航空機や座席で独自の工夫が難しいLCC。今後はサービスでの差別化がカギ(撮影:尾形文繁)

日本航空と豪カンタス航空の合弁LCC(格安航空会社)、ジェットスター・ジャパンの鈴木明典CFO(最高財務責任者)はため息交じりに語った。「国際線は競争激化で単価がかなり苦戦した」。

同社は9月14日、2017年6月期決算を発表。営業利益は原油高や競争激化で前期比19%減の11億円だった。前期に初めて黒字化にこぎ着けたが、利益を伸ばせずに終わった。

2012年にANAホールディングス(HD)傘下で関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーションを皮切りに、“日の丸LCC”が就航して5年。2017年の夏ダイヤでは国内・国際線を合わせて日本で運航されるLCC便数が全体の23%に達し、すっかり日本の空に定着した。

台湾・香港路線で泥沼競争


同時に、国際線は各社の予想を超える競争環境となった。とりわけ泥沼化しているのが台湾と香港の路線。ジェットスターやANAHD傘下のバニラエアの拠点である成田を発着する台北(桃園)線は国内外10社、香港線は7社が運航する。供給過剰は否めない。

バニラは2015年度に初めて黒字化を達成したが、2016年度に再び赤字に転落。台湾路線の比率が大きいことが響いた。今4〜6月期も赤字で、今年度は新路線就航を予定していない。

中国・春秋航空傘下の春秋航空日本も就航から3年が経過したが、40億円前後の赤字から抜け出せない。会社側は「事業計画が遅れているのは事実」とする。今後は中国を中心に国際線を拡大させるというが、収益への貢献度は未知数だ。


成田空港を離陸する春秋航空日本の航空機(撮影:尾形文繁)

こうした状況を受け、ジェットスターは競合が少ない成田発着の国内線に比重を置く。同社は9月14日に成田─宮崎線の開設を発表した。

ただし、成田は周辺住民との取り決めで23時以降の離着陸ができない。稼働率を高めて利益を出すLCCにとってこの制限は厳しい。そのため、同社は来春には中部国際空港も拠点化し路線を増やす方針だ。

24時間空港である関空のメリットを享受してきたピーチも変革を迫られている。設立以来、増収増益で営業利益率は12%と断トツ。そんな同社も「アジア勢の投げ売りに影響を受けている」(井上慎一CEO)。今4〜6月期はわずかながら減益となった。

客の囲い込みで安売り回避へ

単価下落に歯止めをかけるべく、井上氏は「ファンづくり」を強調する。個性的な機内食を出し自動車まで機内販売した同社だが、ビットコインによる航空券の購入など「ピーチに乗る価値をさらに高めていく」(井上氏)考えだ。


当記事は「週刊東洋経済」10月7日号 <10月2日発売>から転載のうえ、加筆した記事です

他社も顧客囲い込みを急ぐ。バニラは8月、購入金額に応じてポイントが貯まる会員制度を導入。ピーチやジェットスターも、割引や早期購入が可能な有料会員制度を展開する。

固定客をつかめば無理な安売りを避けられる。「次の5年」はサービス面の差別化がカギになりそうだ。