コートニー・クレニー被告(Instagramより)

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「彼が大丈夫なのか教えて」「彼、死んだの?」━━黒いスポーツブラ姿の女性の顔には血がべったりと付着し、胸元まで赤く染まっている。床に座り込んだ女性は、パニック状態で警察官へ繰り返し問いかける一方、その場にいた愛犬を「こっちに来て」と呼び寄せ、落ち着かせようとしていた。

【写真を見る】「血まみれの黒いスポーツブラ姿」で話題に…成人向けコンテンツで活動していた被告

 事件当日、通報を受けて駆け付けた警察官のボディカメラ映像に残されていた光景だ。

 この全米で注目を集めた事件が、4年越しで大きな節目を迎えた。

 米フロリダ州マイアミで、2022年に交際相手を刺殺したとして第二級殺人罪(注:米国の刑法で使われる用語で計画性はないが、強い殺意を持って人を死なせた罪のこと)に問われていた元OnlyFansモデル、コートニー・クレニー被告(30)。被告側は一貫して「DV被害者による正当防衛」を主張した。一方、遺族側は「クレニー被告こそDV加害者だった」と反論。双方が「自分こそ被害者」と訴え続けた事件は、陪審員による判断を待たず司法取引で決着を迎えることになった。

 2022年4月3日(現地時間、以下同)。当時26歳だったクレニー被告は、「Courtney Tailor」の名で活動する人気OnlyFansモデルで、Instagramのフォロワーは約170万人。水着姿やフィットネス動画などを投稿し、人気を集めていた。

 亡くなった交際相手は、暗号資産トレーダーのクリスチャン・オブムセリさん(当時27)。事件当時、2人の関係はすでに破綻寸前で、同棲していたマンションの2階上の住民からも苦情が寄せられるほど激しい口論が絶えず、管理会社が退去措置を検討するほどだった。

「事情聴取でクレニー被告は、口論の末にオブムセリさんから首をつかまれるなどの暴力を受け、床へ押し倒されたと説明。身の危険を感じ、とっさにキッチンナイフを手に取り、再び近づいてきたオブムセリさんに向かって約3メートル離れた場所から投げたと供述しています。

 しかし、法医学の専門医は、致命傷は投げられたナイフでは生じないと結論づけた。事件発生から4か月後に、被告は第二級殺人罪で逮捕となりました」(海外ジャーナリスト)

検察が積み上げた"DV加害者"の証拠

 逮捕発表に合わせ、事件の約1か月前に2人が暮らすマンションのエレベーター内で撮影された監視カメラ映像を検察は公開。ブラトップ姿のクレニー被告が、オブムセリさんの顔や頭を何度も殴りつけ、腕で押しのける様子が映っており、一方のオブムセリさんは腕で攻撃を防ぎながら後ずさりし、エレベーターの操作ボタンに向かう様子が確認できる。

「実はクレニー被告は、2021年7月、ラスベガスのホテルでオブムセリさんに向けてグラスを投げたとしてDV容疑で逮捕された過去があることが判明。『クレニー被告は本当にDV被害者だったのか』という疑惑が高まりました」(同前)

 さらに、事件の数週間前にコロラド州アスペンを旅行した際の動画も明らかになった。クレニー被告が、オブムセリさんの顔を何度も平手で叩き、「2週間も禁酒していたのに、あなたのせいで飲むことになった」と叫ぶ様子が記録されていた。

弁護側が示した「DV被害者」の証拠

 一方、公判直前になると、弁護側もクレニー被告がDV被害者だったことを裏付ける証拠を次々と提出した。公判予定直前の7月、被告側が提出したのは、オブムセリさんの動物虐待容疑の逮捕状だった。

「2020年11月、飼い犬を水のないケージ内で放置して死なせたとして、動物虐待容疑の逮捕状が出ていたとする資料を提出。犬のそばには餌と糞があったものの水はなく、死後5〜7日がたっている可能性が高いとされています。オブムセリさんは警察に、犬が寝ていると思ったと話しています」(同前)

 さらに、2021年にオブムセリさんへ送った「あなたに殴られた」「首を絞められた」などと暴力被害を訴えるメッセージも新たに開示された。弁護側は、2021年にドバイ滞在中、マリファナを吸おうとしたオブムセリさんを止めたところ、突き飛ばされて転倒し、肋骨を骨折したとも新たに主張。クレニー被告こそDV被害者だったと改めて訴えた。

 公判が目前に迫った7月31日、クレニー被告が司法取引に応じることが明らかになった。その内容は、8月10日にマイアミ・デード郡の法廷で正式に読み上げられる予定だ。

 エレベーターの監視カメラ映像、法医学鑑定、そして双方が提出したDVをめぐる数々の証拠は、陪審員の前で検証されることなく終わる。4年にわたり「自分こそDV被害者」と訴え続けた法廷闘争は、司法取引という形で幕を閉じることになった。