「畜産業」倒産件数推移

写真拡大

2022年の10カ月累計で既に前年を上回る

 牛乳や食肉、鶏卵など、日常の食卓を支えるニッポンの「畜産業」に危機が迫っている。酪農・養鶏・養豚など「畜産業」の倒産は、2022年1〜10月間で累計17件発生した。既に昨年(11件)の件数を大幅に上回っているほか、過去5年では最多を更新。このペースが続けば、2014年以来8年ぶりの20件台に到達する可能性が高まるなど、高水準で推移している。

 背景にあるのは、畜産業に欠かせない飼料と原油価格高騰の「物価高」に、円安による輸入物価高騰が重なる「三重苦」があげられる。特に大きな打撃は、コストの半数以上を占める飼料代の高騰だ。原料となるトウモロコシなどの穀物類を米国などの輸入に頼る配合飼料の価格は、中国の需要増による国際市況のひっ迫に円安による輸入コスト増が加わり、この2年間で急騰。さらに暖房用の原油価格の上昇、コロナ禍での外食向け需要低迷も重なり、売れば売るほど「赤字」となるケースがみられる。実際に、10月には飼料価格の高騰とエネルギーコスト増が直撃したことで赤字幅が拡大し、資金繰りに行き詰まった養鶏業者の倒産が発生した。

 足元では、政府による飼料コストの補填策や、大手乳業メーカーによる生乳取引価格の引き上げをはじめ、コスト増に苦しむ畜産業を支援する動きが拡がっている。ただ、飼料価格が安定・値下がりする時期がいつなのかは不透明だ。日配品の鶏卵や牛乳の値上げは、消費者が敏感に反応しやすいことから価格転嫁自体も容易ではなく、先行きが見通せない状況が続く。