ああ美しき兄弟愛の悪臭…なのか?(イラスト・サカタルージ)

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何度も何度も止めようとチャレンジしながら、止められないタバコ。しかし、起きている時は吸いたくてたまらないタバコも、寝ている時には吸いたいと思わないのは不思議といえば不思議。

そのチャンスを見計らって、寝ているうちにタバコを嫌いにさせてしまう奥の手があるという。そんな超ムシのいい方法ってホントにあるの?

腐ったニオイとタバコの煙を同時に嗅ぐ

「寝ている間にできる禁煙法」――。そんな夢のような方法を2014年に発表したのは、世界的にも有名な総合科学研究センター、イスラエルのワイツマン研究所だ。研究者たちは禁煙を望んでいるが、特にこれといった取り組みをしていない喫煙者66人(男性43人・女性23人、平均年齢29歳)に個室で一夜を過ごしてもらい、次の3つのグループに分けて実験した。

(1)睡眠中に悪臭(腐った卵の臭いと魚の臭い)をタバコの煙に混ぜて嗅がせる。

(2)睡眠中に同じ悪臭をタバコの煙とは別々に嗅がせる。

(3)睡眠から目覚めた直後に同じ悪臭とタバコの煙を嗅がせる。

睡眠中に悪臭を嗅がせた(1)と(2)のグループの人は、翌朝目覚めた時はニオイを嗅がされたことは覚えていなかった。そして、参加者全員にその後1週間の喫煙本数を記録してもらうと、(2)と(3)のグループの人は本数が変わらなかったが、(1)のグル-プの人だけはそれまでより平均で3割以上本数が減っていた。

睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠がある。レム睡眠は眠りが浅く、体は深く眠っているが脳は活発に活動している状態。夢をよく見るのはこの睡眠の時だ。ノンレム睡眠は深い眠りで、体も脳も休んでいる。眠っている時に悪臭を嗅いだ(1)と(2)の人は、深い眠りのノンレム状態にニオイを嗅がされたため覚えていなかったのだ。

人間はノンレム睡眠の時にも夢を見るが、起きた時はほとんど覚えていない。その代わり潜在意識の中には強く残っている。悪臭とタバコの煙を一緒に嗅がされた(1)の人には、悪臭の記憶はないが、「タバコ=不快なニオイ」というイメージが潜在意識の中に残り、自然にタバコの本数が減ったと考えられる。

誰かに手伝ってもらうのが唯一の弱点

研究グループによると、タバコに含まれているニコチンには強い依存性があるが、その依存性が働くのは脳の中にある嗅覚をつかさどる部位に近い場所だという。だから、嗅覚を利用して「タバコの煙=不快」というイメージを脳に植え付けると、いっそうタバコに対する嫌悪感を刷り込みやすくなる。この「嫌なイメージ」は、睡眠中に悪臭を嗅がされてから約1週間続くという。

この方法の弱点は、自分1人ではできないこと。誰かに手伝ってもらい、自分が一番嫌いなニオイを、ノンレム睡眠中に嗅がせてもらう必要がある。人間はひと晩でレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返すが、一般的に睡眠はまずノンレム睡眠から始まり、レム睡眠に移っていく。そして、一番深いノンレム睡眠は、入眠後しばらくしてから訪れる。その時を見計らって嗅がせてもらうといいだろう。