感動レベルのハンドリングマシン! アストン マーティン・ヴァンテージ『S』は見た目以上の進化【スーパーカー超王が斬る】
最初のSモデルは1953年のDB3 S
アストン マーティンが『S』の称号を初めて車名に掲げたのは1953年、『DB3 S』だった。
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同社のレーシングスポーツカー、『DB3』のパフォーマンスをさらに高めるため、より軽量でコンパクトな設計のボディを採用。同時に搭載される2992ccの直列6気筒エンジンの最高出力を、吸排気バルブ径の拡大やカムシャフトのプロフィール変更などで182psにまで高めたモデルだった。

アストン マーティン・ヴァンテージに追加された『S』モデル。 平井大介
そして1953年から1956年に30台製作されたDB3 Sは、240ps仕様へと最終的には進化を遂げることになるのだが、この搭載エンジンの高性能化にとどまらず、シャシーやボディに至るまで徹底した見直しを図るというSモデルのコンセプトは、現在に至るまで確実に継承され続けている。
そのアストン マーティンから昨年、『ヴァンテージS』、『DBX S』、そして『DB12 S』と、最新のSモデルが続々と誕生した。
今回はこの中から、アストン マーティンのピュアスポーツカーとして、これまでも多くのカスタマー、そしてファンから高く支持されてきたヴァンテージに追加された、ヴァンテージSについてレポートする。
エアロダイナミクス改善に大きく貢献
エクステリアのフィニッシュからスタンダードなヴァンテージと識別するのは、両車を同時に見比べてみる必要があるのかもしれない。
実際にはフロントのエアダムやボンネット、そしてワイドなリアのデッキスポイラーなどはSのために新たにデザインされたもの。それらはもちろん、ダウンフォース向上やエンジンの冷却効率を高めるなど、エアロダイナミクス改善に大きく貢献している。

デッキスポイラーは323km/hとされる最高速時には44kgの追加ダウンフォースを生む。 平井大介
ちなみにデッキスポイラーは323km/hとされる最高速時には44kgの追加ダウンフォースを生み、この時の総ダウンフォース量は111kgに達する。
ほかにSモデルであることを主張するのは、フロントフェンダーに備わる、レッドのエナメルガラスが充填されたハンドメイドの真鍮鍛造製Sバッジ、そして専用の21インチ径Yスポークホイールがある程度だ。
スタンダードモデルに対して15psのエクストラ
フロントに搭載されるエンジンは、アストン マーティンとの間で技術提携が結ばれて久しい、メルセデスAMGから供給される3982ccのV型8気筒DOHC32バルブツインターボ。最高出力と最大トルクは680ps、800Nmというスペックで、これは最高出力ではスタンダードモデルに対して15psのエクストラを得た計算になる。
他にもドライブバイワイヤのスロットルマップも見直され、サスペンションもビルシュタイン製DTXアダプティブダンパーをSモデル用に再セッティングするなど、幅広い改良が施された。

メルセデスAMG製3982ccのV8ツインターボは最高出力680ps、最大トルク800Nmというスペック。 平井大介
果たしてそんなヴァンテージ Sは、どのような走りを披露してくれるのだろうか。
圧倒的なトルクフィール
センターコンソール上のロータリースイッチで『ウエット』、『インディビジュアル』、『スポーツ』、『スポーツ+』そして『トラック』のドライブモードが選択できるヴァンテージSだが、まずは実質的にはこれがデフォルトともいえるスポーツモードでドライブを始めた。
アクセルペダルを一気に踏み込むと、瞬時に全身を襲うのはやはり大排気量エンジンならではの圧倒的なトルクフィールだ。

室内で感じるのは、大排気量エンジンならではの圧倒的なトルクフィールだ。 平井大介
加えて800Nmの最大トルクは3000〜6000rpmまでのレンジでフラットに発揮されるから、素晴らしいシフト制御を見せる8速ATとの組み合わせで、どのような速度域からでもアクセル操作だけで瞬時に加速態勢を整えることができる。
もちろんこの8速ATはパドル操作によるマニュアルシフトにも対応しているが、その必要を感じるシーンは限られていた。さらにスポーツ+へとモードを切り替えると、エキゾーストシステム内のバルブが開き、排気音はよりそのボリュームを高めるほか、エンジンやミッションのレスポンスも驚くほどに鋭くなる。
アストン マーティンによれば、ヴァンテージSは0→100km/h加速を3.4秒でこなすというが、その数字には十分な説得力がある。
スタビリティは確実に向上
だがさらなる驚き、すなわちスタンダードなヴァンテージとの違いは、コーナリングでの動きにあった。
Sモデルへの進化に伴って、アストン マーティンはリアのサブフレームをソリッドマウント化し、これによって横方向の剛性を30%強化することに成功しているのだが、その効果がハンドリングにおいて明確に表れているのだ。

ヴァンテージSは、アストン マーティンにとって究極のピュアスポーツだ。 平井大介
ステアリングの動きはよりクイックで正確なものとなり、やや大きめなロールこそ感じさせるものの、ダンパーのセッティング変更が功を奏して、実際にドライバーが感じるスタビリティは確実に向上している。
トラックモードでその印象はさらに強くなるのだが、こちらは常にフラットであるとは限らないオンロードでは、やや乗り心地が犠牲になる印象だ。
アストン マーティンにとって究極のピュアスポーツともいえる『ヴァンテージS』。それは感動的と評してもよいハンドリングマシンであると同時に、これもまたライバルに対して大きなアドバンテージを持つラグジュアリー性を秘めたモデルだった。
