東京03が呼び起こす“本気” 佐久間宣行＆橋本和明が体感した熱気のコント現場
●ゲスト・裏方がいつも以上の気合
お笑いトリオの東京03が、ゲストの“スタア”とともに繰り広げる日本テレビのコント番組『東京03とスタア』(毎週日曜13:45〜 ※関東ローカル、24日まで／TVer・Huluで見逃し配信)。念願だったという冠コント番組に3人は口々に「夢みたい」と感激していたが、その実現に一役買ったのが、企画・演出の佐久間宣行氏と橋本和明氏だ。
テレビ東京時代から『ゴッドタン』や『ウレロ』シリーズなどで長年東京03と仕事をし、今回が独立後他局初演出となる佐久間氏と、『有吉の壁』で現在のテレビ界のお笑いブームに火を点けた橋本氏。この2人によって、今回の番組はどのように生まれたのか。そして、スタッフ・演者全員が“本気”になったという収録現場の様子を聞いた――。
図らずも東京03にプレゼントされたTシャツでペアルックになった佐久間宣行氏(左)と橋本和明氏
○■「せっかくなんで何かやりましょう」から実現
2人の交流の始まりは10年前にさかのぼる。橋本氏が、演出を担当していたシチュエーション・コメディ『SKE48のマジカル・ラジオ』に、佐久間氏の演出していた『ウレロ』のキャラクターで東京03の角田晃広をゲスト出演させたいと相談したことだった。
それ以降、頻繁に連絡を取り合うことはなかったが、佐久間氏が『有吉のバカだけど…ニュースはじめました』で有吉弘行と仕事をしていた当時、橋本氏が『有吉の壁』を特番でスタート。佐久間氏が「あんな番組できるのすごいですね」と聞くと、有吉が「日テレのプロデューサーとディレクターが頑張ってくれて、あんなのできるのうれしいよね」と喜んでいたのが印象的だったそうだ。
その後、佐久間氏の『あちこちオードリー』に佐藤栞里とパンサーがゲスト出演した際、『有吉の壁』の話でかなり盛り上がったことから、「これはさすがに一報入れておいたほうがいいな」と橋本氏に連絡。そこから、佐久間氏がテレ東を退社するということもあって、「せっかくなんで何かやりましょう」という話になり、今回の番組につながった。
普通だと社交辞令のやり取りになってしまいそうなところだが、これを実現させるのが行動力のある2人らしいエピソードだ。
○■まるで“全国レベルの強豪校”の光景
今回の収録を終えての感想を聞くと、佐久間氏は「どのコントもすごくいいなと思います」といい、「日本テレビの美術さん、技術さんのレベルが高くて、スタジオセットがすごいんですよ。セットってすごく大事で、コントなのにドラマのルックでできるってなかなか難しいんですけど、それが実現してるので、笑えるんだけどグッとくるというものが作れています」「構図の作り方がどのカメラさんも上手かった。だから、本当に“しびれる画”がありましたよね」と手応え。
橋本氏は「そこは、日本テレビに来てもらった佐久間さんに『おお!』って思ってもらいたくて、美術も技術も気合が入ってました。本当にベテランのオールスターが来てくれて、管理職になって今はシフト作ってるような人が『こういう番組だから来ました!』って肩回してくるからめちゃくちゃうまいし、“面白い画”というのをその瞬間瞬間で作ろうとやってくれたんです。カット割りを直すのも速くて、そういう意味でも現場のいい刺激になっていると思います」と解説した。
気合が入っていたのは、もちろん演者たちも。「ゲストの方たちが本気で来てくれてるんです。全員セリフをバッチリ入れて、しかもアレンジを加えて、東京03のベースの上で遊ぶということをやってくれるから、すごくいい番組だなって思いましたね」(佐久間氏)、「本読みのときよりも、本番当日がすごく良くなってるんですよね」(橋本氏)と感服。
その背景にあるのは、東京03のコントに臨む姿勢だという。
佐久間氏は「東京03は本読みをスタートに、独自に練習してくれるので、収録を始めるときにはベースができてるんです。それに、スタッフ側がカット割りを直している間に、勝手にゲストと練習してくれるんですよ。これはすごいですよ」と明かし、橋本氏は「合間に勝手に稽古してくれる演者さんがいるんだって、びっくりしました。しかもあのキャリアでやられるんですから、ゲストの方もピリッとしますよね」と驚かされた。
その光景は「全国を狙う部活みたいですもん(笑)。部員が自主的に練習してる感じ」(佐久間氏)、「なかなかの強豪校ですよね(笑)。だからカメリハやって本番までの間に、もう一段階良くなってるということがあるんです」(橋本氏)という。
(左から)角田晃広、飯塚悟志、ゲストの光石研＝10月17日の放送より (C)NTV
さらに、橋本氏からは「こちらが送った台本を、あんなに直してくれるんだと思いました。『この語尾のほうがいいんじゃないか?』『このセリフのツッコミのほうがいいんじゃないか?』と書いてあって、その理由が全部分かるんです」と、熱を感じるエピソードも。
佐久間氏は「12〜13分のコントを、あのセットで、しかもあの人たちの熱でやることで、受け取ったらグッとくるものがあると思います。笑えるのはもちろん、何回も見れるという感覚があると思います」と胸を張った。
1回目の収録が終わった後、美術スタッフから「豪華に作って頑張りすぎました。もうお金がないんでキツいです」と言われたそうだが、次の収録で建っていた居酒屋とカフェのセットは、やはり豪華なものだったそう。橋本氏は「東京03さんの姿勢を見て、プレッシャーになって頑張ってくれたんだと思います」と、様々なポイントで影響を及ぼしていたようだ。
●きっかけは芸人ライブ…音声コントの可能性
10月17日放送の音声コントに登場するかが屋 (C)NTV
『東京03とスタア』の特色の1つは、東京03が若手芸人と繰り広げる「音声コント」のコーナーだ。これが生まれたのは、「芸人さんの単独ライブで、よく幕間にVTRでテキストだけ出して、音声だけのコンテンツを流すことがあるんですけど、あれが結構爆発的にウケるですよ。それと、YouTubeを見ている若い人たちにとっては、書き起こした音声コンテンツに慣れてるから、テレビではやったことないけど、短いワンコーナーだったらありなんじゃないかと思ったのが、きっかけの1つですね」(佐久間氏)。
これを担当しているのは、『有吉の壁』のYouTubeチャンネルで、移動中の芸人たちの音声をコンテンツにした「ロケバスラジオ」を手がける竹内遥香ディレクター。「そこでの手応えもあるし、ノウハウもあるんですけど、音だけというのは新鮮で楽しいですよね。それぞれゲストの芸人さんが音であることを生かしたネタを書いてきているので、コントって音だけでも可能性があるんじゃないかと思いますし、別の番組でもできそうだなと感じました」(橋本氏)と発見があった。
○■“気持ち悪いディレクター”が撮ったメイキング映像
そんな竹内ディレクターは、東京03と佐久間氏の大ファンだそうで、Huluで配信しているメイキング映像も担当している。
佐久間氏は「いい意味で気持ち悪いディレクターが撮ってるので、普通のメイキングと比べて、竹内さんにしかできない粘りがあります。ガチファンが撮ったメイキングなので、ゲストも含め普段は見せない一生懸命な表情も出てるし、こんなにもコントを愛してるんだなというこぼれ落ちる素顔も面白いと思います」と見どころを明かし、橋本氏は「本番の合間に練習してる姿も入ってると思います。終わった後にホッとしてる顔も、プレッシャーを感じていたというのが分かって、楽しいと思います」と予告。
ガチファンのあまり、「『有吉の壁』のエキストラで有吉さんに褒められた演技を東京03に見てもらうという、ただの謎の時間もありました(笑)」(佐久間氏)という珍事もありながら、橋本氏は「今回の佐久間さんと東京03さんの関係の作り方を見て、若いスタッフたちがまた次の世代の芸人さんたちと一緒に作っていけるといいですよね」と期待を込めた。
東京03
●佐久間宣行1975年生まれ、福島県出身。早稲田大学卒業後、99年にテレビ東京入社。『TVチャンピオン』『ピラメキーノ』『トーキョーライブ22時』『青春高校3年C組』『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』『ウレロ☆シリーズ』などを担当し、21年に退社。引き続き『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『考えすぎちゃん』とテレ東番組のほか、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)、『サクマ＆ピース』(福島中央テレビ)、『佐久間宣行のNOBROCK TV』(YouTube)に出演もする。
●橋本和明1978年生まれ、大分県出身。東京大学大学院修了後、03年に日本テレビ放送網入社。『不可思議探偵団』『ニノさん』『マツコとマツコ』『卒業バカメンタリー』『Sexy Zoneのたった3日間で人生は変わるのか!?』などで企画・演出、2018年・21年の『24時間テレビ』で総合演出を担当。現在は『有吉の壁』『有吉ゼミ』『マツコ会議』といったバラエティ番組のほか、『あいつが上手で下手が僕で』『寝ないの?小山内三兄弟』『ナゾドキシアター「アシタを忘れないで」』『あいつが上手で下手が僕で』などドラマ・舞台も手がける。
お笑いトリオの東京03が、ゲストの“スタア”とともに繰り広げる日本テレビのコント番組『東京03とスタア』(毎週日曜13:45〜 ※関東ローカル、24日まで／TVer・Huluで見逃し配信)。念願だったという冠コント番組に3人は口々に「夢みたい」と感激していたが、その実現に一役買ったのが、企画・演出の佐久間宣行氏と橋本和明氏だ。
テレビ東京時代から『ゴッドタン』や『ウレロ』シリーズなどで長年東京03と仕事をし、今回が独立後他局初演出となる佐久間氏と、『有吉の壁』で現在のテレビ界のお笑いブームに火を点けた橋本氏。この2人によって、今回の番組はどのように生まれたのか。そして、スタッフ・演者全員が“本気”になったという収録現場の様子を聞いた――。
○■「せっかくなんで何かやりましょう」から実現
2人の交流の始まりは10年前にさかのぼる。橋本氏が、演出を担当していたシチュエーション・コメディ『SKE48のマジカル・ラジオ』に、佐久間氏の演出していた『ウレロ』のキャラクターで東京03の角田晃広をゲスト出演させたいと相談したことだった。
それ以降、頻繁に連絡を取り合うことはなかったが、佐久間氏が『有吉のバカだけど…ニュースはじめました』で有吉弘行と仕事をしていた当時、橋本氏が『有吉の壁』を特番でスタート。佐久間氏が「あんな番組できるのすごいですね」と聞くと、有吉が「日テレのプロデューサーとディレクターが頑張ってくれて、あんなのできるのうれしいよね」と喜んでいたのが印象的だったそうだ。
その後、佐久間氏の『あちこちオードリー』に佐藤栞里とパンサーがゲスト出演した際、『有吉の壁』の話でかなり盛り上がったことから、「これはさすがに一報入れておいたほうがいいな」と橋本氏に連絡。そこから、佐久間氏がテレ東を退社するということもあって、「せっかくなんで何かやりましょう」という話になり、今回の番組につながった。
普通だと社交辞令のやり取りになってしまいそうなところだが、これを実現させるのが行動力のある2人らしいエピソードだ。
○■まるで“全国レベルの強豪校”の光景
今回の収録を終えての感想を聞くと、佐久間氏は「どのコントもすごくいいなと思います」といい、「日本テレビの美術さん、技術さんのレベルが高くて、スタジオセットがすごいんですよ。セットってすごく大事で、コントなのにドラマのルックでできるってなかなか難しいんですけど、それが実現してるので、笑えるんだけどグッとくるというものが作れています」「構図の作り方がどのカメラさんも上手かった。だから、本当に“しびれる画”がありましたよね」と手応え。
橋本氏は「そこは、日本テレビに来てもらった佐久間さんに『おお!』って思ってもらいたくて、美術も技術も気合が入ってました。本当にベテランのオールスターが来てくれて、管理職になって今はシフト作ってるような人が『こういう番組だから来ました!』って肩回してくるからめちゃくちゃうまいし、“面白い画”というのをその瞬間瞬間で作ろうとやってくれたんです。カット割りを直すのも速くて、そういう意味でも現場のいい刺激になっていると思います」と解説した。
気合が入っていたのは、もちろん演者たちも。「ゲストの方たちが本気で来てくれてるんです。全員セリフをバッチリ入れて、しかもアレンジを加えて、東京03のベースの上で遊ぶということをやってくれるから、すごくいい番組だなって思いましたね」(佐久間氏)、「本読みのときよりも、本番当日がすごく良くなってるんですよね」(橋本氏)と感服。
その背景にあるのは、東京03のコントに臨む姿勢だという。
佐久間氏は「東京03は本読みをスタートに、独自に練習してくれるので、収録を始めるときにはベースができてるんです。それに、スタッフ側がカット割りを直している間に、勝手にゲストと練習してくれるんですよ。これはすごいですよ」と明かし、橋本氏は「合間に勝手に稽古してくれる演者さんがいるんだって、びっくりしました。しかもあのキャリアでやられるんですから、ゲストの方もピリッとしますよね」と驚かされた。
その光景は「全国を狙う部活みたいですもん(笑)。部員が自主的に練習してる感じ」(佐久間氏)、「なかなかの強豪校ですよね(笑)。だからカメリハやって本番までの間に、もう一段階良くなってるということがあるんです」(橋本氏)という。
さらに、橋本氏からは「こちらが送った台本を、あんなに直してくれるんだと思いました。『この語尾のほうがいいんじゃないか?』『このセリフのツッコミのほうがいいんじゃないか?』と書いてあって、その理由が全部分かるんです」と、熱を感じるエピソードも。
佐久間氏は「12〜13分のコントを、あのセットで、しかもあの人たちの熱でやることで、受け取ったらグッとくるものがあると思います。笑えるのはもちろん、何回も見れるという感覚があると思います」と胸を張った。
1回目の収録が終わった後、美術スタッフから「豪華に作って頑張りすぎました。もうお金がないんでキツいです」と言われたそうだが、次の収録で建っていた居酒屋とカフェのセットは、やはり豪華なものだったそう。橋本氏は「東京03さんの姿勢を見て、プレッシャーになって頑張ってくれたんだと思います」と、様々なポイントで影響を及ぼしていたようだ。
●きっかけは芸人ライブ…音声コントの可能性
『東京03とスタア』の特色の1つは、東京03が若手芸人と繰り広げる「音声コント」のコーナーだ。これが生まれたのは、「芸人さんの単独ライブで、よく幕間にVTRでテキストだけ出して、音声だけのコンテンツを流すことがあるんですけど、あれが結構爆発的にウケるですよ。それと、YouTubeを見ている若い人たちにとっては、書き起こした音声コンテンツに慣れてるから、テレビではやったことないけど、短いワンコーナーだったらありなんじゃないかと思ったのが、きっかけの1つですね」(佐久間氏)。
これを担当しているのは、『有吉の壁』のYouTubeチャンネルで、移動中の芸人たちの音声をコンテンツにした「ロケバスラジオ」を手がける竹内遥香ディレクター。「そこでの手応えもあるし、ノウハウもあるんですけど、音だけというのは新鮮で楽しいですよね。それぞれゲストの芸人さんが音であることを生かしたネタを書いてきているので、コントって音だけでも可能性があるんじゃないかと思いますし、別の番組でもできそうだなと感じました」(橋本氏)と発見があった。
○■“気持ち悪いディレクター”が撮ったメイキング映像
そんな竹内ディレクターは、東京03と佐久間氏の大ファンだそうで、Huluで配信しているメイキング映像も担当している。
佐久間氏は「いい意味で気持ち悪いディレクターが撮ってるので、普通のメイキングと比べて、竹内さんにしかできない粘りがあります。ガチファンが撮ったメイキングなので、ゲストも含め普段は見せない一生懸命な表情も出てるし、こんなにもコントを愛してるんだなというこぼれ落ちる素顔も面白いと思います」と見どころを明かし、橋本氏は「本番の合間に練習してる姿も入ってると思います。終わった後にホッとしてる顔も、プレッシャーを感じていたというのが分かって、楽しいと思います」と予告。
ガチファンのあまり、「『有吉の壁』のエキストラで有吉さんに褒められた演技を東京03に見てもらうという、ただの謎の時間もありました(笑)」(佐久間氏)という珍事もありながら、橋本氏は「今回の佐久間さんと東京03さんの関係の作り方を見て、若いスタッフたちがまた次の世代の芸人さんたちと一緒に作っていけるといいですよね」と期待を込めた。
●佐久間宣行1975年生まれ、福島県出身。早稲田大学卒業後、99年にテレビ東京入社。『TVチャンピオン』『ピラメキーノ』『トーキョーライブ22時』『青春高校3年C組』『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』『ウレロ☆シリーズ』などを担当し、21年に退社。引き続き『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『考えすぎちゃん』とテレ東番組のほか、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)、『サクマ＆ピース』(福島中央テレビ)、『佐久間宣行のNOBROCK TV』(YouTube)に出演もする。
●橋本和明1978年生まれ、大分県出身。東京大学大学院修了後、03年に日本テレビ放送網入社。『不可思議探偵団』『ニノさん』『マツコとマツコ』『卒業バカメンタリー』『Sexy Zoneのたった3日間で人生は変わるのか!?』などで企画・演出、2018年・21年の『24時間テレビ』で総合演出を担当。現在は『有吉の壁』『有吉ゼミ』『マツコ会議』といったバラエティ番組のほか、『あいつが上手で下手が僕で』『寝ないの?小山内三兄弟』『ナゾドキシアター「アシタを忘れないで」』『あいつが上手で下手が僕で』などドラマ・舞台も手がける。
