「お手伝いしたいなという気持ちはある」と胸の内を明かした(右:温泉施設のHPより)

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「お手伝いしたいなという気持ちはあるんですよ」──。"スーパーボランティア"尾畠春夫さん(86)は、NEWSポストセブン取材班にこう胸の内を明かした。

【写真を見る】尾畠さんの自宅内。記者を招き入れ、大きな地図を広げ、現場への経路を入念に確認中だ

 尾畠さんの名が一躍全国区になったのは、2018年8月に山口県周防大島町で行方不明となった2歳児を発見してからだ。以来、"スーパーボランティア"と呼ばれ、2020年には一連の功績から「緑綬褒章」を受章している。

 その尾畠さんが気にかけているのが、鹿児島県霧島市の温泉施設「かれい川の湯」で、家族旅行で訪れていた5歳の男の子が行方不明になっている事案だ。最新の情報について、ブロック紙記者が明かす。

「行方不明となっているのは、家族旅行で鹿児島を訪れていた熊本県八代市の保育園児・田中嶺臣(れお)ちゃん(5)です。21日、同施設で入浴中、両親が先に脱衣所へ向かった間に姿が見えなくなったといいます。

 警察などによると、同日午後3時半ごろ、母親から『子どもがいなくなった。(天降)川に落ちた可能性がある』と消防に通報がありました。家族が利用した浴室には、湯船とほぼ同じ高さの川側に窓があり、警察の到着時には開いた状態だったということです」

 現場は全浴室が1部屋丸ごと貸し切りで入浴できる"家族湯"タイプの施設。料金は1時間1500円ほどで、口コミには《泉質も良くまた伺いたい》《貸し切り専用で値段もリーズナブル》《露天風呂は川のせせらぎを感じながら浸かることが出来る》など好評が並ぶ人気施設のようだ。

 大分県内にある尾畠さん自宅から同現場までは車で5、6時間ほど。今回、ボランティア活動に向かうかどうかは「まあ5対5ですね」と明かす。そこには、尾畠さんの意外な事情があった。

4月から夜間中学に通う日々

 大分県の地方紙を見て今回の事案を知ったという尾畠さん。今年3月23日に京都府南丹市で小学6年生が行方不明となった事件では、「子どもの命に代えられるものはないと思ってるから」と取材班に明かし、迷わずに現地に駆けつけていた(ただし現場の事情でボランティア活動は叶わず)。なぜ今回は現地入りを迷っているのだろうか。

「うーん、迷ってるというかね、今、私は夜間中学に行ってるんですよ。4月の下旬ぐらいか半ばぐらいから夜間中学が始まってね。行くかどうかは、まあ5対5ですね。体力的にも、どんどん下降しよるし。

 でもね、今もこの子はどっか岩か木のところに抱きついて『寒いよ、寒いよ』って泣きよるんじゃねえかなって思ってるんですよ。お父さんお母さんって……」

 今年の4月から夜間学校に入学していた尾畠さん。「子どもの命に代えられるものはない」「自分で探してあげたい」との思いを繰り返しつつも、もどかしい現状があるようだ。

半世紀以上ぶりに叶えた「中学生」の夢

 行方不明の男児を案じながらも、体力的な衰えと学業との両立に葛藤する尾畠さん。現在通い続ける「夜間中学」は、幼い頃の奉公のために受けられなかった義務教育を取り戻す、長年の悲願でもあった。「中学生になる」夢を半世紀以上ぶりに叶えたいま、どのような生活を送っているのだろうか。

「自宅から学校まではバイクで、片道1時間20分ほどかかりますね。正直、授業の内容は90パーセントか95パーセントはわかりません。50パーセントわかるのは体育の時間ぐらいかな。体育館で数字の書かれたボールみたいなのぽっと投げてな。

 理科やら数学とか、そういうのはもう90パーセントわからんね。授業中は時々ね、この字分からんってなると補佐の先生が『これは何々って書いてますよ』って言ってから、教えてくれるんですよ。でも、生徒がいっぱいおるのに、私の横ばっかおるからな」

 苦戦しながらも、充実した学校生活を送っているのだという。

私がいくなら「下から上に探す」

 今回の行方不明事案についてはどのように捉えているのだろうか。ベテランボランティアの経験と勘を明かしてくれた。

「川見ると、白波が立っちょることは立ってるんですね。もし私が行ったら、上から下には探しません。下から上に探します。

 川っていうのは上から下に下りてるんです。で、どこで(男の子が)止まってるのかわからんけど、海抜ゼロから上がっていったほうがいい。どっか岩や木に引っかかっとっても、上から見るのと下から見るのはもう全然違うんですよ」

 そして、男の子の無事を信じてやまない。

「行くとなったら私は、絶対生きてるって思って行くんです。わしが行ってね、一番下の河口から上がっていきたい。男の子はもう自分の足で歩けないかもしれないし、自分の手で物が持てないかもしれない。それでも、わしが見つけて、『ぼく元気?』って聞いたらきっと『うん』って返ってくる。そんな出会いがしたいです」

"スーパーボランティア"として数々の現場を歩き、奇跡を起こしてきたからこそ決して見放さない、命への強い執念。一刻も早く家族の元へ無事に帰ることを、尾畠さんは大分の空の下から誰よりも強く祈っている。