「思う存分、織ればいい。織りよし。染めて織れ。」成田名璃子さんの『世はすべて美しい織物』(新潮社)は、<昭和>を生きた女性と<平成>を生きる女性、ふたりの主人公の運命が交わり、紡ぎ出される物語。舞台は、「西の西陣、東の桐生」と言われるほど絹織物が盛んな群馬県桐生市。<桐生の養蚕農家の娘として生まれた芳乃(よしの)>と<銀座でトリマーとして働く詩織(しおり)>のパートが交互に進行する。時代も場所