「患者さんの9割以上が女性」「うち50代以上が9割」なぜ更年期以降の女性がドライマウスに苦しむ? 専門医が解説するメカニズム「ホルモン変動が影響」
歯科疾患は男女共通――そう思われがちだが、じつは症状の現れ方には性差がある。唾液が減少し口腔内が乾く“ドライマウス”はその最たるものだ。圧倒的に女性に多い理由、セルフケアで症状を緩和させる方法を学ぼう。
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「口の中がひどく乾く」
「口臭が気になるようになった」
更年期以降、人知れず口の中の悩みが生じた女性は多いだろう。
「口の中の乾きや痛み、口臭などは、ドライマウスの可能性があります。唾液分泌量が減少し、口の中が乾くことで起こります。医学的には“口腔乾燥症”と呼ばれるれっきとした疾患で推計患者数は800万人にも上ると言われます。なんと患者さんの9割以上が女性で、QOLを大きく損なう人もいます」
こう説明するのは、志村デンタルクリニック副院長で歯科医師の志村真理子氏。同院の副院長を務める傍ら、1999〜2015年に勤務したNTT東日本関東病院歯科口腔外科では、ドライマウス外来を開設し、口の乾きに悩む多くの女性を救ってきた。

志村デンタルクリニック副院長
「ドライマウスの症状で悩む患者さんがあまりにも多いので、専門外来を立ち上げ、私が専任医師として治療を担当することになったのです。受診者を分析すると、9割が女性で、うち50代以上が9割を占めました。他院や他科で異常なしと言われ『気にしすぎでは』とショックを受けていた患者さんもいましたが、よくよく話を聞くと、きちんとした原因と対処法があることが分かりました」
現在は志村デンタルクリニックに設けた、全国初のドライマウス女性専門外来で治療にあたる志村医師にドライマウスの症状と要因を解説してもらおう。
まずは症状だ。次のような悩みや違和感を抱えていないだろうか。
・口の中が乾く
・口の中がネバネバする
・口の中がヒリヒリと痛い
・口臭がある
・乾いた食品が食べにくい
・しゃべりにくい
・虫歯・歯周病になりやすい
・夜間に起きて水を飲む
・口内炎ができやすい
・舌や唇がひび割れる
・味覚がおかしい
・義歯で傷つきやすい
「患者さんの問診にも使う内容で、当てはまる数が多いほど、ドライマウスの可能性が高くなります。とくに目立つのは、口が乾く、ネバネバする、ヒリヒリするという訴えです。ヒリヒリと痛むのは舌が多いですが、唇の内側や口腔内の粘膜、ひどい人は上顎に感じる人もいます。『つねに電気が走っているよう』と表現する人もいますね。口の中はとても敏感にできているので、刺激を異常と感じがち。大げさでなく『何か大病ではないか』『舌の痛みで熟睡できない』と思い悩んでしまう人がいるくらい、QOLに影響する疾患なのです」
いずれの症状も唾液減少が引き起こすのだという。
「唾液は単に口の中を潤わせているわけではありません。汚れを洗い流す、食べ物の味を唾液に溶かして味わい、飲み込みやすい形状にする、消化を助ける、酸を中和する、細菌の繁殖を抑える、粘膜を保護・修復する、歯の再石灰化を促すなど多くの作用を持つ“働き者”が唾液です。口腔内や唇に傷ができても、皮膚よりは治りが早いと思いませんか? これも唾液のおかげなのです」
では、なぜ更年期以降の女性がこんなにも、唾液減少によるドライマウスに苦しむのだろうか。
「まずは加齢の影響があります。唾液の9割以上は顔の内部、耳の前方や顎下にかけて位置する大唾液腺から分泌されています。この唾液腺は加齢によって衰えます。嚙む力(咀嚼筋)も弱くなり、噛む回数が減ると唾液腺への刺激も弱まって唾液の分泌量が減少するのです。もう1つ、女性の場合はホルモンバランスの変動が影響します」
ホルモン変動がどう影響するのか説明してもらおう。
「唾液腺には女性ホルモンであるエストロゲンの受容体があり、唾液の分泌機能に関与しています。さらにエストロゲンは粘膜を保護し、潤いを保つ機能もあります。閉経前後でエストロゲンが減少すると、これらの作用が弱まるので、ドライマウスの症状が生じます。男性には女性のような急激なホルモン変動がないため、症状が顕在化せず、50代以上の女性患者さんが多いのもこうした背景で説明がつきます」
このほか、ストレスによる自律神経の乱れ、精神安定剤や抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、降圧剤や利尿剤といった内服薬の副作用で唾液の減少や口の乾きを感じる場合があるという。
「唾液の分泌は自律神経がコントロールしており、ストレスで交感神経が優位になると唾液の分泌量が制限されてしまいます。医師から処方された内服薬は自己判断でやめずに、薬で症状をコントロールしながら、後述するセルフケアに取り組んでみてください。質のよい睡眠をはじめとした生活リズムを保つことは、ドライマウス対策としても重要です」
ドライマウスの要因と仕組みが分かったところで、対策に移っていこう。
《この続きでは、●よく嚙む&入浴で改善、効果的な舌ストレッチ…など対策法を詳しく取り上げている。記事の全文は現在配信中の「週刊文春 電子版」および5月28日(木)発売の「週刊文春」で読むことができる》
〈「歯磨きは長ければ長いほどよいわけではない」予防歯科の第一人者が語る口腔ケアの最新常識 健康な歯がなければ、寿命を縮めかねない研究データも〉へ続く
(志村 真理子/週刊文春 2026年6月4日号)
