日体大で10番を背負う三浦。高精度の左足を持ち、複数のポジションをこなし、推進力あるプレーが魅力の逸材だ。写真:安藤隆人

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 これまで伊東純也、佐々木翔、稲垣祥などを発掘し、ここ3年では長谷川元希、関口正大、須貝英大、鳥海芳樹らすでにトップで主要な存在となっている大卒選手を次々とスカウトしてきたヴァンフォーレ甲府の森淳スカウト。すでに彼が来季の戦力として獲得した選手がいる。

 日本体育大の4年、三浦颯太だ。

 左サイドバックで背番号10を背負い、積極的な攻撃参加と精度の高い左足を生かしたダイレクトプレーやクロスを武器とし、縦への推進力を持つ選手だ。

 森スカウトが三浦を最初に見たのは帝京高時代だった。当時、ボランチをやっていた三浦を見て、「左利きで技術レベルの高い、上手な選手だな」という印象を受けたが、すぐに獲得したいとまでは思わなかった。

 だが、そのわずか1年後に印象は一気に深まった。三浦が進んだのは、森スカウトの母校でもある日体大。1年生の時の関東大学リーグ2部の関東学院大戦を視察に行くと、技巧派ボランチが左サイドバックにコンバートされているのに気づいた。

「慣れないポジションのはずなのに、あまりにもスムーズにプレーをしていて、叩いてから前、叩いてから前の大きなワンツーを2回連続でやったシーンを見て衝撃を受けました。ゲームメイクできる選手が縦への推進力もあるのかと」
 
 一気にその才能に惚れ込んだ森スカウトの動きは早かった。それ以降、三浦を徹底マークし、早い段階で甲府の練習に参加させると、俊英レフティは初日でいきなり周りの評価を勝ち取った。練習開始からわずか15〜20分後に、サイドの対人練習で左斜め45度から強烈な左足ミドルをゴールに突き刺したのだった。

 それを見た当時の伊藤彰監督(現・ジュビロ磐田監督)がすぐに「森さん、この選手いいね。間違いないですよ」と声をかけてきたという。

 すぐに獲得の方向性が決まったからこそ、昨年6月に2023年シーズンからの内定が発表された。昨年に続き特別指定に登録された今季は、2月のJ2開幕戦のファジアーノ岡山戦で途中出場し、早々にプロデビューを飾るなど、期待値の大きさが伺える。
 
 4月20日に行なわれた関東大学リーグ2部の関東学院大戦。三浦は高い位置に張り出して、テンポの速いボール出しで攻撃のリズムを生み出したが、守備面ではCBとのコンビネーションが合わなかったこともあり、2−4の敗戦を喫した。

 試合後、三浦は森スカウトと共に試合を振り返った。「反省点が多い試合でした。もっと違いを出さないといけなかった」と口にしたように、森スカウトからも厳しい指摘を受けたという。

 それもそのはず、この試合の三浦の出来は本来のそれとは程遠いものだった。いつもの躍動感はなく、攻め上がったあとのスペースを相手に活用されてしまっていた。甲府ではウイングバックをやった経験もあるだけに、ここで攻守の切り替えにおける運動量や、ボールを奪った後のダイナミックな展開を見せてほしかったのが本音だ。

 三浦への期待値は非常に高い。実際に森スカウトはこう評している。

「左サイドバック、ボランチ、3バックの左もできる能力はかなり魅力的。だからこそ、今日のような試合でその特性を生かしながら、サイドに張るだけではなく、ボランチの位置に入ってボランチを押し出して攻撃に厚みを持たせたり、CBのカバーをしながらも攻撃参加を狙い続けるなど、ウイングバックのように運動量を持って攻守に関わり続けられる選手になってほしいんです」
 
 日体大を1部昇格に導き、かつ甲府でもJ1昇格への力になるべく、2つの道を同時に歩み出している三浦。双方で求められていることを繋ぎ合わせ、大学でも甲府でも確かな成長を遂げられるように。最後に三浦はこれからの抱負をこう語ってくれた。

「甲府では全然出場できていないので1分でも多く出たい気持ちはありますが、日体大の10番としての役割もあります。求められる役割は全然違うので、与えられた場所でしっかりと適正なプレーをして、結果を出すことが重要だと思っています。これから意識を持って取り組んでいきたいです」

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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