秋田でクマに襲われ、命を落とした男性の「死の瞬間」…遺体の「第一発見者」は”最期の声”を聞いていた!

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秋田県鹿角市(かづのし)大湯の山中で一人の男性が亡くなった。佐藤宏さん(64歳)。5月15日、この時期に旬を迎える根曲り竹を採りに、妻と親族女性とともに現地へ向かったあと、一人で山に入ったのちに行方がわからなくなった。通報を受けた地元の警察と消防は3日間捜索を続けたが、佐藤さんの姿を発見することができなかった。

これまでの報道では、行方不明後4日目の5月18日に佐藤さんを発見、現場から搬送する際に警官2名がクマに襲われ重傷を負ったと伝えられている。

しかし実は、これまでの報道で触れられていない事実がある。亡くなった佐藤さんと長年交流を続けていた「仲間」Aさんの存在だ。

前の記事『「遺体はすでに硬直し、足は曲がったままで…」秋田でクマに襲われ死亡した男性の「第一発見者」が明かす「恐怖の現場」』につづき、Aさんの独白を紹介する。

佐藤さんの緑のリュックが…

5月15日、私は午前6時過ぎには発荷峠に到着し、一人で現場に入りました。ウド採りが主な目的でしたが、タケノコの成長を確認することも目的の一つでした。

すでに別の男性が一人山に入っており、その後、佐藤さんが襲われた場所でタケノコ採りをしていました。佐藤さんがそのことを知っていたのかどうかわかりませんが、その男性の行動はクマの神経を刺激していたことになります。

佐藤さんの奥さんから聞きましたが、佐藤さんは奥さんと親族女性との3人で8時半頃に現場へ来て、そのまま一人で山に入ったようです。

私が、ウドを採りながら一通り場所の確認をして車まで戻る際、午前9時ごろには佐藤さんがいつも使っているリュックを見つけました。赤い縁取りのある緑色のリュックは、タケノコがちょうど30キロ入る大きさです。

Aさんの「おーい」との呼びかけに…

リュックの脇には、拡声器が置かれてありました。佐藤さんが、本当ならもっと小さいものを買うつもりが店舗にはなかったため、仕方なく購入した物です。

拡声器はボタンを押すと電子音が出ます。クマに人間が来たことを知らせると同時に自分の荷物の場所を確認するためでもあるのです。その時にも電子音は流れていました。

佐藤さんのリュックを見つけて「あっ、来ているんだな」と思い、私は「おーい」と、急斜面の笹薮に向けて声をかけました。すると、藪に覆われていますので佐藤さんの姿は見えませんが、

「おーい、いま行くスケー」

と返事がありました。そして、そのすぐ後のことです。

今でも耳に残っている声

「あちゃ〜」

という大きな声がしました。

それはのんびりとした声で、きっとタケノコが成長しすぎてしまい、採る時期が遅かったのだという意味だと私は受け取りました。

佐藤さんはいつでも陽気な人で、山の中で木の枝にぶつかっても「なんだこのやろ」と大声を上げるような人でした。ですから「あちゃ〜」という声も、そのように私は受け止めたのです。

その直前、佐藤さんのいるあたりの笹薮が風もないのにササーと、動いたのを目視しました。私の立っていた位置からは15メートルほどしか離れていませんでした。その時には、それが佐藤さんかと思っていたのです。今から振り返ると、あれはクマだったのかもしれません。

「あちゃ〜」という声…それが佐藤さんの声を聞いた最後でした。今でも耳に残っています。その時にも佐藤さんのいた場所の近くでは、別の女性二人組がタケノコを採っていました。

まさかクマにやられていたとは…

その後、佐藤さんには声をかけましたが、待っていてもこないので、その後一人でウドを採りはじめました。10時半ごろに佐藤さんのクルマが止めてある場所で奥さんと会いました。佐藤さんの帰りを待っている様子で、「叫んで呼んでくれないかな」と頼まれました。

近くまでクルマで行こうとしましたが、別のクルマが停車しており、通行できなくなってました。奥さんにそのことを告げてから挨拶をして、私はその場から立ち去りました。

この時は、まさか佐藤さんがクマにやられていたとは少しも思いませんでした。奥さんはその後、佐藤さんのリュックのあった場所まで歩いて行って、「おーい」と声をかけたものの反応はなく、佐藤さんは戻ってこなかったということでした。

翌日16日の午前9時過ぎ、もう一度同じ場所に行きました。前日、佐藤さんが行方不明になったことはまだ知りませんでした。タケノコ狙いで山に入ろうとしたのです。

すると、現地で会った山の管理者が、「佐藤さんが昨日から出てこない」と言いました。そこで初めて佐藤さんが帰ってこなかったことを知ったのです。警察や消防隊員らが集まって捜索をするとかで、その日はタケノコを諦め、その場所にずっといました。佐藤さんの安否が心配でならなかったからです。

なぜか自信満々の警察官たち

午前10時頃には、捜索本部が立ち上がっていました。まだクマが原因だともわからない状況です。現場にはタケノコ目的の人がまだ入っていました。

警察と消防は合計で20名くらい。それぞれ装備を固めていました。半数くらいが捜索をし、残りの半数が待機して各所への連絡などをしていました。交互に捜索をするのです。

上空ではヘリコプターで佐藤さんを探すということでした。薮の生い茂る中、上空からの目視だけでは捜索など、到底できないと思いましたが、警察官は自信を持っていました。

私は佐藤さんの友人だということ、昨日のリュックサックの位置やルートなどを捜索隊に教えようとしましたが、「いいです。襲われる可能性もありますし、我々が探します」と、警察官は相手にしてはくれませんでした。結局その日は捜索終了まで、佐藤さんを見つけることができませんでした。

捜索隊の中には、待機中にタケノコを採って袋に入れている者もいました。ヒマだったのか何なのかわかりませんが、あまり真剣に捜索しているようには見受けられませんでした。佐藤さんを探すのではなく、なんとタケノコを探していたのです。

警察はどこをどう捜索していたのか?

私は警察官から止められていますので、山には入れません。ただ、ジッと我慢して待機していました。その日の夕方、午後3時まで捜索隊はあたりを探したようですが、佐藤さんを見つけることはできませんでした。

警察官は佐藤さんの奥さんに対し、「次の日は雨なので捜索できない場合もあります。どうしますか?」と、捜索を続けるかどうか考えてくださいと言いました。

そしてその後、事態はまさかの展開を迎える。捜索の最中にクマが出没し警官二人に対して襲いかかってきたのだ――。

つづく記事『クマの攻撃で鼻が半分取れ、「顔中血まみれ」の警察官が「助けてください」と…秋田でクマに襲われ死亡した男性の「壮絶すぎる捜索現場」』では、阿鼻叫喚を極めた山中の様子を詳しくお伝えします。

クマの攻撃で鼻が半分取れ、「顔中血まみれ」の警察官が「助けてください」と…秋田でクマに襲われ死亡した男性の「壮絶すぎる捜索現場」