山田五郎さん

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原発不明がん、67歳

 評論家、編集者として活躍した山田五郎さんが、7月14日に原発不明がんのため67歳で亡くなった。22日15時に公開された公式YouTubeチャンネルの動画にて、正式に訃報が公表された。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 ところが、それ以前から一部の関係者がSNSにて、山田さんが亡くなったことを示唆するようなことを書いたり、実名を挙げて追悼したりしていたため、情報が先行して拡散し、「なぜ遺族や所属事務所の発表を待てなかったのか」と批判が殺到する事態となった。

 もちろん、著名人の死を身近な関係者が悼むこと自体には問題はない。生前に親交があった人ほど、訃報を聞いた直後に感情を表明したくなるのは当然である。今回も、投稿した側には悪意はなく、純粋な悲しみや感謝を伝えたいという気持ちがあった可能性が高い。

山田五郎さん

 しかし、個人的な追悼の感情があるからといって、その情報を不特定多数に向けて公開して良いということにはならない。SNSの投稿は、友人同士の会話や弔問の場での発言とは異なり、書き込んだ瞬間に世界中につながり、多くの人の知るところとなる。

 本人にその自覚がなくても、著名人のアカウントによる投稿は検索結果に表示され、メディアの記事に引用され、真偽不明のまま何百万人、何千万人の人に広まっていく可能性がある。

 特に訃報というものは、単なる芸能ニュースではない。誰が、いつ、どのような言葉で公表するかという決定権は、第一に遺族や故人に近い人々にある。葬儀を終えてから発表したい、親族への連絡を済ませてから公表したい、死因や闘病経過をどこまで説明するか整理したいといった事情もある。

 山田さんの場合も、葬儀は公式発表以前に関係者らによって執り行われていたと報じられている。つまり、亡くなってから発表までに時間があったのは、遺族やスタッフの明確な意志によるものだと考えられる。

不正確な情報も

 公式発表前の投稿が厳しく批判される最大の理由は、彼らの気持ちを第三者が踏みにじることになってしまうからだ。また、不正確な情報が拡散してしまうリスクもある。報道機関であれば、情報源を確認し、遺族や所属事務所に取材し、発表時期や公益性を検討する。

 ところがSNSでは「自分が直接聞いた」「親しい人物だから間違いない」という確信だけで、発信までの手続きが省略されやすい。その意味でも情報発信には慎重な姿勢が求められる。

 もちろん、関係者に明確な緘口令が伝えられていなかった可能性もあり、根拠もなく投稿者を過度に攻撃することは慎むべきである。ただ、現代のSNS利用者、とりわけ一定の知名度やフォロワー数を持つ人物には、自分の投稿には一定の責任が求められるという認識が必要であるとは言える。

 訃報、病状、結婚、離婚、妊娠、事件や事故といった情報は、本人や家族の人生に直接関係している。自分が当事者でない情報については、原則として公式に発表されるまでは他人が勝手に明かすべきではない。これは他人の人生の主導権を尊重するための最低限の配慮である。

 山田五郎さんは、テレビやYouTubeでは博識をひけらかすことなく、難解な美術や文化の話をユーモアとともに伝えられる稀有な人物だった。彼には知ることの面白さを視聴者と共有する姿勢があった。

 自身のYouTubeチャンネルでも、専門知識を開かれた教養へと変換し、多くの人に届け続けた。その死が大きな衝撃を与えたのは、彼が単に有名人だったからではなく、視聴者が山田さんを「自分に知識を授けてくれる身近な先生」のように感じていたからだろう。

 闘病生活に入ってからも、動画を更新し続けて、明るくユーモアを交えて前向きに情報発信を続けていた。服装や話し方や態度からにじみ出る「品の良さ」こそが、彼の大きな魅力だった。

 公式発表を待たずに訃報を公表してしまうというのは、端的に言えば「品のない」行為であり、山田さんの生き様とは最も遠いところにある。だからこそ、そのような投稿者に対して強い反発が起きたのだろう。山田さんへの追悼には、彼自身が最後まで失わなかった節度と品位が必要だったのではないか。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部