新型コロナウイルスの影響で、長らく会合を休止していた五代目山健組が、6月に定例会を再開。5月末には、同じ神戸山口組直系組織で岡山県に本拠を置く池田組の若頭が、敵対する六代目山口組傘下組織の最高幹部に銃撃され、重傷を負う事件が起きていた。そのため、報復攻撃も懸念される中での活動再開には、不穏さが感じられた。

 山健組の定例会では、出所した最高幹部による挨拶と、新直参誕生の発表があったといわれ、より団結を強めたかに見えた。ところが、それから約3週間後、「山健組が分裂する」という未確認情報が突如、飛び交ったのだ。

 さらに7月10日、「神戸山口組から山健組が正式に離脱した」という内容に変わっていったのである。

 その“通達”には、不可解な点もあった。神戸山口組の若頭代行であり、山健組トップの中田浩司組長は、昨年8月に発生した六代目山口組・三代目弘道会の兵庫県神戸市内にある関連施設での組員銃撃事件で、兵庫県警によって実行犯として逮捕、起訴され、現在は勾留中の身なのだ。

 ある関西の組織関係者が言う。

「中田組長が“中”から何らかの方針を示したという見方もされたんやが、現時点では山健が丸ごと出たいう話は聞こえてないで。なんせ、神戸山口組の主力組織やからな。そこが抜けたら、山口組の分裂抗争かて戦局が変わるどころの話やないやろ。ただ、山健組内の名門組織を含め、離脱派の名前が複数、挙がっとるのも事実や」

 予期せぬ事態が山健組を襲ったのは、今回が初めてではなかった。平成29年4月には、神戸山口組と山健組の最高幹部を兼任していた織田絆誠会長らが、山健組直参の3分の1を引き連れて脱退。新たな組織(現・絆會)を発足したのだ。

 しかし一昨年には、神戸山口組トップであり、山健組組長でもあった井上邦雄組長から組織を引き継ぎ、中田組長が山健組五代目を襲名。中田組長のもと新体制がスタートし、今年2月には空席だった本部長のポストに武闘派直系組長が抜擢され、運営の中枢を担う執行部メンバーも増員されたばかりだった。

 今回の脱退騒動は、神戸山口組執行部も乗り出す事態に発展したともいわれ、混迷の度合いを深めているのは間違いなさそうだ。