色とりどりの花火が夜空を彩る花火大会は日本の夏の風物詩ですが、アメリカでも7月4日の独立記念日には各地で盛大な花火大会が催されるのが通例です。そんな花火の中でも「青い花火」が一番難しい理由について、パデュー大学の化学講師にして世界最大の花火愛好家コミュニティPyrotechnics Guild Internationalのリーダーでもあるポール・スミス氏が語っています。

Red, white but rarely blue - the science of fireworks colors, explained

https://theconversation.com/red-white-but-rarely-blue-the-science-of-fireworks-colors-explained-119284

花火の起源は、紀元前200年に中国の錬丹術の研究者が、火薬の原料となる硝石を発見したことに端を発します。だたし、当時は火薬としてではなく不老不死の霊薬の材料として研究されており、火薬として使用されるのはそれから1000年後に黒色火薬が発明されてからのことでした。



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その後、人類史に残る発明として世界に広がった火薬は、14世紀ごろにイタリアの祝祭で火を吐く人形の催し物として使用され、これが今日の観賞用花火の原型となりました。

花火の火薬がさまざまな色の光を放つのは炎色反応によるもので、これは熱エネルギーにより金属原子中の電子が励起されてから基底状態に戻る際に、光エネルギーを放出するという現象です。この際に発生する光は元素ごとに異なる波長を持っているので、火薬に混ぜる金属によって赤・緑・黄・紫など色とりどりの花火を作ることができます。



こうして作られる花火の中で、スミス氏が一番難しいとしているのが青色の花火で、その理由のひとつが「夜空は真っ暗なように見えても実はまだかなり青いため」です。これにより青い花火を夜空に打ち上げても、にじんで見えてしまうとのことです。

もうひとつの理由が、化学物質を複雑に組み合わせなければ青い光を出しにくいためです。これは青い花火以外にもあてはまることですが、炎色反応を起こす金属の固まりを火薬に混ぜても、色鮮やかな花火にはなりません。複数の化学物質と金属元素を組み合わせた化合物を使用して初めて、鮮やかな色の花火を作ることができますが、上記の通り青色は空に対してひときわ目立つようにしなくてはならないため、他の色とは違って一工夫する必要があるとのこと。

スミス氏は青色の光を出すには銅をメインに使うのがベストだと考えていますが、スミス氏が「ピルボックスブルー」と名付けた鮮やかで濃い青色の花火にたどりつくためには、20通りもの製法を編み出さなくてはならなかったとのこと。

ピルボックスとは、ハワイのオアフ島の各所に残っている、第二次世界大戦時のトーチカのこと。ピルボックスは概して見晴らしのいい場所に立てられていて、そこから眺めるオアフ島の青い海は絶景スポットとして知られています。



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スミス氏は「夜空に青い光の粒が踊っているのが見える時、そこでは励起された電子が青い光としてエネルギーを放出しているのです」と述べて、複雑な化学反応が織り成す芸術の魅力を語っていました。