月別倒産件数推移

写真拡大

円安・物価高・人手不足の「トリプルパンチ」が追い打ち

 2022年10月の企業倒産は594件発生し、前年同月(512件)を大幅に上回ったほか、3月の587件を上回って今年最多を更新した。また、今年5月以降6カ月連続での増加となるなど倒産増加トレンドが強まるほか、7カ月ぶりに全都道府県で倒産が発生するなど、倒産増の動きは都市部から地方へと伝播しつつある。

 足元では水際対策の大幅緩和など、インバウンドを中心に経済復興への動きが着実に進む一方で、円安・物価高・人手不足の「トリプルパンチ」が最後の追い打ちとなって、事業継続を断念する中小企業が増加している。10月の「物価高」倒産は単月で過去最多を更新、「円安」倒産も今年最多に並ぶ7件が発生した。「人手不足」倒産も、従業員やキーマンの退職などで経営難に陥ったケースが相次ぎ、2022年1-10月の累計で既に前年実績を上回る。

 「後継者難」倒産の動向にも目を向ける必要がある。2022年10月の後継者難倒産は56件発生し、単月としては過去最多を更新。年間を通じて最多だった前年(466件)を上回るペースでの推移となる。後継者難倒産の多くが、代表者の病気や死亡により事業が行き詰まったケースとなる一方、具体的な承継策を考えていたものの、コロナ禍における自社事業の先行きなどを見据え、最終的に事業をたたむ決断を下したケースが散見される点が特徴的だ。

2022年の倒産は3年ぶり増加へ 前年からの「反動増」+「黒字倒産」の発生懸念
 帝国データバンクの調査では、2021年度の企業の平均借入金利は0.97%となり、調査開始の2006年度以降で初の1%割れとなった。2007年度(2.33%)をピークに借入金利は低下が続いたなか、利子が事実上免除される通称「ゼロゼロ融資」の急拡大を受け、企業の利息負担が大きく減少したことが背景にある。一方で、こうした融資の返済は2023年春頃から本格化する見通しだ。無利子・元本据え置きに永らく慣れ切った後の返済開始は、債務の多寡を問わず、現状でも業績不振に苦しむ企業にとってコロナ禍からの立ち直りを阻む障壁となりかねない。

 足元の企業倒産は、月平均600〜700件台で推移したコロナ前に比べれば低水準であるものの、増加基調がより鮮明となってきた。現在の発生ペースが維持された場合、2022年通年の倒産件数は6200〜6300件台に到達する見通しで、3年ぶりの増加に転じる。現在の増加局面は、官民の積極支援で大幅に発生が抑制されてきた前年からの反動増といった性格を帯びている。ただ、水際対策緩和など経済復興が推し進められるなかで、景況回復期に多く見られがちな、仕入れ増や人件費増、設備増強に伴う運転資金需要に資金調達力が追い付かない「黒字倒産」の発生も、今後の倒産増加の後押しとなる可能性がある。企業調査の最前線からも「明らかに信用不安に関する問い合わせが増えてきた」との声が聞かれるなか、原材料高や「2024年問題」に直面する建設・運輸産業、人手不足の影響が顕著なサービス業といった動向を特に注視したい。