電話一本で行なわれる「退職代行」の「やり取りの中身」…会社側とは一体何を話しているのか?

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連日メディアで報道されている退職代行サービス。依頼者数の推移や、退職代行を使われてしまう企業の特徴については、前編記事〈「給料泥棒」と罵声を浴びせる、退職届を破る…話題の退職代行企業が明かす「ヤバい会社の実態」〉で紹介した。本稿では引き続き、「退職代行モームリ」を運営する株式会社アルバトロスに話を聞いていく。退職代行の現場では、一体どのようなやり取りがされているのか。

聞き手:佐藤大輝(ブラック企業と2回裁判した人)

競合他社にはない「モームリ」の強み

――ここ最近、競合の会社は増えていると感じますか?

それは増えている感覚があります。これまでに10件以上、「退職代行サービスを始めたいので、もしよければ話を聞かせてほしい」といった問い合わせがありました。

大変ありがたいことに、弊社は100を超えるメディアから取材を受けておりまして……。弊社を含め、退職代行サービス自体の認知度が上がった結果、新しくサービスを始めようと考える企業が増えているのだと感じています。

――御社からするとライバル企業が増えることになりますが……。競合他社にはない御社の「強み」があれば教えてください。

企業の透明性には自信があります。公式SNSやYouTubeチャンネルでは、依頼件数や実際の業務のやり取り、従業員の顔も隠さず公開しています。

他にも、例えばGoogleマップの口コミには、リアルな依頼者の声がありのまま反映されています。こういった情報の透明性が、弊社へご依頼いただく際の安全性・安心感につながっているかと思います。

各種提携機関の紹介や、対面やZoomでの退職代行サービス、セルフ退職ムリサポ!(退職希望者自身で退職を確定させるサポートをするサービス)と呼んでいる新サービスなど、競合他社との差別化は多岐にわたります。

――競合が増える中、いかがわしい業者も出てくるかもしれません。透明性があるのはユーザーからするとありがたいですよね。

もしよければ、実際にどのような流れで代行業務を行っているか、実演していただけないでしょうか?

もちろん大丈夫ですよ。

――私が人事担当者の役を演じるので、今この記事を読んでいる読者の方は、職場に電話が鳴った光景をイメージしてください。それではお願いします。

会社側とのリアルなやり取りを再現!

退職代行モームリ(以下、モームリ):もしもし、お世話になります。わたくし退職代行モームリの◯◯と申します。御社のコンテンツ事業部に勤務されている、佐藤大輝さんの件でご連絡いたしました。総務か人事の御担当者様はいらっしゃいますでしょうか?

某社:お世話になります。私が人事の☓☓です。

モームリ:この度、佐藤大輝さんから依頼をいただきまして、退職希望の旨と、それに伴い今後出勤できない旨、こちらをご本人様に代わりお伝えをさせていただきます。

某社:え、そうだったんですね。残念ですが、わかりました。

モームリ:退職の手続きについてお伺いしたいのですが、まず、退職届の提出は必要でしょうか?

某社:はい。ちなみにウチの会社は、退職届に指定のフォーマットがあるのですが……。

モームリ:かしこまりました。そちらを佐藤大輝さんのご自宅に郵送していただきたく、そちらご本人様の直筆で記入して、返送させていただきます。

某社:承知しました。

モームリ:それから、会社から借りている物がいくつかあると伺っておりまして……。具体的には健康保険証と名刺ですね。これらすべて退職届が届き次第、一緒に郵送させていただきたいのですが、郵送先は御社の本社宛てでよろしいですか?

某社:はい。大丈夫です。

モームリ:退職後の必要書類を4点伺っております。源泉徴収票、離職票、健康保険資格喪失証明書、雇用保険被保険者証。この4点を発行次第、ご本人様のご自宅宛てに郵送お願いいたします。

某社:承知しました。

「退職理由」を尋ねられたときは……

モームリ:退職届に記載する「退職日」なのですが、最後に出勤したのが昨日6日、明日以降の出勤が難しいということでお伺いしています。この場合は、何日付で退職届に記載すればよろしいでしょうか?

某社:6日付でお願いします。

モームリ:かしこまりました。最後になりますが、ご本人様は明日以降の出勤はできないということでお伺いしておりまして、ご本人様とご家族への直接の連絡は、お控えいただきますようお願いいたします。こちらからは以上となります。

某社:すみません。退職理由について詳しく聞いてもいいですか?

モームリ:はい。伺っている内容としては、人間関係については特に問題ないそうなのですが、仕事量の増加に伴い、プレッシャーも大きくなり、精神的に苦しくなってしまったそうです。

ご本人様の中では、自分で直接気持ちを伝えるのが恐いという気持ちがあって、甘えだと思われるかもしれないけれど、退職代行をお願いしたと伺っております。

某社:そうなんですね。彼には引き続き、良質なテキストコンテンツの作成を頑張ってほしかったのですが、わかりました。

モームリ:もし何か不備等があった際はご対応させていただきますので、その際は弊社にご連絡いただければと思います。お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします。それでは、失礼します。

退職代行が社会からなくなる日を目指して

――素朴な疑問なのですが、相手企業によってはネチネチ言ってくるケースもあると思います。お仕事されていて、メンタル面で病むことなどはありますか?

ここだけの話、メンタル面でくる時はあります。なので、共に働く従業員から「モームリ」と言われないよう、メンタルケアは欠かせません。

何かトラブル等があった際は、気兼ねなく上長に確認、相談ができる職場環境作りを目指しています。積極的にコミュニケーションを行い、日々の些細なことでも、情報共有するよう心掛けています。

――最後に、利用者の方、あるいは企業に対して、メッセージがあればお願いします。

建前ではなく、私たちは退職代行サービスが社会から無くなることが、日本という国にとってベストな状況だと考えております。しかし現状は、多くの方が仕事関係で悩んでおり、退職に伴うストレスを含め、その悩みは尽きません。

よって今後しばらくは、退職代行への依頼は増えていくことが予想されますが、退職代行という存在そのものが、企業が暴走する「抑止力」になる側面もあると思います。

とても難しい問題ではありますが、私たちは私たちにやれることを全力でやっていきます。もしよければ私たちの活動を、応援していただけたら嬉しいです。

――退職代行モームリさんにお話を伺いました。本日はありがとうございました!

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