ゴールデンウィークに合わせて海外へと向かう高市政権の閣僚たち。今回外遊に出る閣僚は高市早苗総理をはじめ11人で、訪問先は閣僚1人につき1カ国から最大4カ国に及ぶ。

【映像】かめはめ波を披露する高市総理(実際の様子)

 政治家の外遊はなぜゴールデンウィークに集中しているのか、多くの閣僚が日本を留守にして大丈夫なのか、そして本当に必要なのかといった疑問を抱く人も多いだろう。

 ニュース番組『わたしとニュース』では、こうした外遊の様々な疑問について、テレビ朝日政治部の澤井尚子与党キャップの解説を交えながら、選挙ドットコム副編集長の伊藤由佳莉氏とともに深掘りした。

■閣僚たちの外遊ラッシュと有事への「危機管理体制」

 今年のゴールデンウィークに予定されている総理や閣僚の外遊。高市総理を含む11閣僚が出発予定で、高市総理は5月1日に渡航。

 これだけ多くの閣僚が渡航することについて、伊藤氏は次のように語った。

「高市政権19閣僚中11人の方が行くが、過去と比較しても石破政権時代は15人が渡航していたので、実は数としては例年通りの水準だ」(伊藤氏、以下同)

 また、多くの閣僚が同時に日本を離れることで、何か起きた時の緊急対応や危機管理体制が心配になるところだ。

「不在の時には右腕となる人物、総理であれば内閣官房長官だったり、大臣であれば副大臣がいて、トップが不在でも行政が止まらないように体制は整えられている」

「ただ、災害など有事が発生しやすい時期でもある。実はそういったことを踏まえて外遊を取りやめた事例も2024年8月にあった。当時の岸田文雄総理が南海トラフ地震の臨時情報が発令されていた時だ。この臨時情報自体が初めての発令で、岸田氏としても初めてのこと、国民の不安が大きいことなども理由に挙げられた上で、当時計画されていたカザフスタンやモンゴルなどへの外遊を見送った経緯がある。やはりそういった有事の際にはきちんと止めることも含めて対応できるようにしているのだと思う」

■なぜ「夏休み」ではなくゴールデンウィークなのか

 ゴールデンウィークに外遊が集中する理由について、これまでに度々外遊に同行取材をしている澤井氏に話を聞いたところ、閣僚や国会議員は国会の審議や答弁への出席義務があり、会期中は国内を離れにくいという。国民の祝日は国会が休会となるため、それが連続するゴールデンウィークが海外に行く絶好の機会になるそうだ。

「日本の国会は特に、基本的には出席することが原則になっている。本会議だけでなく、委員会、答弁調整なども含めると外国に行く暇はないくらい国会日程が詰まっている」

 海外と比べても、日本の総理大臣や閣僚が国会に出席する割合は多いようだ。

「先進国で比べてみても、アメリカやイギリスは国会に発言・出席する日数が年間数日から2週間程度。日本の場合は150日間の実質的な会期が設けられているので、国際的にみても長い期間にはなっている」

 ではなぜ、夏休みや冬休みに行かないのだろうか。

「日本の大型連休はゴールデンウィーク、お盆を含めた夏休み、年末年始があると思うが、お盆や年末年始は政治家が地元に帰っていろいろな会合に出席したりという政治活動ができる期間。その日程もある兼ね合いでゴールデンウィークを選ばれることが多い。また一方で、訪問される外国の方から見ても、実はゴールデンウィークは日本だけの風習で向こうにとってはウィークデーのため会談や会議に参加しやすいことがメリットとしてある」

■限られた時間で回る「詰め込み型」外遊の背景

 昨今の外遊のスケジュールについて、澤井氏は次のように語る。

「総理が就任してから半年が経ったが、高市総理はあまり外遊に行っていない。休みに合わせていくのは今回初めて」(澤井氏、以下同)

「(ひと昔前は)1カ国に2日から3日間くらいだったが、今は1カ国に1泊と言うのが基本。(日程は)かなりギチギチなイメージ。せっかく遠くまで来ているから(その地域を)転々とするような感じ」

 限られた時間の中でできるだけ多くの国を回る「詰め込み型」が主流のようだ。11人の閣僚が訪れるのは合わせて23カ国に上る。その背景には、各国との関係を深めたい日本側の狙いがある。

「特に外務省(の本音)としては、外務大臣でもいいが、とにかく閣僚が行ってほしい。そこで支援策を打ち出してプレゼンス(存在感)を高めたい。よく言われるが、『総理が1回来てくれると約10年は効果が長持ちする』。総理が来るということはもちろん支援策などもすごく仕込んでいるのでかなりインパクトは大きい」

■外交の重要性と「安倍政権」から続く評価の変化

 しばしば批判されることもある政治家の外遊だが、政界ではその評価にも変化が出ているという。

「安倍(晋三)氏の時は、すごく外遊が好きでいっぱい行っていた。その時は野党も批判していたが、今となっては『その時の日本外交ってやっぱり素晴らしかったよね』という風潮がある。国際世論をどっちの味方につけるか。日本はそこが苦手とされていて、そこをもっと積極的にやらないといけないのは高市氏も認識していると思う。今一生懸命電話会談も積み重ねているし、今回のゴールデンウィークの外遊でもそういうことをやりたいと思っているのではないか」

 こうした見解を踏まえ、伊藤氏は「コロナ禍では特に外遊が制限された局面もあったので、なおさらその重要性は認識されているかもしれない」と話した。

 実は、外遊は出発前に与野党が出席する議院運営委員会に説明し、許可を得ることになっている。過去には許可を得られなかった外遊計画もあったが、今回は野党側からの批判が一切なく、スムーズに了承されたという。国会議員の中でも外交の大切さが認識されているようだ。

「少し前だと危機管理の話や国会対応、もしくは物価高などの有事の中で行くのかという意見もあったと思うが、これだけ国際関係をより強化していくべきだという風潮は、私も話を聞いている中で肌感覚として感じている」

 澤井氏の話でもあったように、安倍政権時代の外遊の多さは際立っている。ある3年半の在籍期間に実施した外遊では、訪問した国と地域は92カ国と1地域、訪問日数は計204日間、随行人数は延べ4643人に上ったという。

 総括としては「重要な国際会議に出席し、各国首脳と2国間会談を行い、我が国国益を確保した」とある(衆議院HPから)。

 これは国会答弁用に作成された資料に基づく数字で、当時は「多いのではないか」という追及もあったが、今では積極的な外交として評価されている側面もあるようだ。

 安倍氏の外遊が多かった理由について、伊藤氏は次のように語る。

「今につながる流れにもなっているが、日米同盟を基軸としながらも国際的な連携を広げていこうという考えがある。特に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の理念のもと、インドやオーストラリアなどこれまで日本と外交関係が薄かったところとも積極的に関係をつないでいくことに意欲的に取り組んでいた。それが今の日本の外交戦略にもつながっている。非常に戦略的だったという評価があると思う。ただ一方で、北朝鮮やロシアとの関係がなかなか良好にならない課題は残していて、それは今も続いている宿題だと思われている」

(『わたしとニュース』より)