANT』続編の制作には加わると聞いていますが……」(同前)

 こうしたように、ドラマに携わってきた“敏腕スタッフ”が続々と離脱している状況について、TBS社内はどう受け止めているのか。ある局員が話す。

「次の人材が育っておらず、TBSの“ドラマの顔”でもあった磯山さんの退社は苦しい。また、これまで培ってきた人脈やドラマのノウハウをすべてNetflixに持っていかれてしまいそうですし、ブランドの低下、『ドラマのTBS』の終わりを感じています。正直、しんどいですよ」

 ただ、地上波テレビ番組の現場を離れていくのは、敏腕スタッフに限らないという。

「民放キー局の人材流出は深刻です。特に20代〜40代の若手局員や実績ある優秀な局員は続々と、配信系メディアに転職していきます。

 かつてのバブル時代は、30代で1000万円は優に越えていたテレビ局員の年収でしたが……現在はよほどの抜擢やインセンティブがつかない限り、1000万円越えは難しい。

 外資系企業の場合は、実績があれば、最低2000万円〜3000万円は約束されると聞きますから。自分もそちらに逃げられるものなら、逃げたいですよ」(同前)

 そんなTBSだが、2028年を目処に本社がある東京・赤坂に新たなビルの建設と地区開発の計画が進んでおり、大規模工事が着工されている。

 これについて、前出のTBS局員は希望を抱いているという。

「劇場、ホールが新たに整備され、今よりもますます“クリエイティブな場”になると聞いています。この開発計画は、TBSが“エンターテイメント総合企業”として、飛躍するチャンス。外野から『もはや不動産業者』なんて言われたりしますが、局員たちはこの工事を大歓迎しています」

 こんな不況の社会では、なにがなんでも稼ぐのが大事だ――。