ビーチバレー
坂口佳穂インタビュー(前編)

昨年、東京オリンピックが延期され、ビーチバレーボールの開催国枠男女各1チームを決める日本代表チーム決定戦も延期。今春、開催されることになった(5月22日〜23日/女子は東京都立川市、男子は大阪市で開催される。男女各6チームで五輪切符を争う)。

着実に成長を遂げてきた坂口佳穂(25歳/マイナビ)も、村上礼華(24歳/ダイキアクシス)とのペアでランキング上位6チームに入って、日本代表チーム決定戦の出場権を得ている。若い坂口にとって、一年という延長された時間はプラスに働いたのだろうか。最重要シーズンとなる今季の開幕前に、彼女を直撃して話を聞いた――。

――昨シーズン、国内のマイナビジャパンビーチバレーボールツアーは1大会が開催されたのみ。そして、その立川立飛大会では、国内ランキングトップの石井美樹&村上めぐみペアといきなり1回戦で激突し、惜しくも敗れてしまいました。

「負けたことはとても悔しかったのですが、課題も見えましたし、手応えがあった試合でした。その悔しさがバネになって、その後のいいトレーニングにつながった部分もあります。

 石井&村上ペアとは咋シーズン、小さな大会でも対戦しましたが、勝つことができませんでした。"大きな壁"に感じて、口惜しい思いもあるのですが、実力のあるチームと対戦すると、全力で当たっていかないといけないので、課題が明確になります。その全力を毎試合、練習ゲームでも出していくことの必要性も感じました」

――村上礼華選手とのペアは、今シーズンで3年目を迎えます。チームとしての変化はありますか。

「これまでどおり、元気よくアグレッシブにプレーしています。プレーのベースは、サーブで攻めること、相手の攻撃を切り返していくこと。そういった点も変わりません。2人ともまだまだ、日々勉強です。

 ただそんななか、自分の意見を積極的に言うタイプではなかった礼華が昨年、試合でうまくいかなかった時に『それはこうじゃないですか?』『こうしましょう』と言うようになりました。それは、チームとして大きなことだったと思います。私の調子が上がらないと、すぐに礼華がカバーして助けてくれるようにもなりました。

 礼華が負担を感じずにノビノビとプレーできることが、チームとしては一番いい形。そのためにも、しっかりサイドアウトを切るなど、私がやるべきことは常に意識しています。でも、試合では私が狙われることが多いので、大変になってくると、『礼華ごめん、助けて』ってお願いしています(苦笑)」

――昨シーズンは国内ツアーだけでなく、海外のワールドツアーも3月以降中断。予定していた試合がなくなって、トレーニングも思いどおりにできなかったのではないですか。

「2カ月間ぐらいは活動を自粛していたので、その間は自宅でできるトレーニングや、近所の公園で体を動かすことぐらいしかできませんでした。でも毎日、トレーナーからメニューをもらってトレーニングをしていて、体力の落ち込みはありませんでした。どんな時でも『やれることはある』とポジティブに考えていました。

 試合勘はついては、とても難しかったです。いくら練習でいいプレーができても、試合でできないと意味はないので、それは不安でした。ですから、ゲーム形式の練習は多く取り入れていました。それでも、やっぱり緊張感など本番とは違うので、試合と同じ感覚は、試合の中でしかつかめませんでしたね」

――昨シーズンはフィジカルトレーニングを重点的に行なってきたと聞きました。

「パワー、スピード、体力、すべてのフィジカルを上げるトレーニングをしてきました。簡単ではないですが、やらなければ何も変わっていかないので、がんばってきました。自分でも身体は変わってきたと思います。上半身をメインにトレーニングをしていて、かなり筋肉もついてきました」

――目標のひとつでもあった東京オリンピックが延期となって、日本代表チーム決定戦も延期されました。1年という時間をどう過ごしてきましたか。

「(オリンピックの)延期にはとても驚きましたが、私たちにとってはプラスになると思いました。チームとして成長できる時間ができたので、それに向かってポジティブに取り組めたと思います。

 特にフィジカルの向上は、私たちが理想とするプレーやゲーム展開には必要なので、その強化にはいい時間がもらえました。今年に入ってからは基礎練習が中心で、何度も何度も同じ練習を繰り返して、基礎を作ってきました」

――日本代表チーム決定戦を争う相手は、何度も対戦してよく知っているチームばかりです。いろいろと作戦も考えているのでしょうね。

「もちろん! もちろん!(笑)。それは、データとともに分析しています。当たり前ですが、相手にも分析されているので、私たちがどう見られているかも考えています。作戦? それは言えません! 試合に勝ったら、あとからお話します。

 私たちはチャレンジャーで、上位チームほどプレッシャーはないかもしれません。そのチャレンジ精神のままプレーしたいと思います」 

――その重要な試合はもうすぐですが、今はどういった心境ですか。

「どんな大会でも重要であることは変わりませんし、将来へとつながっていきます。ですが、日本で開催されるオリンピックの代表を決める大会は、私が現役中にこの先、もうないでしょうから、本当に楽しみです。

 ナーバスにはなっていないですね。たまに『大丈夫かなぁ......』『どうしよう......』と一瞬だけ不安がよぎることもありますが、そんな時も『私、今、不安がよぎってるなぁ〜』って客観的に見ています(笑)。マイナスな考えも味方にしようと。どうなるかわかりませんし、最低なことが起きるかもしれませんが、私はその時どうするんだろうって、それも楽しみです。

 代表決定戦に出られるだけで、単純に『すごいな』と思っています。人生はいろんなことがあるんだなって。数年前まで、まさか自分がオリンピックを目指すなんて考えてもいませんでしたから。その分、楽しまないとソンですよね」

(つづく)

坂口佳穂(さかぐち・かほ)
1996年3月25日生まれ。宮崎県出身。武蔵野大卒。身長172cm。血液型A