「6月1日に来てください」という連絡がきたら、”内定”のサインである可能性が高い (写真:SAMURAI / PIXTA)

経団連の「採用選考に関する指針」は、選考活動の開始を6月1日以降と定めている。つまり、5月末まではWEBや説明会を通じての広報活動のみのはずだが、すでに選考を始めている企業は多い。


堂々と「面接」という企業もあれば、「面談」や「懇談会」、「ジョブマッチング」などの名称を使う企業もある。ただし、どういう名称であろうと、採用担当者や面接官が学生に個別で会って会話を交わすものは、選考活動と考えていい。

さて、その選考の結果は、どのように学生に伝えられているのだろうか。HR総研が昨年6月、楽天「みん就(みんなの就職活動日記)」と共同で行ったアンケート調査から、昨年の就活生が「内定」と思ったサインを紹介しよう。

学生のコメントを読むと、内定(内々定)に関しては、多くの大手企業が「6月1日」という期日を守ろうとしているようだ。採用を決めているが、学生へ正式に伝えるのは6月1日にして、その前に「内定を出すよ」ということを示唆する発言をする。学生を他社に採られたくないので、「6月1日に伝えるけれど、もう決めているよ。わかっているよね。ウチに来てね」と、ほのめかしているわけだ。

6月まで「内定出し」できないが実態は・・・

「リクルーターに6月1日の面接について、極めて重要な面談、一生に何度もある機会ではない、本当に貴重な機会などと、その重要性を強調された」(京都大学・文系)、「6月1日に電話するから、そのときに意志を教えてね、と言われた」(同志社大学・文系)、「6月1日は1日中予定を入れないでくださいと言われました」(東京工業大学・理系)、「6月1日にお会いしましょうと言われたこと」(横浜国立大学・理系)

5月末に連絡を受け取った学生もいるが、中身は6月1日と同一と考えていいだろう。

「5月31日に電話がかかってきて、『今までの面談を踏まえて、ぜひあなたと働きたいと思っている』と言われたこと」(東京大学・文系)、「5月末に、もう1度本社に来てほしいと電話が来たとき」(学習院大学・文系)

「5月前半に『合格といたします。この結果は6月の最終選考に引き継がれます』と伝えるというメールが来た」(名古屋大学・理系)のように、少しおかしなメールのように思うが、合格と言いながら6月に最終選考をする企業もある。この最終選考は役員面接や社長面接を指している。

「一緒に働きたい」という表現で、内定を示す企業も多い。頭に「ぜひ」を付けて強調することもある。

「『ぜひ一緒に働きたい』という言葉をいただいたこと」(九州大学・文系)、「一緒に働いていきたいと思っているという言葉」(関西学院大学・文系)、「最終面接でぜひ一緒に働きたいと言われたこと」(大阪電気通信大学・理系)

「一緒に働きたい」は内定有力?

「春に」や「4月から」と時期を伝える面接官もいるが、これはもちろん学生が入社する翌春を指している。

「春に一緒に働くことを楽しみにしています」(山口県立大学・理系)、「4月から是非一緒に働きましょう」(国際基督教大学・文系)

「握手」は親近感を示し、面接では内定を意味する。

採用現場の言葉に「握手」がある。手を握り合う動作は、互いに敵意がなく、親近感を示す身振りとして使われる。そして「握手を交わす」と言えば、何かしらの協力関係が生まれたことを意味している。

要は、人事が「握手」と言えば、それは内定を意味している。「5月半ばの時点で、1日の最終面接は握手だと伝えられていた」(東北大学・文系)、「次は握手会、と言われたこと」(神戸大学・理系)というように、人事は使う。

面接の最後に握手を求められることもあるが、これも「気に入った」「あなたを高く評価する」という意思表示だ。

「最終面接の最後に面接官の方と握手を交わしたこと」(金沢大学・文系)、「握手を求められた」(成城大学・文系)

ただ完全に内定を意味するわけではない。「役員面接の前に、人事の方に握手をされた」(電気通信大学・理系)という学生がいるが、この握手は「私はあなたを評価している。最後の役員面接を突破して、内定を勝ち取ってもらいたい」という趣旨のものだと考えられる。

笑顔を内定のサインと感じた学生も多い。笑顔は、相手を受け入れ、好意を持つという表情だからだ。面接官の笑顔は、学生を安心させる効果が大きい。

「最終面接が笑顔で進んだ。定型的な会話はなく、日常会話的なものが多かった」(関西学院大学・文系)、「相手の笑顔が好意的だった」(近畿大学・文系)、「面接の最後に笑顔で見送ってくれたとき」(日本大学・理系)​


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もちろん面接官との問答の中身も重要だ。定型的な質問なら、応募学生の1人に過ぎないが、親しい雑談をしたなら、面接官はともに働く仲間として見てくれた可能性が高い。「話が弾んだ」(早稲田大学・理系)、「最終面接(5月中旬)で内定者に対しての行事について説明された。入社後は実家を出るかどうかについて雑談をした。あまり突っ込んだ会話はなく、ずっと雑談をした」(青山学院大学・文系)

ただし笑顔や話の盛り上がりが内定を約束するわけではない。笑顔の面接官とうまく話せて、「絶対内定をもらえる」と思っていたのに、アウトだった学生は多い。巧妙な面接官は笑顔で優しく話し、聞き上手なので、学生は勘違いする。

人事が役員面接のアドバイスをすることも

人事が学生にアドバイスすることもある。多くは役員面接による最終選考の前に、役員の質問や性格について教える。人事としてはぜひほしいが、役員面接で覆されるケースも少なくない。そこで突破してもらうためのアドバイスをする。

「最終面接の直前、電話があったこと(面接へのアドバイスなど)」(金沢大学・文系)、「第3選考前に今からが山場だと言われたこと」(下関市立大学・文系)。第3選考と書かれているが、人事による選考は終わり、管理職面接、役員面接の段階を指しているのだろう。

仕事についてのアドバイスをもらうこともある。後輩に向けてアドバイスしているので内定を意味することが多い。

「面接中にその会社の仕事のアドバイスが聞けました。かなり細かなところまで言ってくださっていたので、もしかして受かっているのかなと思いました」(阪南大学・文系)、「最終面接時に自分の欠点について説明されたとき、前向きなアドバイス、フォローをしてくれたこと」(秋田県立大学・理系)

以上、昨年6月に実施した学生アンケートから、「内定」のサインについて紹介してきた。このほかにも、「入社後の出張」「社員との食事会」「他社を辞退してほしい」「君は大丈夫だから安心していい」「面接官とのLINEの交換」「非公式の座談会」など、いろんなサインがある。

これからの面接で同じサインを受ける学生も多いだろう。ただし、聞いたからといって、安心してはいけない。サインは「内定」ではなく、あくまでもサインだ。もしかしたら意図したサインではないかもしれない。ぬか喜びは危険。「合格」という言葉を聞き、人事からの「内定」の連絡を受けて、初めて就活は終わる。健闘を祈りたい。