家庭用清掃用品ブランドのライソール(Lysol)は、新商品「ライソール・エア・サニタイザー(Lysol Air Sanitizer)」の宣伝のためにクリエイターを起用。TikTokにおけるインフルエンサーマーケティング手法にはプロダクトプレースメントを採用している。なお、この商品は空気を消毒するエアフレッシャーのようなものだ。

ライソールのマーケティング部門バイスプレジデントであるベノワ・ベリサー氏は、「メディアで通常私たちが商品について語る手法とは全く異なった形で、インフルエンサーが日常のなかに商品を取り入れて(見せることで)生活感を出すことが大事だ」と述べる。また、「インフルエンサーたちは、私たちが普通はできない方法で新商品の話題作りやコンテンツ生成を助けてくれる」とも付け加えた。

新商品を通して、ライソールは(キッチンや浴室、デスクなどの)さまざまなクリーナーとしてのブランドの知名度を超えて拡大し、Z世代にもアピールしようとしている。クリエイター経済は大きく成長しており、同ブランドもそこに投資を行っている。

狙うのはプロダクトプレースメント



ライソールが計画するインフルエンサー戦略は、TikTokインフルエンサーとの連携にその大部分が当てられている。ベリサー氏によれば、マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーに15秒のビデオで新商品を宣伝してもらうのではなく、彼らが制作するTikTokビデオや動画ブログなかで商品を配置してもらう「プロダクトプレースメント」を求めているという。

インフルエンサーは、動画にライソール・エア・サニタイザーの名前を取り入れることになるが、インフルエンサーひとりあたりの動画数は不明だ。インフルエンサーの数や金銭的な合意についても同社は明らかにしていない。

このアプローチの意図は、不自然で押しつけがましい宣伝行為を避けることにある。そして、インフルエンサーたちが必ずしも動画内で(商品を使って)清掃活動を行わなくてもよくすることで、彼らに商品の広告を検討してもらうことだ。さらに、同ブランドはインスタグラムで15秒の広告スポットを宣伝するが、動画ベースのソーシャルメディアプラットフォームに焦点を当てているため、Xでの広告は計画していないという。

秋には、実際の体験を活用したアクティベーションも計画されており、カラオケのようなイベントを通して、消費者に実際に商品の使用法を披露する予定だ。ライソールは、これらのイベントでQRコードを使い自社でデータを収集し、直接自社のWebサイトやソーシャルメディアアカウントに誘導する。計画されているイベントでは、消費者は空気中での細菌の拡散方法について学習することができ、同社の新商品と比較して、通常の香りのついたエアフレッシャーでは細菌を消毒できないことを実験し確認することができるようだ。そして、インフルエンサーたちにこれらのコンテンツを制作してもらい、彼らに自分のアカウントで公開するよう求めるようだ。

古典的なデモンストレーションを現代版に更新



ライソールがインフルエンサーやこのキャンペーンにどれだけの費用をかけたのかは不明だ。同ブランドは具体的な数字を公表しなかった。しかしパスマティックス(Pathmatics)からの有料ソーシャルデータを含めた、ヴィヴィックス(Vivvix)のデータによると、ライゾールは広告にこれまでに約1億3000万ドル(約194億円)を費やしており、これは2022年の5億5000万ドル(約823億円)という数字にはまだまだ足りない。

しかしながら、センサータワー(Sensor Tower)のデータによれば、ライソールは2023年第1四半期の広告キャンペーンに大きな投資をしたことが分かる。広告予算は四半期比較で2022年からほぼ100%増加、年比較ではほぼ200%増加。2023年はライソールが広告予算にTikTokを含めた初の年だ。

パンデミック中は新商品ローンチに先駆け、インスタグラムやSnapchat(スナップチャット)でデジタルコンテンツをオーガニックに公開し、そのあいだ、有料広告でそれをブーストしていた。インフルエンサーコンテンツについては、同ブランドのソーシャルメディアアカウントで各インフルエンサーをタグ付けする形で投稿される。Z世代の消費者がいるプラットフォーム、特にTikTokでリーチすることを狙っているようだ。

成長戦略のコンサルティング企業であるプロフェット(Prophet)のシニアパートナーで、マーケティングとセールス部門共同リーダーであるマット・ザッカー氏は、「パンデミックは私たちに、空気が清潔であることの重要性に対する認識を高めさせた。ライソールには空気消毒関連のソリューションで先駆者となるチャンスがある」と述べ、「新商品について(価値を消費者に)納得してもらい、(購買の)動機を与える確かな方法のひとつは、古典的なデモンストレーションだ。しかしライソールはその手法をデジタルやソーシャルチャネル向けに再考し、更新している」と語った。

ビジュアルストーリーテリングとインタラクティブ要素が焦点



TikTokでは、あらゆる規模のコンテンツクリエイターがバイラルになる可能性を持っており、誰でもブランドとの取引を締結することができる。そのため、既に急成長を見せているインフルエンサーマーケティング業界はさらなる成長を見せている。ハブスポット(HubSpot)の顧客関係管理プラットフォームによれば、インフルエンサーマーケティングに投資するマーケターの半数以上が、マイクロインフルエンサーと連携しているという。

スカイ(Skai)のコンテンツマーケティング部門シニアディレクターであるジョシュア・ドレラー氏によれば、TikTokとインスタグラムをプロモーションに使用するライソールの戦略は、同ブランドがこれらのプラットフォームの重要性、特に若者とのつながりの重要性を理解していることを示しているからだという。

「ビジュアルストーリーテリングとインタラクティブ要素に焦点を当てることで、ライソールはデジタル時代に適応している。それによって革新的な商品であるライソール・エア・サニタイザーを現代のマーケティング戦略と結びつけている」と同氏は言う。また、消費者が真実性、情報、エンゲージメントに価値を見出しているポストパンデミックにおいて、「ホリスティック(総合的)なアプローチが非常に重要だ」とも指摘した。

[原文: Inside Lysol’s new product placement strategy with influencers to insert its new air sanitizer into everyday moments ]

Julian Cannon(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)