国語力が上がる3冊をご紹介します(写真:: Ushico / PIXTA)

学生時代から国語に苦手意識を持ったまま、社会人になってしまった。そうした悩みを抱える人もいるのではないでしょうか。『一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書』を上梓した、全国屈指の名門校である西大和学園の現役国語教師、辻孝宗氏が国語力が格段に上がる3冊を紹介します。

みなさんは、国語という科目は好きですか?

国語は、苦手だという学生はとことん苦手な科目で、国語に対して苦手意識を持ったまま大人になってしまったという人もいるかもしれません。

でも、国語力が上がるというのは、全科目の成績を上げるということにもつながります。文章を解釈し、それを表現するというのは、国語以外の科目を勉強するときでも、大人になってからも必要になってくるからです。

今回は、国語教師である私が選んだ、「頭がよくなる国語の本3冊」をみなさんに紹介したいと思います。

古文の根本的な理解につながる

1 古文解釈の方法<改訂版> (駿台受験シリーズ)

まずは『古文解釈の方法<改訂版> 』をご紹介します。

この本は、古文でつまずいた経験がある人にこそ読んでもらいたい本です。というのも、本書は古典文法の授業であまり触れられない「根本的な意味」を教えてくれるものだからです。


例えば、古文では「む」という助動詞があります。

その意味は、「推量・意志・適当・勧誘・婉曲・仮定」の6つがあります。1つの助動詞に6つも意味があるため、多くの学生たちを「こんなにたくさん覚えられない!」「文章で出てきても、どの意味だかわからないよ!」と嘆かせています。そして授業では、「とにかく覚えろ!」と言われてしまって、理解が深められません。

そんな助動詞の「む」なのですが、この本では「推量・意志・適当・勧誘・婉曲・仮定」の根本的な意味を教えてくれます。

「む」は、「まだ未確定なことを表明するときに使う」助動詞なのだそうです。「決まっているわけではないけれど、こうなるんじゃないかな」というのが、「む」の根本的な意味だと説明されています。


例えば、「明日はきっと雨が降るだろうな」というのは「推量」ですよね。同じように、「明日はここに行こうかな」という、自分の今後の行動に関しては「意志」です。「明日雨が降るとしたら、きっとここに行けないだろう」という未来についての話だと「仮定」になります。

婉曲は「〜のような」という訳し方になるのですが、「大人になっていくような様子を見たい」のように、これも未来や、それ以外の物事の「未確定」の話をしていますよね。

「適当・勧誘」はどうでしょう?「こういうのがいいんじゃない?」というような「適当・勧誘」というのは、「別に『そうしなければならない』というようなことではないけれど、運動したほうがいいんじゃない?」といった意味が込められています。これは、まだ実現していないことを話題にしているため、未確定のことを表す「む」になるのです。

受験から離れて古文を楽しむ

受験で問題を解くときは、「推量・意志・適当・勧誘・婉曲・仮定」という6つの意味を覚えて、使い分けをしなければなりません。

でも、いったんそこから離れて「古文を楽しもう」と思ったときに、こうした根本的な意味を理解することで面白く感じられます。受験のときはつらかったものが、受験を離れて読んでみると面白いこともあるんですよね。

本書は、受験勉強の面ではもちろんプラスになりますが、受験が終わった後に読んでも、『楽しい』と感じてもらえると思います。みなさんぜひ読んでみてください。

2 柳生好之の現代文クロスレクチャー 読解編 (シグマベスト)

次は、「柳生好之の現代文クロスレクチャー 読解編」です。この本では、「どのように文章を読解すればいいのか」ということが、1つひとつ丁寧に書いてあります。

例えば、「比喩表現が出てきたらこんなふうに読みましょう」と書いてあるページでは、こんなことが書かれています。

「『耳なし芳一』は、悪霊から身を守るために体の隅々まで呪文を入れたいれずみを書いたが、我々を取り巻く環境の全ては、今、ぎっしりと言葉で埋め尽くされている。」

この文章では、『耳なし芳一』の話は比喩表現であり、本来伝えたい『我々を取り巻く環境』の話をわかりやすくするために書かれています。


このときに必要なのは、「比喩表現との共通点を意識すること」だとこの本では語られています。

「りんごのように赤い頬」と言ったら、「りんご」と「頬」が、両方とも共通して「赤い」ということを表現していますよね。この文でも、「耳なし芳一」と「我々を取り巻く環境」の共通点として、「いろんな文字で埋め尽くされている」ということを伝えようとしています。

このように、比喩が使われている際には「共通点」が大事だということをこの本では丁寧に教えてくれています。なかなかここまで、「こういう文は、こうやって読解すればいい」ということについて丁寧に読解法を語ってくれている本は珍しいです。国語が苦手な人は、この本を読んで、読解の方法を整理・理解してみてもいいのではないでしょうか?

東大生1000人超にノートの使い方を取材


3 「思考」が整う 東大ノート。

最後は、「「思考」が整う 東大ノート。」です。言うまでもなく、ノートの取り方によって頭はよくなっていきます。ただ無秩序に聞こえてきた単語をメモするのか、きちんと整理して書くのかによって、いろんな学力・特に国語力が大きく向上していきます。

「東大ノート。」は、東大生1000人以上がどんなノートを取っているのかについて取材した結果作られた書籍なのだそうですが、看板に偽りなく、自分がかつて教えた、東大に合格した生徒が実際にやっていたことも多く載っていました。

その中でも、「このノートの取り方は、確かに東大に合格する生徒はやっているし、国語力が伸びるよな」と私が感じたのは、「コピーアンドペーストをしない」というものでした。

例えば普通、メモやノートを書くときには、人が言ったことをそのまま書いたり、黒板に書いてあるものをそのまま書き写す場合がほとんどでしょう。

しかし、コピーアンドペーストをしてしまうと、頭を使うことになりません。ただ目に映ったものを手で書き写すだけなので、写真を撮っているのとほとんど同じですよね。これでは、自分の頭の中で何かを考えて、表現するということにはならないのです。

東大生の言い換え方


ですから東大に合格するような子は、先生の言ったことを、自分なりの言葉で言い換える場合が多いです。

「Aの結果として、Bが生まれることになりました」と先生が言ったら「Aにより、Bが発生」と少し言い換えてみたり、「A→B」と記号で書き換えてみたり。どのような形でも言い換えをして、自分の頭を使ってノートを取っています。

このような頭がよくなるノートの取り方というのは、誰かから習うきっかけがないと身につかないものです。そしてノートの取り方は、「うまい人の真似をする」ことでどんどん上手になっていくと思います。本書はその意味で、「真似するのにぴったり」な本だと言えるかもしれません。

いかがでしたか? 国語に苦手意識のある人ほど読んでみてもらいたい本を紹介させていただいたので、ぜひみなさん読んでみてください。

(辻 孝宗 : 西大和学園中学校・高等学校教諭)