筆者の元にも「アベノマスク」が届いた。新型コロナから身を守るには「3密」に注意だが、大切なお金を守り増やすためには「4密」を避けることが重要だ(写真:YUTAKA/アフロ)

なにはともあれ、新型コロナウイルスを語らねばなるまい。

大方の予想通り、一部で緊急事態宣言は延長されたが、39県で解除となった。一時よりも1日あたりの感染者数の増加が減り、毎日の死者数も増えてはいない。他方、経済的な悪影響は目立って拡大しているので、「部分的経済再開」を目指すことは妥当だろう。

コロナはぐずぐずと続く


この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

医学・経済両面で将来をリアルに予見するには不確実性があまりに大きいが、今後のわが国は、

(1)医療のキャパシティーの上限を超えない範囲で、
(2)感染・死亡の様子を見ながら生活や経済の活動制限を緩和し、
(3)感染がまた拡大したら活動制限を増やす

といった調子の「コロナと経済のバランスを取る」動きになるのだろう。

自粛の強要に正義感を高揚させる楽しみを覚えた「自粛マニア」にとっても、経済を動かさないことこそが悪であり、ひいては死者も増えるのだと脅す「経済至上主義者」にとっても、どちらにも不満足で中途半端な方針だろう。だが、これら3つの原理の下に、しばらく時間を過ごすことになると想定しておくのが現実だ。

願わくは(1)(2)(3)に関する明確な基準を政府には示して欲しいものだ。基準は理由があれば後から修正していい。基準も理由も示さないよりは、国民が先のことを考えやすいので、その方が国家レベルで無駄が減る。

なお、現状では、集団免疫が形成されているとは思えないし、治療薬もワクチンも決定的なものが実用化されているわけではないから、自粛や活動制限は感染拡大のスピードを落とすだけで、制限を緩めるとまた感染は拡大することが避けがたいように思われる。すなわち、コロナとの付き合いはぐずぐず続く。

さて、筆者の自宅には届いていないが、事務所に(いずれも東京都内だ)「安倍さんからのマスク」(アベノマスク)が届いた。「3つの密を避けましょう!」と書いてある安倍さんから送られてきたマスクの袋を眺めつつ、「密閉」・「密集」・「密接」についてつらつら考えていたら、「3密」を避けることは、何も健康ばかりでなく、お金を守るうえでも重要なのだと気がついた。

まず、お金を守るための「3密回避」とは?

「密閉を避けよ」。
金融機関の応接室で担当者あるいは、担当者に加えて上司や支店長などから金融商品のセールスを受ける状況は極めて良くない。自宅にセールスマンに上がり込まれる(あるいは、愚かにも「招き入れる」)状況も同様だ。

密閉空間でセールスを受ける状況になると、「区切り」になる何かがないとその状況を打ち切ることが出来ない気分となる。そして、その何かは、プロである先方の方が口は上手いのだし(逆に「聞き上手」や「訥弁(とつべん)」を武器にするセールスもいるが)、場が最も丸く収まるのは、顧客が商品を買うと決めることだ。密閉の場は自分を追い込んでしまう。

「密集も避けよ」。
 セミナーのような場で、説得される周囲の人を見て自分も同調することは、ありがちなことだ。マルチ商法のミーティングなどでも起こる状況だ(その筋ではマニュアル化されているだろう)。売り手の影響を一人で受けるのも良くないが、他の顧客の動きに影響されるリスクにも自覚的でありたい。静かに一人で考えられない状況で、お金の問題を決めるのは良くない。

「密接は危険だ」。
 ウイルスの飛沫感染には潜伏期間があるが、一気に発症(=発注!)まで持ち込もうとする時にセールスマンが使うテクニックが「密接」だ。密接した距離で話を聞くと、相手の、熱意、迫力、あるいは(失敗した場合の)落胆、などが実感として伝わって来るのだが、これらの「実感」はいずれも「金融的意思決定」にあっては余計な要素だ。もちろん義理を感じるような濃厚接触(例:接待的なゴルフなど)が高いものに付くことは、多くの大人が冷静なら、わかることだろう。

なお、金融機関のセールスと対峙する時に、密閉・密集・密接の「3密」を避けることの効果は、「必要な時にはこちらからお願いするし、ミーティングもこちらで設定する」と言って、テレワークに使う会議システムで、セールスマンの話を聞くとよく分かるかも知れない。圧迫を受けない距離と状況で、小さな画面の中で必死に話す人物を見ると、彼(彼女)の「不要不急」性が、実感としてよく分かるのではなかろうか。

なお、この場合に、日時の調整やミーティングの設定など、面倒なことは全て顧客側が自分でやることが大切だ。「自分は客なのだから、面倒なことは相手がやるべきなのだ」と感じている時点で、あなたは撃たれる寸前のカモである。「お客様は神様だ」という言葉を、顧客の立場にありながら信じるほど堕落した宗教はない。

4つ目の危険な「密」とは?

さて、お金の話には、もう一つ危険な「密」がある(何だと思われますか?)。

それは「秘密」の「密」だ。「これは〇〇筋(政治家、企業など)に近い知人から内々に聞いた話なので、他人に話さないことをお約束いただきたいのですが、実は…」というような前置き付きの儲け話は99%怪しい。また、特定のメンバーの間だけで秘密に出資を募っているというような触れ込みの話は99.9%怪しい。

そもそも、(1)本当に儲かる案件で、(2)ほどほどの資金で投資できるような話が本当に有望なら、金融が超緩和状態にある現在、情報の持ち主が自分で投資するはずであって、その情報が他人に提供されるはずがない。

もちろん、この種の物事にはバリエーションがあり、初期の段階で「撒き餌」的に儲けさせる手口もあるのだが、それを見破って且つ無事に食い逃げしようというのは、難度が高く割の悪い賭けだ。下手をするとリアルに怪我をしかねない。

加えて言うなら、この件は、「(あなたの)ご主人には内密にしておきますが」とか、「特例なので、私(金融マン)の上司には伝えなでください」といった条件が付く話も危険だ。

しかし、特に証券マンは、」「自分だけが知っている秘密の話」をするのが大好きだし、人は一般に内密になされるという前提の話に心を動かされやすい。「秘密」の「密」には、つい「蜜」と書き間違えてしまいそうな甘い誘惑がある。

結論をまとめよう。大切なお金を守るためには、4つの密(密閉・密集・密接・秘密)を慎重に避けることが大切だ。コロナの感染リスクを避けるために「ソーシャル・ディスタンシング」(社会的距離を取ること)が強調されるが、金融の意思決定にあって「人間のリスク」の悪影響を避けるためには「ファイナンシャル ディスタンシング」が重要だ。

すなわち、お金に関する意思決定は、必ず他人の影響から距離を置いて、一人で行うことが大切なのだ。

特に金融マンには、彼(彼女)が「菌有マン」だと思って相手をするくらいの距離を取ったほうがいい。もちろん、筆者も金融マンなので、例外ではない(本編はここで終了です。次ページは、競馬好きの筆者が週末の競馬を予想するコーナーです。あらかじめご了承ください。

ここからは競馬コーナーだ。

17日(日)は古馬牝馬距離1600メートルのG1レース、ヴィクトリアマイル(東京競馬場11R)が行われる。

例年、個性的魅力と気難しさの両方を兼ね備えた一癖ある大人の女性ばかりが集って妍(けん)を競う、先の展開が読めないややこしいパーティーのような難しいレースだ。

ところが、今年は、いつもの「訳あり熟女の集団」に、今が旬でピカピカの人気女優のようなアーモンドアイ(6枠12番、5歳牝馬)が紛れ込んだ。パーティー客の目は彼女にばかり集まる。熟女軍団には迷惑な話だろう。

国内最強馬の座が狙えるアーモンドアイには、「府中のマイル戦なら、安田記念でいいのに」と思ったが、よく見ると1着賞金の差が500万円しかない。しかも、「一戦燃焼型」でレース間隔を明けたい同馬の場合、春競馬フィナーレで賞金の高い宝塚記念(6月28日)までに、より長い間隔があるこのレースの方が良いのだろう。

ヴィクトリアM「主役女優」アーモンドアイの「相手」は?

牝馬は調子の判断が難しいし、紛れの多いマイル戦でもあるが、アーモンドアイと他馬との間には「良馬場なら2馬身出遅れて互角」というくらいの能力差があるだろう。問題はアーモンドアイの相手探しと、何らかの事情があった時に「もしかすると」の可能性を秘めた馬の発見だ。

強い馬が確実に勝ちに来た場合、一般的に苦しいのは勝負所でその馬に交わされる「ほどほどの先行馬」だ。イチかバチかの大逃げタイプは別だが、今回のメンバーにはいない。だとすると、セオリーから見た狙いは、(1)無欲の(に見える)追い込み馬、で(2)(東京競馬場のような)左回りに強い馬、だろう。アーモンドアイの相手には共に末脚が切れて左回りに勝鞍があるプリモシーン(3枠5番)とスカーレットカラー(7枠14番)を強調する。軽くタテ目も含めて馬連、馬単を薄くボックス的に重ねる感じで投資ウェイトを調整したい。

あと1頭、「実は主演級の大物」の可能性が否定できない、アーモンドアイより1歳下のラヴズオンリーユー(1枠1番)は消せないので押さえたい。その他にも目移りする、血も個性もディープなメンバー達なのだが(ディープインパクト産駒が多い!)、ごめんなさい。敢えて4頭に絞り込んで、馬券の組み合わせを考える。